未来社会の道しるべ

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国際

学位論文のための難民調査

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 著者はオックスフォード大学の博士課程の研究のため、ガーナのブジュブラムに来ていました。そのオックスフォード大学の大先輩にデビッド・タート…

恵まれた難民たち

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 難民「なあ、俺って、リベリアに帰った方がいいのかな?」 著者「帰りたいのか?」 難民「いや、そうじゃないけど……。でも、UNHCRやガーナ政府は…

難民キャンプの政治

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民たちは政治に参加してもいいのだろうか? もちろんだ。難民の政治的権利は難民条約および各種人権条約に規定されている」 そう本にはありま…

先進国移住の可能性は難民にとっての麻薬

前回の記事の続きです。情報源は「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)になります。 「難民キャンプの経済事情」で、難民キャンプ内の多くの職業を書きましたが、これほど多種多様な職業が難民キャンプで存在している例は少数です。…

難民キャンプ内の助け合い

前回の記事の続きです。 「外圧にさらされる集団は、内部での結束力が高まるのが常だ」 「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)からの引用です。 難民キャンプが長期化すると、難民たちは受入国から帰国するように促されます。どの難…

難民キャンプの経済事情

「アフリカの難民キャンプで暮らす」(小股直彦著、こぶな書店)は素晴らしい本でした。難民キャンプの経済事情について調査した本です。 「左翼のキレイ事に吐気を催す保守派たちへの共感」の記事で書いた生半可な海外ボランティアを経験した一人と、私との…

マニュアル・スカベンジャーを推奨するヒンドゥー僧侶の一例

1950年代頃まで、日本の高学歴の青年たちは難しい哲学の本を肌身離さず持っていたそうです。私の記憶が正しければ、藤子・F・不二雄も、級友たちはみんなそうしていたと書き残していました。「教養本のすすめ その1」からの記事に書いた私のように、哲学書は…

「IT先進国インド」の暗部

ビクトリア朝時代の全盛期の大英帝国のロンドンは、人類史上最高の富豪と人類史上最悪の貧困が同居していました。 人類史上最高の富豪は言い過ぎかもしれませんが、それ以前の貴族ではありえないほどの物質的な豊かさを手に入れられる面と、それ以後の税金や…

インドの野外排泄ゼロ達成は大嘘である

「摩訶不思議国家インド」では、トイレを使用しないインド人は今も何億人もいると書きましたが、実は、インドはスワッチ・バーラトという「史上最大のトイレ作戦」を2014年から5年間実施し、2019年10月2日に野外排泄ゼロが成功したとモディ首相が祝典まで開…

5千円札と1万円札を使用不可にしても支持率7割

最近のインド本を読むと必ず出てくるモディの高額紙幣廃止政策は、「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)にも書かれています。外国人を含むインド通貨を使う全ての人の生活を大混乱に陥れた政策だったので、インドに関わりにある人はどうしても書きた…

摩訶不思議国家インド

「13億人のトイレ」(佐藤大介著、角川新書)は素晴らしい本でした。 私がインドに興味を持つきっかけになった本の一つに「河童が覗いたインド」(妹尾河童著、新潮文庫)があります。その本でもトイレには注目しているように、インドに旅行して、トイレが気…

なぜ日本のカンボジア支援は失敗したのか

1992~1993年に日本を含めたPKOが民主選挙に貢献したカンボジアは、現在、経済力を背景とした中国の影響力が増し続け、民主主義も後退しています。2017年には最大野党のカンボジア救国党を政府権限で解党させるなど、民主主義国家としてはありえないほどの独…

中国の現実的外交は、ある国と同じである

今年3月10日のイランとサウジアラビアの国交正常化を中国が仲介したニュースには驚きました。対立する両国家の関係を正常化させるなど、国連など国際機関を除けば、アメリカとソ連(ロシア)くらいしかできなかった特権を中国が持ったのですから、私の世界観…

「資本主義と共産主義」あるいは「民主主義と共産主義」が対立しない実例は70年以上前からインドにあった

私が生まれる前の話になりますが、「民主主義=資本主義」という考え方が、戦後から1970年代くらいの日本人には強くあったようです。昔の本を読むと、「共産主義VS民主主義」という言葉、あるいは考え方が、特に反共産主義派(資本主義擁護派)から頻出しま…

なぜミャンマーで2021年の軍事クーデターが起きて、今後ミャンマーはどうなるのか

21世紀初頭、ミャンマーは20年間も憲法を無視した軍事独裁政権が続いていました。しかし、2008年に憲法ができ、2011年に軍最高司令官とは別の大統領が憲法にのっとって就任し、2016年に民主選挙による政権移譲が行われました。ミャンマーの民主化は着実に進…

2010年代のミャンマーの民主政治期

2021年2月1日にミャンマーで軍事クーデターが起きます。事実上の最高指導者であるアウンサンスーチーが拘束され、「ミャンマー現代史」(中西嘉宏著、岩波新書)によると、「2011年以来続いていた民主政治」が終わりました。 ミャンマーは軍事独裁政権が長く…

