福祉
光市母子殺害事件の犯人である福田孝行が父から暴力を受けていたことは、どの本にも書かれています。福田の死刑を長年訴えてきた遺族の本村でさえ、福田の幼少期の育て方に問題があったことを認めています。「なぜ僕は『悪魔』と呼ばれた少年を助けようとし…
今朝の朝日新聞の記事です。 「年金が減ったうえに、医療費の負担が増え、これからは病院に行きたくても我慢するしかありません」 横浜市に住む斎藤キヨ子さん(78)は今月14日に届いた新しい保険証を手にため息をつく。「一部負担金の割合」の欄には「…
このブログで何度も書いているように、日本の医療は世界最高です。特に高齢者に関してはダントツで世界史上最高の医療・福祉国家で、結果として高齢者に対する過剰医療、過剰福祉が行われています。高度経済成長もJapan as No.1も経験してきた十分恵まれた高…
前回までNHKの介護殺人報道を批判しましたが、毎日新聞の介護殺人報道はもっとひどかったです。 毎日新聞の取材がNHKに劣る理由は、毎日新聞がNHKより先に報道したからでしょう。「介護殺人」(毎日新聞大阪社会部取材班著、新潮社)に書いてあるように、介…
「母親に、死んでほしい」(NHKスペシャル取材班著、新潮社)は、NHKの記者たちがここまで医療や介護や福祉について知識が乏しいのか、と失望してしまう本でした。この報道を観た多くの日本人も好意的な反応を示した、と書いてあります。だとしたら、日本人…
NHKスペシャル「私は家族を殺した」という介護殺人をテーマにした番組が2016年に放送されたようです。この番組を私は観ていませんが、同取材班の「母親に、死んでほしい」(NHKスペシャル取材班著、新潮社)という本によると、放送を観た多くの日本人は「共…
「ルポ児童相談所」(大久保真紀著、朝日新書)は素晴らしい本でした。これこそ朝日新聞記者がするべき報道です。「マザコン国家ニッポン」で私が批判した朝日新聞Eduはお受験冊子ではなく、こういった恵まれない子どもたちをテーマにした教育冊子にすべきで…
「現在の日本で最も足りていない職種はなんでしょうか?」 人によって上の質問の答えは変わってくるでしょう。介護士、保育士、プログラマー、3K仕事などがまず思いつくでしょうか。 しかし、100年後、あるいは200年後の人が現代を振り返ると、社会福祉士が…
日本では長年、臨床心理士という民間資格はあったものの、公認心理士という資格はありませんでした。受験料徴収で税金の足しになるのならともかく、そうでないのなら、公認心理士の資格は不要でしょう。そもそも、心理士という職業が社会に不要だと私は考え…
しばしば誤解されていることですが、人格障害(パーソナリティ障害)は病気かどうか明確でありません。確かに、人格障害の診断基準はあり、病名は公式に使えて、精神療法の保険適応にはなっています。しかし、精神医学では「本当に病気なのか」「医療で対応…
17才の少年が祖父母を殺害した川口高齢夫婦殺害事件では、日本の親権が強すぎるために起きた悲劇です。 少年の母はお金があると、ホストクラブやゲームセンターで必ず散財します。お金がなくなると、「お前のせいで金がなくなった」と息子を責めて、息子を通…
「親ガチャ」という言葉があります。どの親に生まれたかで人生が決まってしまう側面が強い日本なら、もっと前から存在していてもいい言葉だったと私は思います。 アジアの国は知りませんが、法制度上、西洋先進国で、日本ほど家族の扶養義務が強い国はありま…
ベーシックインカムが社会のためになると主張する人はバカか、嘘をついています。10年後か50年後か分かりませんが、「2020年前後にベーシックインカム導入が社会のためになると信じていたバカがいる」と笑い話になると私は確信します。断定しますが、ベーシ…
前回の記事の続きです。 秋葉原通り魔事件が起こった直後、犯人である加藤智大の両親へのテレビインタビューが行われています。今でもyou tubeで観ることができますが、最初から泣いていてインタビューに全く答えてられなかった母は、「親の責任」について問…
このブログで何度か書いていることですが、凶悪犯罪者の本を読むと、私は自分との共通点をよく見つけてしまうのですが、とりわけ加藤と私の共通点は多いです。母の教育が厳しすぎたこと、長男であること、弟よりも長男に厳しくしたことを親ですら認めている…
