未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

フェミニストたちはなにも分かっていない

ウーマンリブの時代まで、女性差別撤廃運動の男性側の反動は大したことなかったはずです。しかし、21世紀以降のフェミニズムの時代になれば、「バックラッシュ」「ミソジニー」という専門用語が誕生してしまうほど、反動は大きくなりました。「『キム・ジヨン』のバックラッシュの妥当性」に示したように、多くのフェミニストたちはこの反動を知ってはいても、「フェミニズムは正義」という固定観念から抜け出せていません。あるいは、そんな固定観念を自覚せずに正義面して男性を加害者扱いするからこそ、恵まれない男性たちは怒りがおさまらないのでしょう。

現代社会で生活していたら、女性差別を改善することが「正義」だという考えは小さい頃から身に着けています。しかし、実際に男性として生まれてみれば、女性の方が恵まれている場面に嫌でも出くわします。

男子問題の時代」に書いたように、男子は女子に比べて、特殊学級で学ぶ割合が高く、学習障害と診断される割合が高く、留年率が高く、自殺率が高く、虐待の被害者となる割合が高く、刑務所に収容される率が高く、学校生活を楽しむ度合いが低く、学校生活で失敗しやすい態度を持ちやすいです。また、一部のエリート学校を除き、日本だと女子の平均点が男子の平均点より高かったりします。韓国では、女子の大学進学率が男子の大学進学率より既に高くなっており、公務員の就職では男性側にアファーマティブアクション(男女どちらかの性の就職率が3割未満にならないような調節)が行われるほど、女性が多くなっています。

大人になっても、勇気を出して男性から声をかけないといけませんが、9割以上の男性は、失敗回数が成功回数を遥かに上回ります。とりわけ、長年心から好きな女性に断られた時は、自殺を考えてしまうほどショックなことは、女性だって分かるでしょう。男性側がおごるべきとの観念を強く持っている女性もいますが、それが社会道徳に反すると声高に批判する人はあまりいません。お互い学生同士なのに、最初のデートで割り勘にした途端、次のデートの約束がとれなくなって、「男におごってもらう目的で会っていたのか」と落胆した経験が、私は何回あるでしょうか。

レディファーストが日本以上に普及している韓国なら、もっとひどいです。韓国では、男女が一緒に歩く時、男性が車の走る側にいることが徹底されています。100日記念日と言って、つきあって100日目に100本のバラを男性が女性に必ずプレゼントしなければなりません。日本以上に保守的な側面もあるせいか、女性にとって都合のいい「女性差別」が残っており、男性がおごるべきとの観念は日本以上に強いです。私がカナダに留学していた2010年頃、ある20代の韓国人男性が「女性に貢いだ金は1万ドル以上だ」と言って、当時、どう高く見積もっても、その半額以下しか女性に貢いでいなかった私は驚いたことがあります。

また女性差別、とりわけ男女の賃金格差がなくならない最大の理由は結婚にあります。女性は就職できなくても結婚という選択肢がありますが、男性は就職できなければ結婚も当然できません。「女が貧乏な男と結婚していれば少子化など解決する」に書いたように、女性がこれほど働くようになったのに、大多数の女性は自分より年収の低い男性との結婚を忌避します。この男性差別をなくさないのに、男女の賃金格差をなくしたら、あまりに男性に不利でしょう。「日本で女性があまり社会進出していない最大の理由」に書いたように、日本だと結婚後に、女性が家計を握ってしまうことも、男女の賃金格差がなくならない大きな原因です。どんなフェミニストであろうと、結婚の問題に全く触れていないのなら、偽善でしかないことは、自分でも分かるはずです。

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)によると、他の国と同様、韓国でも政治は進歩と保守で国民が二分されています。一般に韓国では、若者ほど進歩的で、高齢者ほど保守的です。一方、フェミニズムに関しては、20代男性の50.5%が否定的な認識を持っており、30代男性だと38.7%、40代男性だと18.4%、50代男性だと9.5%と、若い世代ほどフェミニズムに反感を持っています。

このデータから若者の韓国人ほど進歩的なはずなのに、フェミニズムについては若者男性ほど保守的と多くのフェミニストは考えているようです。しかし、実際はフェミニストについても、若者男性ほど「女性優遇は正義」という保守的な観念から脱却した進歩的な思考を身につけているのではないでしょうか。おそらく「女性は家庭」という固定観念については、若者男性ほど低いはずです。それにもかかわらず、なぜフェミニズムに反対するのか、その本質的な理由に多くのフェミニスト学者は気づいているのでしょうか。

高齢者天国日本が見えない新聞記事

今朝の朝日新聞の記事です。

 

「年金が減ったうえに、医療費の負担が増え、これからは病院に行きたくても我慢するしかありません」

横浜市に住む斎藤キヨ子さん(78)は今月14日に届いた新しい保険証を手にため息をつく。「一部負担金の割合」の欄には「2割」の文字。10月から82歳の夫とともに医療費の窓口負担が1割から2割に倍増する。

あらかじめ自分で所得などを計算し、「ぎりぎり対象になるかも」と覚悟していたが、厳しい負担増が現実のものになった。今回の負担増には軽減措置があるというが、それもずっと続くわけではない。

斎藤さんはひざ関節症の治療や十数年前に患った大腸がんの経過観察などのために整形外科、外科、婦人科、歯科に通院している。それぞれ2、3カ月に1回の頻度だが、多いときは月5回になることもある。昨年肩の手術をした夫も複数の医療機関にかかる。夫婦が窓口で支払っている医療費は月々1万2千円ほど。倍増となれば約2万4千円になる。通院する交通費も、2人で年4万3千円程度が必要だ。

