未来社会の道しるべ

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国際

アメリカが朝鮮戦争の現実を認めていればベトナム戦争の泥沼化もなかった

朝鮮戦争は双方に奇襲成功があり、戦局が大きく変わっています。そのどちらの奇襲作戦も、味方の大反対を覆して、実行しています。 一つ目は1950年9月15日、アメリカ軍の仁川上陸作戦です。マッカーサー自身も認めるように、失敗の可能性が高く、しかも失敗…

なぜ中国は朝鮮戦争に参戦したのか

「人びとのなかの冷戦世界」(益田肇著、岩波書店)によると、タイトルの答えは毛沢東の気まぐれとしか言いようがありません。 毛沢東が最初に参戦を要求されたのは、中華人民共和国の建国1周年の1950年10月1日です。その夜のうちに毛沢東は中国参戦の電報を…

なぜアメリカは朝鮮戦争に参戦したのか

「人びとのなかの冷戦世界」(益田肇著、岩波書店)によると、朝鮮戦争が1950年6月25日から始まった、との認識は当時、誰も持っていませんでした。多くの韓国人は1945年からずっと内戦は継続していて、1950年6月25日の北からの大攻勢は、その内戦の一部とし…

朝鮮戦争がなかったら

朝鮮戦争は200万人以上の死者を出した大きな戦争でしたが、戦争前と戦争後で、国境は全く変わらず、両国の政治体制も変わらず、両国の最高権力者も変わりませんでした。一方で、近隣の国は現在まで続く多大な影響を与えています。 まず最も影響を受けたのは…

なぜ大躍進政策より文化大革命の評判が悪いのか

「中国共産党の歴史」(高橋伸夫著、慶應義塾大学出版会)は興味深い本でした。 ほとんどの歴史書で統計的に短く扱われている大躍進政策について、最新の研究結果を含めて、詳しく書いています。地域によって、餓死者数はかなりの差があるようです。 この大…

2度の世界大戦から学べることの一つ

大航海時代から、西半球はヨーロッパ人に征服されました。先住民はほぼ絶滅させられました。500年後の現在になっても、先住民が征服者である白人より少ないのはもちろん、奴隷として連れてこられた黒人よりも少ない事実があります。おそらく、西半球が大航海…

現在の世界情勢は第一次世界大戦前と似ている

今朝の朝日新聞では、現在の世界情勢は戦間期(第一次世界大戦と第二次世界大戦の間)と似ていると主張していました。 2014年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、当時の安倍首相が日中関係を第一次世界大戦前の英独と似ていると発言して、世界中…

世界史上の全ての国はなぜ外交下手なのか

トランプ大統領候補やイギリスのEU離脱など、主に先進民主主義国で右翼と排外主義の台頭が冷戦終結後から30年間ほど続いています。 この理由は、いろいろあるでしょう。 まず、第二次世界大戦後、先進国は大きな戦争を経験していないことです。第一次世界大…

拉致問題が解決しないなら核ミサイルを打たれた方がマシだ

前回の記事の続きです。 「戦争の大問題」(丹羽宇一郎著、東洋経済新報社)を読んで、私は初めて認識したことですが、2002年9月、小泉純一郎と金正日が調印した日朝平壌宣言では、北朝鮮がNPT(核不拡散条約)を遵守し、IAEA(国際原子力機関)による査察を…

学位論文のための難民調査

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 著者はオックスフォード大学の博士課程の研究のため、ガーナのブジュブラムに来ていました。そのオックスフォード大学の大先輩にデビッド・タート…

恵まれた難民たち

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 難民「なあ、俺って、リベリアに帰った方がいいのかな?」 著者「帰りたいのか?」 難民「いや、そうじゃないけど……。でも、UNHCRやガーナ政府は…

難民キャンプの政治

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民たちは政治に参加してもいいのだろうか? もちろんだ。難民の政治的権利は難民条約および各種人権条約に規定されている」 そう本にはありま…

先進国移住の可能性は難民にとっての麻薬

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民キャンプの経済事情」で、難民キャンプ内の多くの職業を書きましたが、これほど多種多様な職業が難民キャンプで存在している例は少数です。…

難民キャンプ内の助け合い

前回の記事の続きです。 「外圧にさらされる集団は、内部での結束力が高まるのが常だ」 「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)からの引用です。 難民キャンプが長期化すると、難民たちは受入国から帰国するように促されます。どの難…

難民キャンプの経済事情

「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)は素晴らしい本でした。難民キャンプの経済事情について調査した本です。 「左翼のキレイ事に吐気を催す保守派たちへの共感」の記事で書いた生半可な海外ボランティアを経験した一人と、私との…

マニュアル・スカベンジャーを推奨するヒンドゥー僧侶の一例

1950年代頃まで、日本の高学歴の青年たちは難しい哲学の本を肌身離さず持っていたそうです。私の記憶が正しければ、藤子・F・不二雄も、級友たちはみんなそうしていたと書き残していました。「教養本のすすめ その1」からの記事に書いた私のように、哲学書は…