次の記事に書くように、犯人の小6生のインターネット使用を制御できていれば、防げた可能性は高いと私は考えています。ただし、こういった殺人事件は一定の確率で起こるとも考えるべきでしょう。 私はこれまでの犯罪記事で「家庭支援相談員」の必要性を訴え…
前回までの記事の続きです。「死刑のための殺人」(読売新聞水戸支局取材班著、新潮文庫)を元に書いています。 犯人の金川は高校3年の7月に弓道部を引退、9月頃に進学ではなく就職することを決めます。「唐突に、大学に行かない、と結論だけ言われた。理由…
1979年に起きた三菱銀行人質事件は、その残虐性において、日本の人質犯罪史上最悪でしょう。猟銃で脅しながら、人質銀行員に同僚の耳をナイフで削ぎ落させ、女子行員を裸にして並ばせ、肉の盾にしています。犯人の梅川は42時間もの長時間、一睡もせず銀行内…
日本の公的医療保険と公的介護保険は、現物給付です。病気になったら、介護の必要が出てきたら、お金がもらえるのではなく、治療や介護を格安で受けられる制度です。 他の全ての社会保障も現物給付にした方が好ましいのではないでしょうか。 たとえば、収入…
オランダ安楽死統計 オランダの安楽死の統計は上記の通りです。ここで注目したいのは、安楽死した場所の8割が自宅であること、および、安楽死させた医師の85%が家庭医であることでしょう。 以前の記事でも書きましたが、欧米では自宅近くの医師を家庭医とし…
今回の記事は「安楽死・尊厳死の現在」(松田純著、中公新書)を元にしています。 2001年、オランダは安楽死を合法化した世界で最初の国です。オランダの安楽死法によると、患者の要請に基づいて患者の生命を終結させる医師は次の六つの「注意深さの要件」を…
ろう者にはバイリンガル教育(日本手話を熟達させた後、書記日本語を習得させる方法)でいくべきなのか、トータルコミュニケーション教育(口話も手話も用いた方法)でいくべきなのか、科学的な結論は出ていないようです。 日本手話教育を推進する明晴学園校…
前回までの記事の続きです。 聴覚障害者は日本語の「聞く」「話す」だけでなく、「読む」「書く」の習得も難しい、との統計的な事実があります。 「聴覚障害教育これまでとこれから」(脇中起余子著、北大路書房)には、聴覚障害児によくある日本語習得困難…
前回までの記事の続きです。 「手話を生きる」(斉藤道雄著、みすず書房)を納得しながら読んでいた時、最後の日本語科(国語を明晴学園ではこう呼ぶ)の授業の紹介で、大きな疑問が生じました。小学校6年生なのに、「呼んでみました」を「呼んで、見る」と…
西川はま子という女性はその劇的な人生のため、手話法と口話法の歴史の中でほぼ必ず言及される方です。 はま子は1917年に滋賀県の裕福な家庭に生まれます。はま子がどれくらいの聴覚障害者であったかは判然としませんが、重度障害者ではなく、わずかながらも…
現在、日本のろう学校の9割で行われている「手話付きスピーチ」とは、先生が声でしゃべり、その日本語の一部を手話の単語にして手を動かす手話のことです。もっと端的に言ってしまえば、これは「日本語対応手話」で授業しているということです。 ろうの人た…
「手話を生きる」(斉藤道雄著、みすず書房)は私の言語観をゆさぶる本でした。私の世界観を広げてくれた本なので、これから記事にさせてもらいます。 以前、私はボランティア活動でろうの方と接する機会がありました。正直に白状しますが、ろうの方たちと接…
「子育て支援と経済成長」(柴田悠著、朝日新聞出版)は読む価値のほとんどない本でした。客観的な部分は分かりきった内容で、主観的な部分は私にとって首をかしげたくなるような見解でした。しかし、おまけのように最後の章にある「財源をどうするか」だけ…
病児保育なるものがあると知ったのは、私が病院で働くようになってからです。病児保育とは、病気になった子どもを保育所ではあずかれないので、保育所の代わりにあずかってくれる施設です。子どもが病気になったからといって、両親は仕事を簡単に休めない時…
「効果的な利他主義宣言」(ウィリアム・マッカスキル著、みすず書房)は極めて興味深い本でした。「知ってはいけない」(矢部宏治著、講談社現代新書)が日本中の全ての人に読ませたい本なら、「効果的な利他主義宣言」は世界中の全ての人に読ませたい本で…