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川名荘志ごときが一流新聞記者になれてしまう国

「最初のころ、新聞記者という肩書を持った僕と、ありのままの僕は、ずっとちぐはぐなままだった。まるで薄ぺらの体に、ぶかぶかの服を押し着せられたかのように。でも、あの蒸し暑い夏の日、僕は新聞記者になってしまった」

読んでいる方が赤面するような自己陶酔した文で「謝るなら、いつでもおいで」(川名荘志著、新潮文庫)という殺人事件の本は始まってしまいます。

この川名という人物は、典型的な倫理観の劣る日本人で、本でも先輩の三森などは必ず「さん」付けですが、新人の倉岡は呼び捨てです。上司は必要以上に敬い、部下は当たり前のように見下すゴミのように捨てるべき日本人の一人です。

佐世保小6女児同級生殺害事件で、被害者の小6女児の父は毎日新聞記者の御手洗で、それは川名の直属の上司でした。この御手洗は他の殺人事件が起きた時は、部下たちに「顔クビ(ガンクビ)とってこい。取れるまで帰ってこなくていい」と被害者遺族の気持ちを全く考慮しない品のない言葉で命令していたくせに、いざ自分が被害者遺族になると、「勝手なことですが、もう(被害者の)名前や写真を出さなくてもニュースや記事として成り立つのでは、と思ってしまいます」とマスコミ発表しています。そう思ったのなら、「これまでの私の同様な行為が被害者および被害者遺族の気持ちをいかに無視していたかを痛感しました。私のせいで気分を害した犯罪被害関係の方たちに深くお詫びいたします」とも伝えるべきでしょう。

なお、上記のマスコミ発表は、御手洗本人が報道陣の前で発言したわけではなく、代理の弁護士を通じて出されています。弁護士が適当な精神科医を見つけて、適当な「診断書」を作成して、御手洗本人は記者会見しなくてよくなったそうです。昨今の不祥事を起こした政治家や官僚などの例にあるように、重要な場面になると、病気を理由に逃げられる特権がこの国のエリートには認められているようです。病気でもパワハラ上司に病院受診すら認められなかった私としては、うらやましい限りです。

川名の上司だけあり、御手洗も次のような恥ずかしい手記を堂々と報道陣に公開しています。

「さっちゃん。今どこにいるんだ。母さんには、もう会えたかい。(略)もう家の事はしなくていいから。遊んでいいよ、遊んで。お菓子もアイスも、いっぱい食べていいから」

「御手洗は壊れちゃっている」と考え、弁護士が御手洗の記者会見を止めたのも無理ないのかもしれません。本では「普段は情に流されることを恥じる記者たちが、(上記の御手洗の手記発表を聞いて)思わず落涙していた」と書いていますが、その記者たちは正気でしょうか。上司を無意識に崇める著者の川名の欲目であることを願います。

著者の川名は「正論」という言葉を本で何度も使っています。たとえば、この事件の動機の一つに、交換日記で犯人の小6生が「NEXT」という言葉を始めて使ったところ、そのカッコよさに惹かれて、多くの交換日記仲間が使用した事件があります。しかし、それが犯人の小6生の逆鱗に触れたようで、「NEXTの使用禁止。パクらないで」と大きな太い字で交換日記に書きました。被害者の小6生は「NEXTというのは、みんなが使える表現ではないの? 絵文字ではないし、英語だからパクりではないような気がする。みんながやっていれば、当たり前になるのでは?」と日記で反論したそうです。この反論を川名は「正論だった」と断定しています。しかし、「正論」とまでは言えないはずです。大人の世界でも、「こんなものにまで著作権があるの?」と疑問に感じることはよくあります。せめて「被害者側の理屈に分がある」くらいの表現にとどめておくべきでしょう。「『西洋人はyesとnoをはっきりさせる』はウソである」でも書いたように、断定できないことを断定するのは知性の低い日本人のよく犯す間違いです。世の中に「正論」などほとんどありません。「正しい」という表現を多用する時点で、川名の知性の低さを示しているように私は感じます。

川名が上司には全く反抗しない例は本の随所に出てきます。事件後、「私も家族を殺されたんです」という遺族から川名の新聞社に電話があったそうです。「私も遺族になって、びっくりしたんですけどね、取材に来る新聞記者ってのはねえ、自分の孫ぐらいの年齢の人、多いんですよ。それで『今のお気持ちは?』なんて、ひどいこと平気で聞いたりする。若い人たちはこっちの気持ちなんか、わかりゃしないですから。だからね……。失礼ですが、あなた、おいくつ?」と川名同様に長幼の序を重視する部外者には、「若いも年寄りも関係あるか! アンタに僕の気持ちが分かるのか!」と自分のことを棚に上げて怒鳴っています。一方で、「自殺者が3万人いる時代にさ、人ひとりが死んだことをなぜ大騒ぎしなきゃいけないの? 自衛隊イラク派遣をもっと考えるべきだよ」と愚痴る初老の記者には、なんの反論もしなかったそうです。

川名が犯人の父の記事を書いたことについて、記者仲間の飲み会で、川名と違うグループにいる先輩がこんなことを言ったそうです。

「ママゴトにしちゃあ、上出来だよなあ。はじめから分かりきったことなんだよ。ごちゃごちゃやってるけどさ、こんな事件で『なぜ』がねーなんてのは。んでもよ、オヤジをうまく口説き落として、『極上ネタ一丁あがり』。大した美談だよ」

これを聞いていたのに、川名は「初めから終わりまで上機嫌の彼に、悪意がないことは明らかだった」と感じて、先輩に声をかけることすらしませんでした。私だったら「人が死んでいる事件について、なんだその言い方は! 『ママゴト』だと! 『ごちゃごちゃ』だと! 『オヤジ』だと! おまえは死者だけでなく、この事件に関係する全員を侮辱している! 今すぐ謝罪しろ!」と怒鳴り倒しています。私には、川名の「正論」の意味が分からないだけでなく、川名の「悪意」の意味も分かりません。これが悪意でなかったら、なにが悪意なのでしょうか。それとも、この記者は、その発言が事件関係者の侮辱にあたることも分からないほどバカなのでしょうか。もしそうなら、その記者は即刻辞職しなければなりません。

ところで、毎日新聞は川名や上記の飲み会発言をするクズを雇ったくせに、彼らの半分以下の給料で喜んで休日なしで働く20代の頃の私をなぜ雇ってくれなかったのでしょうか。もちろん、私のようなバカは恐れ多くて毎日新聞社様の入社試験を受けることすら思いもしませんでしたが、受けたら雇ってくれたのでしょうか。

次の記事に続きます。