「IT先進国インド」の暗部

ビクトリア朝時代の全盛期の大英帝国のロンドンは、人類史上最高の富豪と人類史上最悪の貧困が同居していました。 人類史上最高の富豪は言い過ぎかもしれませんが、それ以前の貴族ではありえないほどの物質的な豊かさを手に入れられる面と、それ以後の税金や…

インドの野外排泄ゼロ達成は大嘘である

「摩訶不思議国家インド」では、トイレを使用しないインド人は今も何億人もいると書きましたが、実は、インドはスワッチ・バーラトという「史上最大のトイレ作戦」を2014年から5年間実施し、2019年10月2日に野外排泄ゼロが成功したとモディ首相が祝典まで開…

5千円札と1万円札を使用不可にしても支持率7割

最近のインド本を読むと必ず出てくるモディの高額紙幣廃止政策は、「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)にも書かれています。外国人を含むインド通貨を使う全ての人の生活を大混乱に陥れた政策だったので、インドに関わりにある人はどうしても書きた…

摩訶不思議国家インド

「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)は素晴らしい本でした。 私がインドに興味を持つきっかけになった本の一つに「河童が覗いたインド」(妹尾河童著、新潮文庫)があります。その本でもトイレには注目しているように、インドに旅行して、トイレが気…

なぜ日本のカンボジア支援は失敗したのか

1992~1993年に日本を含めたPKOが民主選挙に貢献したカンボジアは、現在、経済力を背景とした中国の影響力が増し続け、民主主義も後退しています。2017年には最大野党のカンボジア救国党を政府権限で解党させるなど、民主主義国家としてはありえないほどの独…

中国の現実的外交は、ある国と同じである

今年3月10日のイランとサウジアラビアの国交正常化を中国が仲介したニュースには驚きました。対立する両国家の関係を正常化させるなど、国連など国際機関を除けば、アメリカとソ連(ロシア)くらいしかできなかった特権を中国が持ったのですから、私の世界観…

「資本主義と共産主義」あるいは「民主主義と共産主義」が対立しない実例は70年以上前からインドにあった

私が生まれる前の話になりますが、「民主主義=資本主義」という考え方が、戦後から1970年代くらいの日本人には強くあったようです。昔の本を読むと、「共産主義VS民主主義」という言葉、あるいは考え方が、特に反共産主義派(資本主義擁護派)から頻出しま…

なぜミャンマーで2021年の軍事クーデターが起きて、今後ミャンマーはどうなるのか

21世紀初頭、ミャンマーは20年間も憲法を無視した軍事独裁政権が続いていました。しかし、2008年に憲法ができ、2011年に軍最高司令官とは別の大統領が憲法にのっとって就任し、2016年に民主選挙による政権移譲が行われました。ミャンマーの民主化は着実に進…

2010年代のミャンマーの民主政治期

2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きます。事実上の最高指導者であるアウンサンスーチーが拘束され、「ミャンマー現代史」(中西嘉宏著、岩波新書)によると、「2011年以来続いていた民主政治」が終わりました。 ミャンマーは軍事独裁政権が長く…

世界で最も注目すべき国はインドである

タイトルをより正確に修正すれば、「現在、注目されるべき程度と、実際に注目されている程度の差が最も大きい国はインドなので、インドは最も注目すべき」になります。 日本だと、この命題は間違いなく真でしょう。もう既にインドはG7の多くの国をGDPで抜い…

中国はアメリカのようだが、インドはヨーロッパのようだ

先日、久しぶりの海外旅行でバリ島に行きました。千年以上の歴史あるダンスのようで、実際は西洋人のために100年ほど前に作られたケチャダンスを観ていた時、妻が観客席を指して「人種のるつぼだね」と言っていました。 そこには500人くらいの観客がいたと思…

経済縮小時代を迎える韓国と日本

韓国の不動産バブルが崩壊しはじめました。ここ10年ほどの韓国の地価の値上がりは異常で「まるでバブル時代の日本のようだ」と何度も言われ、いずれバブルが崩壊すると多くの経済専門家が指摘していたのに、「不動産価値が上がって資産が倍増した」などと能…

「外国とは西洋先進国のこと」という錯覚

このブログで最もアクセスされた記事は「変化のスピードが恐ろしく遅い時代」になります。ただし、犯罪カテゴリの記事を書き始めてからは、「土浦連続殺傷事件犯人家族は典型的な日本人」と「『秋葉原通り魔事件の犯人の母の罪は取り返しがつかないものだっ…

おまえなんかに山上を語る資格はない

「82年生まれ、キム・ジヨン」の翻訳者の本「韓国文学の中心にあるもの」(斎藤真理子著、イースト・プレス)によると、「キム・ジヨン」は韓国人男性のほとんどから強い反感を買いましたが、日本人男性からは反感がほぼ聞かれず、むしろ「これは男性こそ読…