一方、頼みの年金は先細る。今年度は昨年度より年約3600円減り、夫も約9800円減った。加えて物価高で食費や電気代も上昇。夫婦で年間約16万円の介護保険料も重くのしかかる。

夫婦2人の年金収入は約330万円。斎藤さんは25歳で結婚するまで、夫も10代から60代半ばまで会社員として勤めた。夫はさらに材木店で6、7年働き、老後に備えてきたはずだった。だが、いまは将来の生活への不安ばかりが募る。

今は同居する娘に食費を支援してもらいながら生活を送る。「国は『自助・共助・公助』と言いますが、年金は減り、物価も高騰し、生活は決して楽ではありません。暮らしを見て施策をつくってほしい」

 

こんな記事を数百万部も刷る新聞に載せてしまうほど、この時代の一流新聞記者は現場を分かっていない証拠として、残しておきます。

私は医療者なので、医学的な見地からまず批判します。

「ひざ関節症の治療や十数年前に患った大腸がんの経過観察などのために整形外科、外科、婦人科、歯科に通院している」

ひざ関節症の治療に、数ヶ月に1回診察する必要はなく、実際、毎回レントゲン検査などしていないはずで、痛み止めの処方をもらうことが目的でしょう。大腸がんの経過観察など、もっと不要です。78才で再発なら、手術適応になる確率は低いですし、ましてそのために数ヶ月に一度の検査など不要です。どちらも症状の変化が出たら、受診するくらいで十分です。そもそも整形外科と外科と婦人科の定期通院は一つにまとめるべきです。家庭医制度のある西洋先進国では、日本のように整形外科や外科や婦人科のクリニックがどこの町にもあることなどなく、全て家庭医が診ています。大した症状もなく、特別な機器での検査もせずに、今までの薬を微調整するくらいですから、家庭医で十分です。日本にも家庭医を名乗る開業医はいるので、信頼できる家庭医を見つけて、無駄な薬を整理すれば、月々の医療費など3割負担でも夫婦で月6千円いかないでしょう。

「通院する交通費も、2人で年4万3千円程度が必要だ」も、わざわざ書くほどのことですか。月々になおすと1人1800円ですよ。1年の収入150万~180万の学生が、彼女や彼氏に逢うために使う毎月の交通費なんて、この数倍はかかりますよ。

しかも、「同居する娘」がいて、その娘に「食費を支援してもらいながら生活を送る」くせに、「夫婦で年間約16万円の介護保険料」も利用している上、「生活は決して楽ではありません。暮らしを見て施策をつくってほしい」と被害者面しているのも、本当に腹立たしいです。

上記の金額から推測すれば、介護保険料自己負担は妻が1割、夫が2割でしょう。つまり、介護保険料を80万円~160万円も費やしているのに、自己負担は16万円で済んでいるのです。世界史上、この上なく恵まれた高齢者たちです。

日本の大学生の学費は私立なら確実に100万円は越えますが、自己負担率を1割や3割にしてくれる制度など、ほぼありません。私同様、親元を離れて学生生活を送っていたら、生活費は学費以上にかかります。学業だけでなく、アルバイトもしているのに、大学生の収入は、全く働かず、人の世話ばかり受けている、この75才以上の高齢夫婦の一人分と同じくらいです。

だいたい、世界一の高齢者預金天国の日本として有名なのに、この夫婦の預金額が書かれていないのも不公平です。夫が定年まで働いて、さらに6,7年も働いていたなら、生涯賃金は相当な額になっています。逆にいえば、それくらい稼いでいるのに、既に預金がなくなっていたなら、家などに浪費したか、よく中身も確認しなかった保険で1千万以上損したかなどであり、どちらにしろ自業自得です。

今の日本で、高齢者の医療費2割負担が大変だと本気で考える人は、私には理解不可能です。高齢者の医療費は3割負担でも足りず、海外では当たり前の高齢者の透析治療のように、場合によっては全額負担にするべきだ(しなければならない)と私は考えています。常識で考えても、現場を知っても、国際比較しても、若者と比べて、高齢者が遥かに恵まれていることに今の日本で気づかないとしたら、狂人レベルまで到達しているでしょう。間違っても、一流新聞記者にすべきではありません。

高齢者医療費無料化は日本の医療行政史上で最悪の政策だったとは、衆目の一致する所です。この最悪の政策は、戦後の左翼勢力によって実現したと聞いたことがあります。いずれ記事にしたいですが、今も日本は昭和の亡霊に憑りつかれていますが、高齢者医療の問題もそうかもしれません。

おまえなんかに山上を語る資格はない

「82年生まれ、キム・ジヨン」の翻訳者の本「韓国文学の中心にあるもの」(斎藤真理子著、イースト・プレス)によると、「キム・ジヨン」は韓国人男性のほとんどから強い反感を買いましたが、日本人男性からは反感がほぼ聞かれず、むしろ「これは男性こそ読むべきだ」という感想がいくつも寄せられたそうです。

(自分が日本で生きづらいわけだ)

そう感じました。日本のリベラルな男性は、それくらい恵まれているのでしょうか。過半数の恵まれない若い男性が保守化するわけです。

このブログから明らかなように、私はリベラル思考です。しかし、私と同じくリベラル思考の日本人男性は、私と異なり、フェミニズムに共感を示すようです。恵まれない若い世代が、恵まれないからこそリベラルに共感を示した時代は日本にもありましたが、とうの昔に過ぎ去ったようです。

