未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

運命の五分間はなかった

太平洋戦争は、その名の通り太平洋が主戦場です。海軍が主役となる戦争であり、その海軍の主役は空母(飛行機を発着させる船)、つまり飛行機になりました。これを戦前から最も正しく予想していたのは、敗れた日本の山本五十六連合艦隊司令長官であり、その…

コロナ自粛は先進国の高齢者の残り数年の命を延ばし、発展途上国弱者の命より価値ある尊厳を踏みにじった

コロナ禍により開業医の収入は激減しました。初期に「あのクリニックでコロナが出た」などの風評被害があったり、新型コロナを警戒して患者が受診を控えたりしたからです。病院も収入が減りましたが、補助金が出ましたし、そもそも勤務医の給与は患者の多寡…

日本のマイノリティ弱者は若者男性のマジョリティである

いまだに「マイノリティ(少数派)である女性」という表現も見かけますが、女性の方が長生きするので、少子高齢化に悩む多くの先進国では女性の方がマジョリティ(多数派)です。必然的に、世界史上最高の高齢者率を誇る日本は何十年も前から、女性がマジョ…

なぜ日本だけ窓際職員が多いのか

前回の記事に書いたように、経済対策の補助金は、「基金」として支出され、独立行政法人や一般社団法人にピンハネされた後、民間の大企業でピンハネされ、分配される制度が確立しているようです。 その二段階ピンハネ事業のうち15%の29基金では、実質的に20…

ガソリン価格減額補助金3兆円は博報堂が分配

国家支出で、つまり税金で、燃料油価格激変基金が3兆円もある、と今朝の朝日新聞で知り、驚きました。現在の日本の国家予算は110兆円程度で、年間3兆円以上の売上のある企業となると、日本に50ほどしかありません。利益が年間3兆円もある企業など、日本に一…

密室政治・稟議制批判

私が高校生の時、天文部の予算会議に出席することがありました。出席者は天文部の部長の私と副部長、生徒会役員の2人の計4人です。天文部の年間予算額は既に書かれており、その根拠を私が聞くと、生徒会役員はあいまいな説明をしました。しばらく話してみて…

地方議会は失くしていい

前回の記事と同じく、「地方議員は必要か」(NHKスペシャル取材著、文春新書)を読んでの考察です。 地方議員のなり手不足は、昨今、新聞でもよく目にします。無選挙当選は3割の自治体でありますし、定数割れの自治体すらあります。公職選挙法で定員の6分の5…

日本は政治家より官僚が強い

タイトルは、このブログを読む人なら常識でしょう。たとえば、第二次安倍政権時の議員提出と内閣提出の法案の差です。 議員提案だとほとんど否決されていますが、内閣(実質は官僚)提案だとほとんど成立しています。もちろん、成立した法律数でも官僚が政治…

里親になると月15万の収入

私は福祉について人並み以上に勉強しており、里親制度(親権を持たずに子どもを育てる制度)について知っているつもりでしたが、里親になると月15万円も補助金がもらえるとは知りませんでした。 「児童養護施設施設長殺害事件」(大藪謙介、間野まりえ著、中…

マニュアル・スカベンジャーを推奨するヒンドゥー僧侶の一例

1950年代頃まで、日本の高学歴の青年たちは難しい哲学の本を肌身離さず持っていたそうです。私の記憶が正しければ、藤子・F・不二雄も、級友たちはみんなそうしていたと書き残していました。「教養本のすすめ その1」からの記事に書いた私のように、哲学書は…

「IT先進国インド」の暗部

ビクトリア朝時代の全盛期の大英帝国のロンドンは、人類史上最高の富豪と人類史上最悪の貧困が同居していました。 人類史上最高の富豪は言い過ぎかもしれませんが、それ以前の貴族ではありえないほどの物質的な豊かさを手に入れられる面と、それ以後の税金や…

インドの野外排泄ゼロ達成は大嘘である

「摩訶不思議国家インド」では、トイレを使用しないインド人は今も何億人もいると書きましたが、実は、インドはスワッチ・バーラトという「史上最大のトイレ作戦」を2014年から5年間実施し、2019年10月2日に野外排泄ゼロが成功したとモディ首相が祝典まで開…

5千円札と1万円札を使用不可にしても支持率7割

最近のインド本を読むと必ず出てくるモディの高額紙幣廃止政策は、「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)にも書かれています。外国人を含むインド通貨を使う全ての人の生活を大混乱に陥れた政策だったので、インドに関わりにある人はどうしても書きた…

摩訶不思議国家インド

「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)は素晴らしい本でした。 私がインドに興味を持つきっかけになった本の一つに「河童が覗いたインド」(妹尾河童著、新潮文庫)があります。その本でもトイレには注目しているように、インドに旅行して、トイレが気…