世界で最も注目すべき国はインドである

タイトルをより正確に修正すれば、「現在、注目されるべき程度と、実際に注目されている程度の差が最も大きい国はインドなので、インドは最も注目すべき」になります。 日本だと、この命題は間違いなく真でしょう。もう既にインドはG7の多くの国をGDPで抜い…

中国はアメリカのようだが、インドはヨーロッパのようだ

先日、久しぶりの海外旅行でバリ島に行きました。千年以上の歴史あるダンスのようで、実際は西洋人のために100年ほど前に作られたケチャダンスを観ていた時、妻が観客席を指して「人種のるつぼだね」と言っていました。 そこには500人くらいの観客がいたと思…

経済縮小時代を迎える韓国と日本

韓国の不動産バブルが崩壊しはじめました。ここ10年ほどの韓国の地価の値上がりは異常で「まるでバブル時代の日本のようだ」と何度も言われ、いずれバブルが崩壊すると多くの経済専門家が指摘していたのに、「不動産価値が上がって資産が倍増した」などと能…

「外国とは西洋先進国のこと」という錯覚

このブログで最もアクセスされた記事は「変化のスピードが恐ろしく遅い時代」になります。ただし、犯罪カテゴリの記事を書き始めてからは、「土浦連続殺傷事件犯人家族は典型的な日本人」と「『秋葉原通り魔事件の犯人の母の罪は取り返しがつかないものだっ…

おまえなんかに山上を語る資格はない

「82年生まれ、キム・ジヨン」の翻訳者の本「韓国文学の中心にあるもの」(斎藤真理子著、イースト・プレス)によると、「キム・ジヨン」は韓国人男性のほとんどから強い反感を買いましたが、日本人男性からは反感がほぼ聞かれず、むしろ「これは男性こそ読…

「キム・ジヨン」のバックラッシュの妥当性

「ウーマンリブ」という言葉は死語になったようで、代わりに「フェミニズム」という言葉がここ10年ほど、毎日のように見聞きします。どちらも意味は似たようなものでしょう。その時代を生きていたわけではありませんが、「ウーマンリブ」には9割程度の共感を…

黒船と本気で戦っていたら日本は攘夷を達成できたが、それは最悪の選択であった

「幕末の動乱は不可避だったのか」の記事に誤解を生む表現があったので、訂正させてもらいます。 この記事では「当時のアメリカ側の文献を読めば読むほど、ペリーは日本と本気で戦争する意思はほとんどなく、アメリカ本国政府に至っては日本と戦争する意思な…

日本が韓国に再逆転する場合の理由

「日本経済の成長も衰退も全ては人口動態が根本原因である」に書いたように、日本が韓国に再逆転するとしたら、その最大の理由は人口動態にあると私は考えます。つまり、韓国が日本以上の少子高齢化により韓国経済の足を引っ張るからだと考えています。 とは…

現在の日本が最も参考にするべき国は韓国である

これまでの記事で明らかでしょう。断定します。間違いありません。アメリカやヨーロッパの報道をしている暇があったら、一文、一秒でも多く韓国について報道してください。 「反響が大きいから」「視聴率が高くなるから」という、くだらない理由で、韓国での…

がん検診にペナルティをなぜ与えないのか

「がん検診に上限年齢は設けるべきである」にも書いた意見ですが、もう一度書きます。 日本のがん検診は低いままです。 当然です。他国のようにペナルティがないのですから。 韓国は、ちょっとした風邪でもクリニックにかかれる世界で二つしかない国の一つで…

韓国の大学英語講義の失敗

「あてにならない世界大学ランキング」や「グローバル30で唖然とした英語教員の質」に書いたように、現在、日本は大学での英語教育を推進させています。「英語公用都市を実現させた韓国」や「韓国の英語教育熱」に書いたように、日本より遥かに英語教育熱が…

韓国と日本のIT社会の絶望的な差

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)からの引用です。 韓国では住民登録番号(日本のマイナンバーにあたる)を通じて、生年月日、性別、出生地、顔写真、10本の指紋、家族構成、行政サービス、納税、医療、銀行、教育、福祉、出入国管理、クレジット…

歴史が暗記科目でないように政治ニュースも暗記教養ではない

日本に限った話ではありませんが、歴史科目では人物名を記憶することが主な勉強内容になりがちです。本来、歴史はどの時代にどんな事件が起きて、それによって民衆の生活がどう変わったかが重要であるはずですが、教科書にそんな記述がほとんどなく、当然、…

現在の韓国と未来の韓国

「韓国カルチャー」(伊東順子著、集英社新書)は「爆速」に変化する韓国という表現が頻出します。中国に住んだ経験のある私からすると、この表現には違和感がありました。もっと言えば、視野の狭さを感じました。 「変化のスピードが恐ろしく遅い時代」の日…