2022年8月30日の朝日新聞に伊藤昌亮という社会学者の記事があります。伊藤は安倍元首相を暗殺した山上徹也のものとされるネットでの書き込みを調べたそうです。山上は自分をインセルだと何度も書いていました。インセルとはinvoluntary celibate(非自発的な禁欲主義者)の略で、伊藤は「いわゆる『非モテ』の男性です。インセルは社会構造の被害者なのに弱者認定されず、むしろフェミニズムから加害者扱いされる、と反発している。旧来の保守のような家父長制的な反フェミニズムではなく、弱者男性の反フェミニズムです」と説明しています。

そこまで分かっていながら、伊藤は「リベラルが在日コリアンやLGBTQを弱者として支援することは間違いなく正しいのですが、漏れてしまう弱者が存在する」と書いたので、憤慨しました。

「リベラルがLGBTQを弱者として支援することは間違いなく正しい」だって! なぜその固定観念から抜けられないんだ! 「漏れてしまう弱者」だと! 最初から救おうともしていないくせに! それに漏れる程度の数じゃないんだ! 彼氏がほしいのにできない女性より、彼女がほしいのにできない男性が遥かに多くいることくらい、社会学者なら知っているべきだろう! おまえみたいな社会観の浅い奴がLGBTQを支援することが正義だなんて思っているから、弱者男性がリベラルを忌避するんだよ! 賭けてもいいが、30年以上前、LGBTQがただの変態としか思われていなかった時代の日本なら、おまえみたいな偽善者がLGBTQを支援することなんて確実になかったよ!

もしかしたら、山上は上の伊藤の意見に賛同するかもしれません。ただし、大多数のインセルは「おまえなんぞにインセルを語る資格はない!」と伊藤の意見に反発すると確信します。

 

※2022年10月13日追記:上では伊藤を批判しましたが、伊藤の「山上徹也容疑者の全ツイートの内容分析から見えた、その孤独な政治的世界」という記事を見つけました。山上徹也について、これほどまで本質を捉えた見解は今のところ、他に存在しないと思います。「リベラルがLGBTQを弱者として支援することは間違いなく正しい」という言葉は、朝日新聞記者たちへのリップサービスだったのかもしれません。

が、それを考慮しても、山上を語る記事で書くべきではなかったと思います。

「キム・ジヨン」のバックラッシュの妥当性

ウーマンリブ」という言葉は死語になったようで、代わりに「フェミニズム」という言葉がここ10年ほど、毎日のように見聞きします。どちらも意味は似たようなものでしょう。その時代を生きていたわけではありませんが、「ウーマンリブ」には9割程度の共感を持った私ですが、「フェミニズム」には8割程度の反感があります。どう理性的に考えても、行き過ぎだと思える主張がしばしばあるからです。こんな恵まれた女の悩みを解決する余裕があれば、遥かに恵まれない男の悩みを解決すべきだ、と強く思うことが少なくないからです。

ここ数年に出版された韓国本だと高確率で「82年生まれ、キム・ジヨン」についての記述があり、そこでは必ずフェミニズムとその反動であるバックラッシュについて解説しています。このブログで何度も紹介している「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)も例に漏れません。「キム・ジヨン」で韓国の30代女性が最も胸に突き刺さったセリフとして、次の場面を指摘したそうです。

ジヨンが育児のために職場を辞める時、夫はジヨンに「俺も手伝うからさ」と声をかけた。その一言にジヨンは逆上し、こう叫びます。

「その手伝うから、という言い方、やめてくれない。家事も手伝う、子育ても手伝う、私が働くのも手伝うからって、いったい何なのよ。家事や育児にしても、あなただって当事者でしょう。子どもだって、あなたの子でしょう。まるで他人事のように、なんで人に施してやるみたいな言い方するのよ」

日本でも女性誌で特集が組まれるほど「夫から言われてイラっとするセリフ」の代表格に「手伝う」はあげられる、と春木は書いています。

普通に考えれば、この事実から「手伝う」という言葉でキレるくらい、女性は恵まれている、女性は優しく扱われていることが証明されているでしょう。だったら、「俺は手伝わないから、自分でなんとかしろよ」と言えばいいのでしょうか。それは論外のはずです。言い方や態度に問題があるならともかく、「手伝う」は一般的な模範解答です。「人に施してやるみたいな言い方」されることが嫌なら、ジヨンより低学歴で低収入なプライドの低い男と結婚すればよかったのです。それは絶対嫌なくせに、なにを逆ギレしているのでしょうか。逆ギレしたいのは、ジヨンのような女に振られた、あるいは振られる以前に相手にすらされなかった韓国人男性たちでしょう。

さすがに春木もそれは考えたのか、「これのどこがいけないのか、と憤慨する人がいるかもしれない」とは続けています。

キム・ジヨン」は若い女性の共感は得ても、中高年の女性の共感はあまり得られていないことも、いくつもの韓国本で指摘されています。ジヨンはソウル市内の24坪の高層マンションに住み、中堅会社に勤める正規職の夫がいて、もっと生活費が必要だとは考えているが、経済的な困難に直面しているわけではありません。累積した女性差別や不平等への怒りが根底にあったものの、ジヨンが鬱になり異常行動を見せるようになった引き金は、出産退職です。育児のために退職しても生活に困らない苦しみは、現代の中産階級の悩みです。昔の世代、あるいは現在の低所得層が直面している厳しい現実とは相入れません。

50~60代の韓国人女性は、同年代のジヨンの母が置かれてきた境遇はよく分かるし、ジヨンが成長過程で直面した女性差別や悔しい気持ちも理解できます。しかし、結婚後のジヨンの苦悩には理解できません。その理由を集約すると次のようになります。

