未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

2021-01-01から1年間の記事一覧

死刑よりも反省し、被害者に償うべきでないのか

下は熊谷男女4人殺傷事件で死刑が確定した尾形英紀の手紙で、「絞首刑」(青木理著、講談社文庫)からの抜粋です。 俺の考えでは死刑執行しても遺族は、ほんの少し気がすむか、すまないかの程度で何も変りませんし、償いにもなりません。俺個人の価値観から…

死刑により罪が償えるのか

前回の記事の続きです。 1979年~1983年の半田保険金殺人事件で、被害者の兄である原田は「死刑以外に考えられない」と一審で発言しています。原田には、弟の死後に保険金1400万円が支払われていました。しかし、犯人の長谷川の逮捕後、弟が交通事故死でなく…

被害者が死刑よりも望むことはないのか

先進国の中で、日本は人権意識の低い国です(断定します)。その代表例として、しばしば挙げられるのは死刑が残っていることです。死刑を残している先進国はアメリカと日本、そしてシンガポールと台湾くらいです。韓国ですら事実上死刑は廃止されています。 …

拘置所の精神科医官が加賀乙彦みたいな奴ばかりでないことを願う

前回の記事までに書いたように、「教誨師」(堀川恵子著、講談社)は批判したいところもありますが、全体としては素晴らしい本でした。一方、「死刑囚の記録」(加賀乙彦著、中公新書)はひどい本でした。特に著者である加賀乙彦の人間観、社会観が拙すぎま…

日本のジャーナリストはなぜ取材相手を必要以上に擁護するのか

以前も指摘したことですが、日本のジャーナリストは取材しているうちに、取材相手に抱き込まれ、社会良識を捨ててまで(本人はそう自覚していないでしょうが)取材相手を尊重することが少なくありません。「教誨師」(堀川恵子著、講談社)の著者も同じです。…

教誨師の許されざる失敗

1960年代、田中伊三次という法務大臣は大量の死刑執行をしたことで有名です。彼についての話題が教誨師の渡邉と、ある死刑囚の間で交わされました。 死刑囚「先生、あの田中という大臣はとんでもない男ですね。いくら死刑囚だって、虫けらを殺すんじゃあるま…

加害者なのに心は被害者

「教誨師」(堀川恵子著、講談社)からの抜粋です。 死刑事件の加害者である死刑囚には被害者的な恨みにとらわれている者があまりに多く見受けられた。幼い頃から家や社会でしいたげられ、謂れのない差別や人一倍の不運にさらされて生きてきた者が圧倒的に多…

男性の性欲

「教誨師」(堀川恵子著、講談社)は男性の性欲を肯定的にとりあげています。 健康的な男性は全員、性依存症とも呼べるほど性欲が強い、と私は考えています。少なくとも私自身は性依存症と診断されても仕方ないほど、性欲が強いです。もしこの性欲がなければ…

三鷹事件の竹内景助と教誨師

三鷹事件は代表的な冤罪事件です。誰が考えても竹内景助の単独犯の可能性はゼロに等しいのに、竹内は死刑を宣告されます。しかし、誰もが冤罪だと分かっているため、最高裁の死刑確定後、どの法務大臣も死刑執行しないまま、竹内は獄中で12年間過ごした後、…

人間誰しも悪魔のささやきに身を委ねる機会がある

「教誨師」(堀川恵子著、講談社)は性格(話し方や立ち居振る舞い)のいい例外的な死刑囚ばかり紹介しています。その筆頭で紹介されている死刑囚が山本勝美(仮名)です。 1961年冬、二人の男が中野刑務所を白昼堂々と脱走します。脱獄犯は刑務官の頭をバー…

教誨師

国際的な定義として、苦痛には4種類あるそうです。身体的な苦痛、精神的な苦痛、社会的な苦痛、霊的な苦痛です。身体的な苦痛と精神的な苦痛は直感的に理解できますし、社会的苦痛は貧困や差別などがあたると言われると、理解できます。しかし、霊的な苦痛と…

佐世保小6女児同級生殺害事件の犯人は発達障害なのか

犯人の少女は学校で友だちが何名もいて、先生にも暗いという印象を与えず、家庭内でおとなしく、複数の交換日記のグループに入っていました。この少女が社会的なコミュニケーション能力に問題のある発達障害なら、発達障害でない人の方が少数派になるでしょ…

佐世保小6女児同級生殺害事件はどうすれば防げたのか

次の記事に書くように、犯人の小6生のインターネット使用を制御できていれば、防げた可能性は高いと私は考えています。ただし、こういった殺人事件は一定の確率で起こるとも考えるべきでしょう。 私はこれまでの犯罪記事で「家庭支援相談員」の必要性を訴え…

自分の子どもが同級生に殺されたら

私が中学生の時、同じ中学の生徒が校舎の3階のベランダから落ちる事件がありました。その事件を聞いた私の母の最初の言葉は「担任の先生は大変だねえ」でした。落ちた本人よりも先生を心配する母に私はひどくショックを受けました。 母がそのような感想を持…

川名荘志ごときが一流新聞記者になれてしまう国

「最初のころ、新聞記者という肩書を持った僕と、ありのままの僕は、ずっとちぐはぐなままだった。まるで薄ぺらの体に、ぶかぶかの服を押し着せられたかのように。でも、あの蒸し暑い夏の日、僕は新聞記者になってしまった」 読んでいる方が赤面するような自…

