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江戸時代の識字率は低かった

江戸時代の日本は寺子屋が普及しており、識字率も7割と世界最高でした。この教育力の高さこそ、非西洋国で日本だけが帝国主義国の仲間入りできた理由です。

上記の説は、1970年代頃から誕生した俗説だと知っている日本人は、2025年だと、まだ少数派ではないでしょうか。私も先週まで、上記の俗説を信じていた多数派でした。

実際には、自分の名前すら書けない人が下記の通り、明治時代に入っても鹿児島県では多数派でした。近江商人の歴史があるからか、滋賀県の男子だと自著率は9割ほどですが、滋賀県でも女子になると江戸時代は自分の名前すら書けない者が多数派だったようです。

この記事の根拠は「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」(斉藤泰雄)という論文になります。

日本の識字率の高さが間違いだとしたなら、なぜ日本だけが非西洋国でいち早く産業革命を成し遂げて、第一次世界大戦後には4つの常任理事国の一つに選ばれたのか、という疑問が出てきます。

一つの答えは「非西洋国で最も早く大規模に、先進の西洋文明の長所を取り入れたから」になるはずです。

ただし、「西洋文明を取り入れようとした国は他にも多くあったが、なぜ日本だけがそれを19世紀後半に迅速に実現できたのか」という疑問は残ります。

「日本人は合理的に考えるから」「日本人は伝統よりも実利を重視したから」などの理由が考えられるでしょうが、この仮説の根拠はありませんし、こんな仮説の正誤の証明は難しいでしょう。

その疑問と並んで、それ以上に現代の日本人にとって重要な疑問は次になるはずです。

明治維新期、他国の長所を世界最速で取り入れた日本人たちが、令和時代の今、既得権益を守ることに必死で、世界で最も変化しない国にまで落ちぶれてしまったのはなぜなのでしょうか。