「安定した職場に勤め、権威的でもなく妻に寄り添い理解しようとする優しい夫がいて、嫁姑問題も深刻でない。婚家は地方で離れており、その婚家ですら盆暮れに行くだけ。仕送りをしてくれとか、兄弟の生活費を出せとか、婚家との間でありがちな経済的問題にも悩まされてもいない。子どもはたった一人。何がそんなに問題なのか」

普通に考えて、その答えは「問題ではありません。この程度で不満を感じるなら、若い韓国人女性がいかに恵まれているか、あるいは、いかに自己中心かの証拠でしかありません」でしょう。

「韓国社会の現在」のフェミニズムの章で、私が最も頭にきた言葉が次になります。

「『大学の成績でも入社試験でも優秀な成績をおさめる女性は、いまや自分たちにとっては脅威で強力なライバルである』と言う男性たちに、女性が就職活動でも昇進や賃金面でも差別を受けており、仕事と家庭や育児の両立に疲弊しているという現実は見えていない」

そんなことありえません! 世界中、どの文明国にいようと、女性差別を知らない人はいません! 女性差別という言葉は、韓国人だろうが、日本人だろうが、子どもの頃から知っています! 就職活動や昇進で女性差別があることは、あれだけ報道されているので、知らない男性はいません! それどころか、社会全体でその改善に取り組んでいます! 韓国にも日本にも、そのための役所があり、大臣までいます。フェミニズムに反対するほど社会意識の高い男性たちがそんな報道を知らないわけがないでしょう!

この見解は完全に間違っているどころか、正反対の見解がむしろ正解です! 自分が正義だと信じているフェミニズムどもが見えていない、見ようともしないのは男性差別の方です! ジヨンのような恵まれた環境で不平を述べる女性は、恵まれない男性がどれほど不幸であるか、考えたことはないのでしょうか。「そうは言っても、社会全体で女性差別は対処されているけど、男性差別は言葉すら存在しない。女性が弱者なのは当たり前だから、女性は優遇されなければならない」という固定観念から一度も、一歩も抜け出せていないとしか、考えられません。

もちろん、恵まれない女性もいることは誰でも知っています。しかし、ジヨンや大学教員の春木(私は大学教員になりたかったのに、なれなかった学者崩れの一人です)のような十分に恵まれた女性が自分は弱者であると正義の味方面して説教するのは、恵まれない男性(数としては恵まれない女性よりも多い)にとって、我慢ならないでしょう。

こんな倫理観の低いリベラルな偽善者がいるから、バックラッシュが起こります。こんな倫理観の低いリベラルな偽善者がいるから、ネトウヨが台頭します。こんな倫理観の低いリベラルな偽善者がいるから、本来必要なリベラルな改革も進みません。

似たような感想を朝日新聞に感じたので、次の記事に書きます。

黒船と本気で戦っていたら日本は攘夷を達成できたが、それは最悪の選択であった

幕末の動乱は不可避だったのか」の記事に誤解を生む表現があったので、訂正させてもらいます。

この記事では「当時のアメリカ側の文献を読めば読むほど、ペリーは日本と本気で戦争する意思はほとんどなく、アメリカ本国政府に至っては日本と戦争する意思など皆無と言っていいことがよく分かります」と書いた後に、「武力衝突をしたら双方に死人が出て、まずアメリカと戦争になったでしょう」と矛盾するようなことを書いています。

ペリーが日本と戦争する気がなかったのは事実で、アメリカ政府はもっと戦争意欲がなかったのも事実です。日本がペリーの蒸気船団と本当に戦って、アメリカ人を多数戦死させていたら、アメリカは確実に報復に来たでしょう。生麦事件の報復に薩英戦争が起きたり、長州藩の外国船砲撃事件の報復に下関戦争が起きたりしたように、ペリーたちが殺害されたら、アメリカが新しい強力な軍艦で報復に来た可能性は高いです。

しかし、アメリカが日本と全面戦争する可能性はほぼありませんでした。上の記事では「(アメリカと日本が戦争になった)場合、日本は確実に負け、完全な植民地になった可能性もあります」とまで書いていますが、これは間違いと言っていいでしょう。黒船事件の頃、アメリカと日本が戦って、アメリカが戦術的に勝つ可能性(アメリカ人より日本人の方に死傷者が多く出た可能性)が高いのは確かですが、アメリカが戦略的に買って、日本を植民地にしたり、アメリカが江戸幕府を征服できた可能性はゼロに近いです。アメリカは日本とそこまで大きな戦争をする気は全くありませんでした。

その根拠は、同時期の李氏朝鮮の2つの対外戦争です。フランスが9人のキリスト教宣教師の処刑の報復として、1866年に李氏朝鮮と戦争(丙寅洋擾)しましたが、敗走しています。また、アメリカが平壌の1866年のジェネラル・シャーマン号事件で乗組員全員が殺害されたことの報復として、1871年に艦隊を派遣(辛未洋擾)しました。アメリカは砲撃を加え、わずかな領土を一時的に制圧しましたが、本来の目的である李氏朝鮮との通商条約を結ぶことはできず、撤退しました。

にもかかわらず、1875年に日本の江華島事件で、李氏朝鮮はあっさり日朝修好条規を結ばされています。強国であるフランスやアメリカが失敗して、日本が成功している理由は、韓国は欧米列強を外敵と考えていても、日本を外敵と考えていなかったことが大きいです。また、西洋列強は日本ほど朝鮮との交易意欲はありませんでした。

アメリカも、イギリスも、ロシアも、世界中の全ての国は、日本と戦争してまで日本と交易したいとは思っていません。当時の帝国主義国家が戦争してまで交易したい、不平等条約を結びたいと思っていた東アジアの国は、中国だけです。だから、アヘン戦争やアロー戦争を起こしてでも、イギリスは中国との貿易(黒字化)にこだわりました。こう断定できる根拠は、「幕末の稚拙な外交政策から日本は教訓を得ているのか」に書いています。