オリンピックの功績

こちらのブログを読んでもらえれば分かる通り、コロナ禍があろうがなかろうが、私はオリンピック反対派でした。特に税金を使ってまで開催することに反対でした。 しかし、小山田圭吾のイジメ騒動があってから、オリンピックを開催した意義があったとようやく…

小山田圭吾をなぜ今から懲役刑にできないのか

小山田圭吾が過去に障害者のいじめ事件を自慢していたことが発覚しました。ここにその自慢文を掲載します。 ・沢田さん(仮名)のこと 沢田って奴がいて。こいつはかなりエポック・メーキングな男で、転校してきたんですよ、小学校二年生ぐらいの時に。それ…

北九州監禁殺人事件裁判のいびつさ

「消された一家」(豊田正義著、新潮文庫)で、裁判所での笑い声の次に気になったことは、緒方純子が死刑を求刑されているのに、最初の犠牲者の娘である服部恭子(仮名)が無罪どころか、被告にすらなっていないことです。 本を読んでもらえれば分かりますが…

北九州監禁殺人事件の犯人の話を笑う者たち

「消された一家」(豊田正義著、新潮文庫)は、私が読んだ多くの犯罪本の中で、最も気分が悪くなった本です。 そのせいか、この事件より多くの死者が出ている相模原障害者施設殺傷事件や尼崎連続変死事件を差し置いて、北九州監禁殺人事件こそが日本史上最悪…

尼崎連続変死事件での警察の殺人的ミス

尼崎連続変死事件について書くなら、これは必ず指摘しなければならない点でしょう。事件発覚の10年以上前から、被害者やその親戚、近隣住民が警察に何度も通報していましたが、身内同士の金銭トラブルや暴行などの事案ということで、刑事事件としてまともに…

尼崎連続変死事件よりも恐ろしい事件があるに違いない

尼崎連続変死事件は事件の全容がいまだ解明されていません。日本史上最悪とも呼ばれる事件であるのに、扱っている本も「モンスター」(一橋文哉著、講談社)ともう1冊くらいしかありません。次にこのブログで扱う北九州監禁殺人事件は多くのフィクションのモ…

相模原障害者殺傷事件の植松を論破することは可能だったのか

前回の記事の続きです。 「相模原障害者殺傷事件」(朝日新聞取材班著、朝日新聞出版)を読めば、朝日新聞記者たちが植松に当たり障りのない質問しかしていないことが分かります。植松の機嫌を損ねて、面会拒否されることをなによりも恐れていたのかもしれま…

朝日新聞記者は相模原障害者施設殺傷事件の被害者たちを冒涜している

マスコミについて詳しい人なら知っているでしょうが、記者クラブに所属する日本の大手マスコミ会社では、新人に警察担当をさせます。つまり日本の犯罪についての情報は、まだ若い新人記者の報道によって、日本人全体に伝わります。 新人だから、若いから、そ…

相模原障害者施設殺傷事件の原因は謎のまま終わるのか

19人と数において戦後最悪の殺人事件である2016年の相模原障害者施設殺傷事件には不可解な点があります。犯人の植松聖の両親がどのように植松を育てたかについての情報が全くないことです。「障害者なんていなくなってしまえ」という理由で障害者施設に忍び…

殺人がいけない理由を答えられない日本人

100年後の人には信じられないでしょうが、「なぜ人を殺していけないのか」に明確に答えられない日本人が21世紀初頭に多くいました。「そんな当たり前の質問にも答えられないのなら、どうやって子どもに倫理観を身に着けさせられるのか」と思われるでしょう。…

土浦連続殺傷事件はどうすれば防げたのか

前回までの記事の続きです。「死刑のための殺人」(読売新聞水戸支局取材班著、新潮文庫)を元に書いています。 犯人の金川は高校3年の7月に弓道部を引退、9月頃に進学ではなく就職することを決めます。「唐突に、大学に行かない、と結論だけ言われた。理由…

土浦連続殺傷事件犯人家族は典型的な日本人

事件当時の金川一家です。 外務省勤務の父(59才) パート勤務の母(48才) 無職の真大(24才) 派遣会社員の上の妹(22才) 大学生の下の妹(20才) 無職の弟(17才) 上の妹は声優を目指して養成学校にも通っていました。真大の最初の殺人標的はこの22才の…

なぜ金川真大は土浦連続殺傷事件を起こしたのか

「死刑のための殺人」(読売新聞水戸支局取材班著、新潮文庫)は取材不足なので、タイトルの問に答えを出すのは容易ではありません。金川は事件当時24才なので教育に問題があったことは間違いなく、とりわけ、家庭教育に原因があるとの上記の本の指摘は正し…

三菱銀行人質事件はなぜ起こったのか

前回の記事の続きです。 強盗殺人犯の15才の梅川は岡山少年院に送られます。当時は今と異なり非行少年に対する処分が厳しく、少年院送りが当たり前に決められていました。ベビーブームのせいもあり、日本中の少年院は定員を越えており、岡山少年院も定員115…

三菱銀行人質事件の犯人はどうして現れたのか

1979年に起きた三菱銀行人質事件は、その残虐性において、日本の人質犯罪史上最悪でしょう。猟銃で脅しながら、人質銀行員に同僚の耳をナイフで削ぎ落させ、女子行員を裸にして並ばせ、肉の盾にしています。犯人の梅川は42時間もの長時間、一睡もせず銀行内…