名経営者とは会社を鮮やかに縮小させた人である

前回の記事の続きです。 第二次世界大戦の失敗を例に、「日本は撤退戦が苦手だ」という評価があります。しかし、日本に限らず、撤退戦はほぼ全ての国や組織にとって苦手でしょう。「天才経営者などいない」で「どの時代、どの社会であっても、『名経営者だっ…

GE不正の主犯はウェルチである

「GE帝国盛衰史」(トーマス・グリタ、テッド・マン著、ダイヤモンド社)は素晴らしい本でした。GEの経営がおかしいことは今となっては常識ですが、ジャック・ウェルチがCEOの頃は革新的な経営手法でGEは成功しているとの見方が一般的でした。その最大の証拠…

なぜ日本のカンボジア支援は失敗したのか

1992~1993年に日本を含めたPKOが民主選挙に貢献したカンボジアは、現在、経済力を背景とした中国の影響力が増し続け、民主主義も後退しています。2017年には最大野党のカンボジア救国党を政府権限で解党させるなど、民主主義国家としてはありえないほどの独…

中国の現実的外交は、ある国と同じである

今年3月10日のイランとサウジアラビアの国交正常化を中国が仲介したニュースには驚きました。対立する両国家の関係を正常化させるなど、国連など国際機関を除けば、アメリカとソ連(ロシア)くらいしかできなかった特権を中国が持ったのですから、私の世界観…

育児休暇よりも「育児もできなかった休暇」をもうけるべきである

育児休暇が増えれば増えるほど世の中がよくなるわけではありません。 朝日新聞を読んでいると、こんな当たり前のことを理解していない奴が朝日新聞の記者をしているんじゃないか、と思ってしまったので、書いておきます。 たとえば、「育児休暇は男性でも、…

胎嚢を見せる産科医こそ倫理観に優れる

前回の記事に書いたように、キリスト教国と比べると日本は堕胎に極めて寛容です。 だから、6月9日の朝日新聞の耕論には、朝日新聞の購読を止めようと思うほど、怒りが湧いてきました。とりわけ腹が立ったのは、次の文章です。 「中絶を罪悪視する医療者もい…

私がカナダで唯一反論できなかった意見

キリスト教国に住んだことのある人なら知っているでしょうが、人工妊娠中絶は激しい対立を生みやすい問題です。それにもかかわらず、「西洋人は政治や宗教の話が大好きである」に書いたように、キリスト教徒が圧倒的に多い西洋先進国では、人工妊娠中絶問題…

こんな人が日本のAIの最前線にいたのか

5月29日の新井紀子の朝日新聞記事を読んで、失望しました。こんな人が国費の投じられた東ロボ(東大合格を目指すAI)プロジェクトのリーダーになれたのが不思議です。なお、東ロボは2016年に「東大合格は無理」とプロジェクトが終了しています。もっとも、「…

こんな社説が大新聞に載っているから日本のIT化は進まない

5月25日の朝日新聞社説からの引用です。 「マイナカード 拙速な活用拡大反省を」という見出しで、「拡大一辺倒の姿勢を改め、安心して使える環境を整えることに注力しなければならない」という結論で終わっています。マイナンバーカードにより複数の経路で情…

子育て保険

前回までの記事の続きです。 世界史上最高の高齢者天国・日本を支える重要な柱の一つが、「高齢者以上に現役の社会的弱者にも個別事情に応じた人的援助を与えるべきである」にも書いたように、月5~35万円も1割負担で使える世界史上最高の介護保険です。 日…

子育てなしなら年金ゼロ

前回までの記事の続きです。 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)は日本の少子化対策の失敗原因の本質を解説している素晴らしい本です。しかし、残念ながら「では、どうすればいいのか」についてはほとんど書かれていません…

なぜ欧米の少子化対策は日本で無効だったのか

前回までの記事の続きです。 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)の著者は「パラサイト・シングル」という言葉の生みの親です。(南欧を除く)欧米では、学校卒業後、男女とも親の家を出て自立して生活するのが一般的ですが…

非正規雇用の女性が子育てと仕事の両立で悩むわけがない

前回までの記事の続きです。 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)によると、日本の少子化対策は、欧米の少子化対策を見習ったため、失敗しました。欧米で広まった「仕事による自己実現」という考え方は、日本では少数の女性…

日本の男性はなんてかわいそうなんだと西洋男性に同情される

前回の記事の続きです。 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)にある下のアンケート結果を見てください。 上記の本では、「日本の少子化対策が失敗した理由は、西洋の少子化対策を模倣したからである」と繰り返し主張してい…

日本の少子化対策はなぜ失敗したのか

「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)は素晴らしい本です。この本を読めば、他の少子化の本は読まなくていい、むしろ読まない方がいい、と言えるほど本質を突いています。日本の少子化対策として、保育所の確保だとか、女性…

インセル問題と少子化

下のようなデータを知っているでしょうか。 コンドーム会社Durexのセックス回数の国際比較調査です。こちらの記事のように東大教授も引用しているデータで、毎回日本が必ず最下位になり、しかも下から2番目のシンガポールの6割ほどです。 このデータが事実か…