だから、幕末の日本が最も恐れていたこと、日本がアヘン戦争後の中国のようになる可能性はほぼゼロでした。アヘン戦争のように、帝国主義国家が大軍を率いて戦争していれば、日本は確実に負けましたが、そこまでする価値が当時の日本にはありませんでした。「幕末の稚拙な外交政策から日本は教訓を得ているのか」に示したように、アメリカはその事実を貿易統計で把握していましたが、相手側の日本はその事実を客観的に認識しておらず、不必要な心配ばかりして、ペリーの脅迫に屈してしまいました。

アメリカ本国が日本と戦争しないのはもちろんですが、ペリー自身も本気で戦う気はなかったので、江戸幕府が「開国は絶対にしない。それに納得できないで戦争したいなら、戦争すればいい」と交渉を打ち切ったら、ペリーが死人を出してまで戦った可能性はほぼありませんでした。突発的な事故で日本側がペリー艦隊に攻撃したせいで、アメリカ本国が新艦隊で報復に来た可能性はありますが、そうだとしても、朝鮮半島での辛未洋擾同様、アメリカが一時的に日本の港を占領しても、日本側が徹底抗戦すれば、アメリカは日本から撤退せざるを得なかったに違いありません。日本はアメリカと国交も結ぶ必要もなく、交易をする必要もありませんでした。

とはいえ、それが最悪の選択であったことは、丙寅洋擾や辛未洋擾で外国勢力の撃退に成功した李氏朝鮮のその後を見れば、明らかでしょう。

黒船事件で幕府が200年以上続いた鎖国政策を一変させた改革は(不平等条項を結んだことを除いて)、日本にとって有益でした。「尊王攘夷」と言い続けた倒幕勢力が、政権奪取後、手のひらを返して、幕府以上の開国政策を実施したのも、妥当あるいは当然の判断でした。

もし日本が黒船を撃退して、その後も鎖国政策を維持し続けていたら、日本の発展が大きく遅れて、好ましくない歴史を持ったに違いありません。

日本が韓国に再逆転する場合の理由

日本経済の成長も衰退も全ては人口動態が根本原因である」に書いたように、日本が韓国に再逆転するとしたら、その最大の理由は人口動態にあると私は考えます。つまり、韓国が日本以上の少子高齢化により韓国経済の足を引っ張るからだと考えています。

とはいえ、私は「国家の富は国民の道徳と教養によって決まる」との理論を信じており、その理論でも日本が韓国を再逆転する理由を説明できるとも考えています。

その前に、1990年頃に一人当たりのGDPで日本は欧米先進国を抜いていたのに、その後に日本が欧米先進国に負けた理由を、上記の理論を用いて説明します。欧米人と比べて、日本人がよく働くことは、バブル期から現在まで変わっていません。しかし、バブル期に既に存在していた日本人の欠点を直せなかったため、日本は自滅して、欧米先進国に抜き返されたと私は考えています。

具体的に書きます。日本人は働く時間が長かったものの、バブル期から生産性が低く、ITなどで生産性を高めることもできませんでした。「新卒一括採用の功罪」に書いたように、新卒一括採用を続けているため、人材の流動性は低いままで、人材を効率よく活かしきれていません。高齢者、女性、外国人、障害者たちを労働力として活用できず、むしろ社会保障の重荷にしています。人口動態で高齢者ほど多くなっているのに、年功序列賃金を維持しようとするため、経済全体に無理が生じています。長幼の序が社会全体に浸透しすぎているため、時代遅れになった成功パターンに執着して、必要な改革を実行しません。教育面でも、外国語教育は貧弱で、大学生になると極端に勉強しなくなります。

韓国についても、現段階で、既に欠点があります。財閥企業とそれ以外の企業の賃金の差は絶望的なほど大きくなっており、貧富の差は日本の比ではありません。それに関連して、失業率は日本より高く、とりわけニート率は日本の何倍も高くなっています。塾や留学などの民間教育産業が盛んであるため、親の収入の差による教育の差も、日本以上にひどいです。大学受験、就職活動の競争が世界最高と言えるほど激しく、結果、自殺率も世界最悪になっています。

現在、韓国人の学習意欲、勤勉さ、他国の良さを積極的に取り入れるなどの長所が目立って、これらの欠点は覆い隠されている部分があります。しかし、韓国が日本同様、経済が停滞する時代に入ってくると、上記の欠点が目立ってくるのではないかと予想します。

私が深刻だと考えるのは、上記の韓国の欠点は直りそうもないことです。日本同様、韓国も少子化対策に「130兆ウォンも費やしたのに、全く効果がなく、解決する兆しもありません」(文在寅大統領の演説)。

財閥で働く韓国人は1%なのに、財閥は韓国のGDPの75%を生み出す異常な格差も、解消の目途がありません。多くの韓国人は財閥腐敗に憤りながらも、財閥で働くことを望んでいます。優秀な韓国人ほど財閥企業に就職しており、財閥解体の副作用が大きくなっています。

日本同様、優秀な教育を施すために公教育は限界があるので、民間教育産業が幅を利かすのは無理もなく、結果、経済格差が教育格差につながります。この不公平をなくそうと、政府の命令で韓国の主要大学は試験選抜から推薦選抜に変更しました。しかし、お金持ちほど課外活動に没頭できるので、余計に経済格差が教育格差を生んで、失敗しています。

