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裁判官に呆れた日

裁判官は現在の日本に2800名ほどしかいません。34万人もいる医師と比べると、その1%未満しかいないわけです。必然的に、裁判官は知性も倫理観も極めて高い人たちの集団のはずです。

しかし、私が人生で出会ったわずか2名の裁判官の2名とも私は呆れています。どちらも、私が当事者である2つの裁判の裁判官です。名古屋家裁のH裁判官に呆れた話は「裁判官にブチ切れた日」に書きました。この記事では同じ愛知県の岡崎家裁の裁判官(名前は伝えられたのでしょうが、覚えていません)に呆れた話を書きます。

5月12日の岡崎家裁での第1回離婚裁判は、本来なら、4月18日の婚姻費用裁判より早く行われる予定でした。しかし、当初の予定日には、精神科医である私の外来予約が既に何件も入っていました。

私は年収1千万円以上も得る医師です。常識で考えて、医師の私の離婚問題など、私の100名ほどの私より不幸な担当患者さんの問題と比べると、小さいものです。以前の記事にも書いた通り、自殺を考えている患者さんも毎日のように来ます。患者さんの命を犠牲にするかもしれない危険を犯して、私的な問題を優先することなど、私にはできません。

私は外来予約の入っていない午後4時からの裁判開催を希望しましたが、「それだと裁判が短時間しかとれない」と言われたので、仕方なく外来がまだ入っていない1ヶ月以上も先の5月12日に変更しました。

私の病院は時間有休というものが認められています。最近、病院以外でも増えていると思いますが、1日まるまる有休とるのではなく、1時間単位で有休がとれるんですよね。労働者にとって極めて好ましい制度なので、普及すべきでしょう。

5月12日は11時半から裁判でした。「大切な裁判なので遅刻してはいけない」と私は考え、時間有休を多めに使って、10時半前には岡崎家裁に到着していました。つまり、あと1時間短く時間有休を使っても間に合ったわけです。

私が1時間も早く法廷に到着しているのと対照的に、裁判官は11時半に5分も遅れて法廷に入ってきました。そして、私が既に裁判所に送った書類を「主張としますか?」と意味不明なことを聞いてきました。

どうも裁判所に書類を送っても、裁判で「主張」としないと、裁判で考慮しない書類になるそうです。(裁判所に書類を送ったのに、裁判に使わなくていい、なんてことがあるのだろうか。もしあったとしても、そんなことは書面で「主張しない」と処理すればいいだけで、わざわざ裁判で確認する必要はない。時間のムダだ)と私は疑問に思いながらも、送付した全ての書類は主張とすることに同意しました。

元妻の弁護士相手にも、裁判官は同じような儀式を済ませました。

なんと、そこで第1回離婚裁判は終わってしまいました。次の裁判日程の話に移ったので、私は慌てて言いました。

「待ってください! これではなんのために私が来たか分かりません! せめて離婚が決定的になっていることは確認しませんか?」

法律上の結婚必勝法・女編」と「離婚時に財産分与など普通しません」に書いたように、私は元妻と話が成立しないだけでなく、元妻の弁護士とも会話が成立しませんでした。特に元妻の弁護士が「事実離婚」を理解していないため、「離婚は実質的に決定しているので、それを前提に話を進めましょう」と言う私と会話が全くかみ合わないのです。

裁判官がこの弁護士の勘違いを正してくれたら、離婚話が進みやすくなると思い、私は「夫の離婚意思が明確なら、別居してから離婚するまで1年もかかりませんよね?」と裁判官に質問しました。

裁判官「今回の裁判は質問する場ではありません」(では、なんのための場だったのでしょうか)

私「いえ、質問ではありません。事実の確認です」

裁判官「それは主張の確認という意味ですよね。先ほど伝えた通り、今、終わりました」

裁判官とすら私は会話がかみ合っていません。

私「そうではなく、別居して、一方の離婚の意思が決定的なら、裁判所が離婚を却下することはまずないという事実の確認です」

裁判官「えーと(しばらく考える)。それは質問ですよ。今、私が答えることはできません」

私「では、別居して1年以内に離婚する統計データの書類を提出してもいいですか?」

裁判官「それはインターネットの情報ですか?」

私「はい」

裁判官「インターネットの情報は真偽不明のものが多いですよ」

私「厚労省のホームページの統計ですよ。裁判所は厚労省のホームページの統計を信用しないんですか?」

裁判官「厚労省の統計は、あまり関係ないでしょう。三権分立で、司法権の独立があるのですから。行政の書類は関係ありません」

(は? 三権分立? なにを言っているんだ? なぜ見てもない書類を関係ないと断言できるんだ? この人、本当に裁判官か?)

私が二の句を継げなくなっていると、裁判官は「別に今、新しい書類を主張に含めなくてもいいでしょう。次の裁判までに送ってくれればいいです」と言って、次の裁判日程を手早く決めて、11時50分頃に裁判は終わりました。裁判官と元妻の弁護人はさっさと法廷から出ていきました。

たっぷり時間をとるために、5月12日11時半からの裁判にしたはずなのに、わずか15分程度で裁判が終わったのです。私は14時半まで時間有休をとっていたので、裁判前と同様、裁判後にも無駄な時間有休ができてしまいました。

裁判後、私はしばし茫然としました。

50代男性と思われる先ほどの裁判官の態度があまりにひどかったことに、まず呆れていました。信じられないことですが、少なくとも私の主観では事実なので書いておくと、「裁判官にブチ切れた日」で私が大声をあげるほど、ひどい態度をとったH裁判官よりも、この岡崎の裁判官は態度がさらにひどかったのです。離婚という人生がかかった裁判の裁判官とはとても思えず、まるで「100円の商品を万引きした小学生に対処する店員」のような態度でした。

(また万引き犯か。忙しいのに困るねえ。まあ、お金を払ってくれたら、初犯なら親も警察も呼ばないよ。でも、お金を払えないなら、どちらも呼ぶからね。あ、これは俺が決めたんじゃなくて、店が決めたルールだから。俺に抗議しないでね)

そんな態度でした。

ふと気づくと、裁判中に同席していた書記官が、申し訳なさそうな目で、私を見ています。

「裁判所の常識は世間の非常識なんでしょうか?」と私が聞くと、「いや、まあ……」と書記官が口を濁したので、ようやく「自分はおかしくない」と私もはっきり認識できました。

裁判官も弁護士も、上記の裁判での異常なやりとりが、さも当然のように振舞っていたので、(おかしいのは自分の方なのか)と私も錯覚しはじめていたのです。

なお、離婚裁判の第2回は5月26日に行われて、同じように「主張」にします、という儀式だけで終わり、私の裁判官への「質問」もなかったので、今度はわずか10分で終わりました。予想通りの短さであり、私も学習能力があるので、時間有休は無駄なく申請していました。その離婚裁判の判決は6月24日、つまり明後日に出るそうです。

もし私の裁判が一般的な日本の裁判であるなら、日本の裁判所は全て書類で、場合によっては全てネットで、処理するといいと思います。裁判所に出席するために有休とる必要もなくなりますよ。私のように患者さんのために休めない、と悩む医師もいなくなります。裁判所なんて立派な建物いりません。税金はかなり節約できるはずです。