これらの問題を解決できる政治家は、韓国はもちろん、世界中探してもいないと思います。それこそ北朝鮮が崩壊でもしない限り、あるいは崩壊しても、難しいでしょう。

一方、日本は「新卒一括採用制度を禁止する」「年功序列賃金制度を禁止する」「専業主婦優遇社会保障制度を撤廃する」「定年を遅くする」「採用の年齢上限を禁止して、高齢者でも働けるようにさせる」「企業への障害者雇用義務を厳しくすることによって、障害者の社会保障費を軽減すると同時に、障害者を労働者にする」などの制度改革で、上記の日本の欠点は直せます。韓国での財閥解体と比べると、日本で必要な制度改革は副作用も少なく、実現可能性は高いはずです。やるべき政策が明確な分、日本は幸運だとも思うので、是非とも上記の改革を実現させてほしいです。

なお、日韓ともに衰退の根本原因である人口減少については、「未婚税と少子税と子ども補助金」などの「少子化」カテゴリーで対応策を述べています。

現在の日本が最も参考にするべき国は韓国である

これまでの記事で明らかでしょう。断定します。間違いありません。アメリカやヨーロッパの報道をしている暇があったら、一文、一秒でも多く韓国について報道してください。

「反響が大きいから」「視聴率が高くなるから」という、くだらない理由で、韓国での反日政策や反日事件ばかり報道しないでください。少しでも韓国や韓国人を知っている人なら分かるでしょうが、反日など韓国全体のごくごく一面にしか過ぎません。日本が韓国について知るべき、かつ学ぶべき事柄は、その他に、その1万倍はあります。

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)を読んで、そう確信しました。日本中の全ての政治家、あるいはジャーナリストに読む義務を課すべきではないか、と思えるほど、日本が教訓にすべき内容が詰まっています。

「韓国人は日本のことをよく知っているのに、日本人は韓国のことをなにも知らない」とは昔からよく言われます。「韓国は日本から見習うことがあるけど、日本は韓国から見習うことはないから、仕方ないだろう」と多くの日本人は考えていたことでしょう。正直に白状すれば、そこまでは考えないものの、同じ方向でより小さい考えは私も持っていました。

しかし、「韓国の大学英語講義の失敗」や「韓国の英語新テスト導入の挫折」に示したように、韓国が過去に犯した失敗と同じ失敗を日本も犯しています。韓国は日本をよく勉強して、「がん検診にペナルティをなぜ与えないのか」に書いたように、日本を模倣しながらも、日本と同じ失敗はしないように政策を実行しています。韓国人ができて、日本人ができないわけはないでしょう。

世界中で日本人と最も似ているのは韓国人です。外見だけでなく、考え方、感じ方、文化、習慣、制度など、ありとあらゆるものが似ています。似ていないものを探す方が難しいです。まして、韓国の経済力が日本と並んだ今、韓国の政策から学べることは無数にあります。イギリスやフランスなどのヨーロッパの国について学んでいる暇があれば、少しでも多く韓国から学ぶべきです。

がん検診にペナルティをなぜ与えないのか

がん検診に上限年齢は設けるべきである」にも書いた意見ですが、もう一度書きます。

日本のがん検診は低いままです。

当然です。他国のようにペナルティがないのですから。

韓国は、ちょっとした風邪でもクリニックにかかれる世界で二つしかない国の一つです。つまり、それくらい日本の医療制度をマネしたのですが、がん検診にペナルティをつけないことまではマネしませんでした。韓国でも、がん検診を受けない人ががんにかかった場合、当然、ペナルティとして医療費は高額になります。私が知る限り、どこの国の保険制度でも、公的か民間かにかかわらず、そうなっています。

ここで私が不思議に感じるのは、次の点です。

「がん検診が低いことを嘆く日本の医療関係者は多いのに、がん検診を受けない人にペナルティを与えるべきだと主張する声がほとんどないこと」

誰もがすぐ浮かぶ簡単な案で、世界中で実施されているのに、なぜでしょうか。がん検診を受けさせないことで得する人がいるからでしょうか。10年以上の謎なので、この答えを知っている人がいれば、下のコメント欄に書いてください。

なお、念のため書いておくと、一時、韓国で甲状腺がん検診を義務化して、失敗したことは私も知っています。本人が気づかない程度の甲状腺がんは、ほとんどが死に繋がらないので、全国民にがん検診を行うと、治療しなくていい甲状腺がんばかり発見されて、過剰診断になります。韓国もそれに気づいて、甲状腺がん検診は既に止めています。この事実は、福島原発事故後に甲状腺がんを過度に恐れる日本人なら、特に知っておくべきだとも考えます。この報道があまりなされていないことも謎です。

韓国の大学英語講義の失敗

あてにならない世界大学ランキング」や「グローバル30で唖然とした英語教員の質」に書いたように、現在、日本は大学での英語教育を推進させています。「英語公用都市を実現させた韓国」や「韓国の英語教育熱」に書いたように、日本より遥かに英語教育熱が高い韓国では、日本よりも早く2000年から、日本よりも熱心に大学の英語化を行いましたが、上手くいきませんでした。このことを知っている日本人はどれほどいるでしょうか。

2019年時点で、全体の講義数のうち、英語で行われる講義の割合は、最難関のソウル大学でわずか10%です。ソウル所在の13校の4年生大学の平均では、英語の講義比率が約20%と低調で、しかも10年前に比べて減少しています。

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)で紹介されている延世大学工科学部の研究に、英語の講義が減少した理由が示されています。

韓国語と比較して英語での授業では、学生側で2.6倍の学習時間を要求し、教師側で2倍の労力と時間を要求します。そんな労力をかけているにもかかわらず、学生の満足度は低く、教師側も十分な講義ができたと考える程度は低くなります。英語で授業を進めることが「講義内容の理解を妨げている」という意見は8割を越えます。

韓国では大学教授の8~9割が海外で学位を取得して、英語で博士論文を執筆した教員が大部分を占めます。平均的な日本の大学教授よりも英語に堪能な韓国の大学教授でさえ、英語での講義は、同じ内容を韓国語で話した場合の7割程度しか伝えられず、深みのある講義ができないようです。

概念的な話や高度で専門的な内容になるほど、英語でかみ砕いて説明することが難しく、韓国語で聞いても分からない内容をネイティブでもない教員から英語で聞くので、理解度は低下します。結果、名目上は英語授業のはずが、先に英語で説明してから、同じ内容を韓国語で繰り返すことが少なくないようです。

日本同様、英語による講義を増やす目的の大きな一つは、留学生の多様化と英語圏の学生を誘致することにありました。現実には、韓国の留学生の9割はアジア人であり、その7割は中国とベトナムです。英語に秀でるアジア圏の学生は、当たり前ですが、英語圏の国に留学します。英語が苦手であるため留学先に韓国を選択した学生も少なくなく、特に最多の中国人はその傾向が強いので、むしろ英語での講義を避ける傾向にあります。このような状況なので、英語の講義が増えるほど、韓国語も英語も中途半端にしかできない留学生が増え、学業不振に陥っています。

繰り返しますが、韓国は2000年頃から大学の英語化を日本以上に熱心に取り組んできて、上記の延世大学の研究は2010年に行われています。つまり、2010年頃には韓国での失敗が明らかになってきているのに、同じ頃に日本は国際化拠点整備事業(グローバル30)を実施し、「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上をランクインさせる」などの目標を掲げているのです。この政策に関わった政治家全員と文科省の役人全員に韓国の大学英語化の失敗を知っていたか聞きたいです。いえ、むしろ、聞くべきです。今からでも、英語教育政策に関わる文科省全員に聞いてください。

韓国と日本のIT社会の絶望的な差

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)からの引用です。

韓国では住民登録番号(日本のマイナンバーにあたる)を通じて、生年月日、性別、出生地、顔写真、10本の指紋、家族構成、行政サービス、納税、医療、銀行、教育、福祉、出入国管理、クレジットカード利用歴(!)など、個人のあらゆる記録を紐づけしています。

より具体的に説明します。医療に関しては、出生してから現在までの予防接種歴、受信歴、入院歴、処方歴、健診歴が全て記録されています。母子手帳を紛失して予防接種歴が分からない、3年前に風邪でクリニックにかかったがなんの薬をもらったかは分からない、という日本ではよくある状況は、韓国にいる限り、ありません。加入している公的保険の種類、これまでの医療費の情報も登録されているので、韓国ではクリニック受診時に保険証は不要で、住民登録証(日本のマイナンバーカード)さえ不要で、住民登録番号さえ覚えていれば足ります。出入国管理の情報まであるので、新型コロナウイルスの感染経路の特定にも有益です。

教育に関しては、出身学校、入学年、卒業年、出欠日数、成績表まで記録しています。住民登録番号さえあれば、成績証明書や卒業証明書を自宅のパソコンから母校に24時間請求でき、母校もネットを介して証明書のデータを送付してくれます。日本のように、わざわざ手紙でやりとりして、紙として出力するような手間はありません。

特筆すべきは銀行やクレジットカード利用歴と繋がっていることです。2016年の日本のキャッシュレス決済は19.8%と先進国最低と言えるのに、韓国のキャッシュレス決済は96.4%と先進国最高です。つまり、韓国の96.4%の金銭取引は政府が把握できているのです。以前にも書いたように、キャッシュレス化は、貨幣や紙幣の印刷代が不要になり、現金レジやATM機器が不要になり、個人から団体まで現金輸送が不要になり、脱税が難しくなります(脱税方法を知らない大部分の一般庶民にとって恩恵が大きくなります)。

韓国がキャッシュレス化を強力に推進したのは1997年以降で、年間クレジットカード利用率が年収の4分の1を越えた分に関して、課税所得を20%(上限300万ウォン)控除する政策を打ち出します。後に控除率は15%に下がりましたが、それでも節税対策として、クレジットカードが一気に普及しました。

住民登録番号さえあれば、過去1年間の買い物履歴を全て確認できます。さらには、給与所得や給与以外の所得、世帯構成員の所得、源泉徴収額、医療費などの公的費用も全て記録されているので、確定申告の手間がかかりません(!)。

引っ越しの際は、自宅のパソコンから転入届のページに新住所を入力して申請すれば、あとは転出元と転入先の職員が行政情報共同利用システムを用い、手続きを済ませてくれます。引っ越しに伴い住所変更届が必要な運転免許証、国民健康保険国民年金、子どもの転校手続きなども自動処理されます(!)。

相続や死亡の申請もネットで完結します。パスポートの申請も、住民登録証を見せれば、あとは写真を撮って手数料を払えば完了します。

日本にこの制度を導入すれば、1年あたり、役人の人件費は何億円、何兆円節約できて、国民全体の無駄な申請労力時間は何万時間、何億時間削減されるのでしょうか。大手マスコミは今すぐ計算して、トップで報道すべきです。

韓国では、がん検診の督促メールを政府が個人に届けてくれます。さらに、健康保険審査評価院という機構が、保険外での処方や過大請求、過度な治療行為など、治療費の払い過ぎを自動的にチェックしてくれて、患者個人に直接連絡して、払い戻しをしてくれます。税金についても同様で、過払いがあれば、自動的にチェックしてくれ、納税者がなんの手続きもしなくても、銀行口座に払い戻しをしてくれます。

いつの間に日本はこんな残念な国になったのか」でも書いたように、中国は監視カメラの活用で世界最先端を疾走しています。比較サイトComparitechによれば、人口千人あたりの監視カメラの台数は、中国の都市が1位373台で、2位~5位のインド各都市の63~25台を突き放しています。韓国のソウルは人口千人あたり7.8台で10位にも入っていませんが、監視カメラの設置に特別交付税を配分して、急ピッチで普及させています。新型コロナ感染者が発生するたびに、感染者が訪れた店舗や施設などの移動ルートは携帯端末の位置情報、クレジットカードの利用履歴、カーナビのデータ、監視カメラの映像記録などによって割り出されました。

ソウル市の市長室には、巨大なデジタルダッシュボードが設置されており、市内の交通状況、大気汚染、災害、事故、犯罪、物価、不動産価格、予算執行状況まで、ありとあらゆる情報がリアルタイムで表示されます。驚くべきは、同じ内容がホームページを通じて、市民にも公開されていることです。バスが停留所に到着する時間はもちろん、座席の空き状況までスマホ画面にリアルタイムで表示できます。災害や事故にあったり、帰宅途中に危険を感じたりしたときなどに、緊急救助を要請すると、最寄りの管制センターに自動的に自分の位置情報と現場写真や動画が転送されます。管制センターには警察が常駐して、必要に応じて警察官が急行します。

光州市では、音声や映像を分析するソフトでスクリーニングをかけ、悲鳴や不自然な動き、火災などの温度変化を自動感知し、アラートがかかれば各地域の管制センターに常駐する警察官と職員が映像を確認し、パトカーや消防署や救急車を現場に急行させます。

民間でも、深夜まで塾通いする子どもが往復ルートから外れると現在地の写真や地図を親に連絡するシステム、タクシー内のチップにスマホをタッチすると乗車したタクシーの情報や現在地を登録した連絡先に自動で知らせるサービスもあります。

IT後進国の日本にいれば、まるでSF世界のように思えますが、すぐ隣の韓国で数年前から実現している話です。

私は以前、「日本が世界最高のAI国家になる方法」で、日本人の全ての金銭情報と位置情報をネット公開すれば、日本は世界最高のIT国家になれると断定しました。韓国はさすがに金銭情報や位置情報のネット公開まではしていませんが、政府はネット上でほぼ全ての金銭情報を把握できているようです。

彼我の差に失望の念を禁じえません。

歴史が暗記科目でないように政治ニュースも暗記教養ではない

日本に限った話ではありませんが、歴史科目では人物名を記憶することが主な勉強内容になりがちです。本来、歴史はどの時代にどんな事件が起きて、それによって民衆の生活がどう変わったかが重要であるはずですが、教科書にそんな記述がほとんどなく、当然、教師もそんな内容を教える時間がほとんどありません。「歴史は暗記科目ではない」は歴史教科批判の常套句で、1人の王の名前よりも、その下にいる数百万の民衆の生活に注目すべきであることは誰でも分かります。

同じ批判は、現代の政治ニュースにもあてはまるでしょう。本来、日本の総理大臣の名前だとか、アメリカの大統領の名前など一般大衆にとってはどうでもよく、どの国でどんな政策が実施されて、それによって民衆の生活がどう変わるのか、変わったのかが重要なはずです。しかし、現実には日本はもちろん、特にアメリカなど海外の政治ニュースは、選挙で誰が選ばれた、誰が勝ちそうだ、誰がスキャンダルに巻き込まれたなど、くだらない政争の話がほとんどです。

「韓国社会の現在」(春木育美著、中公新書)を読んで、この10年ほどの韓国の政治改革について、新聞を毎日読んでいる自分がここまで無知であったことに愕然としました。同時に、日本の全ての大手マスコミが韓国に現地駐在員を常駐させているはずなのに、ここまで参考になる、参考にすべき韓国の政策情報が日本でろくに報道されていないことに憤りを感じたので、あえて上記のことをここで訴えました。

現在の韓国と未来の韓国

「韓国カルチャー」(伊東順子著、集英社新書)は「爆速」に変化する韓国という表現が頻出します。中国に住んだ経験のある私からすると、この表現には違和感がありました。もっと言えば、視野の狭さを感じました。

変化のスピードが恐ろしく遅い時代」の日本から見ると、新興国は全て「爆速」で変化しているのは事実です。日本から見ると、他の先進国ですら高速で変化しているように見えるでしょうから、韓国などは爆速に変化していると見えるのも自然ではあります。

しかし、韓国はとっくに先進国の仲間入りをしています。率直に言って、伸びしろがそれほどない国です。出生率は日本以上に低く、日本以上に急激に高齢化することも分かっています。韓国にとって大変失礼なことは承知で書きますが、現在の韓国は、1990年頃の日本と同じく、韓国史上、世界での存在感が最も高い時期なのではないでしょうか。戦後から1970年頃までの日本を「爆速で変化する」と表現するなら分かりますが、バブル期の日本を「爆速で変化する」と表現したなら、「視野の狭い奴」「未来の読めない奴」と知性の高い人から嘲笑されるはずです。

世界から注目される高齢化先進国・日本」でも批判したことですが、日本人は欧米先進国ばかりに注目しすぎています。世界が欧米先進国と日本と韓国だけなら、「爆速」の韓国でいいのでしょうが、それなら中国はどうなるのでしょうか。ミャンマーベトナム、アフリカの国は? 上記の著者は世界も未来も見えないようです。

韓国は日本以上に急な人口減少ジェットコースターを進むことは確実で、高齢化率は上昇する一方なので一人当たりGDPも増えないか、場合によっては減少するでしょう。そうなると、日本が韓国に再逆転する可能性もあります。

もっとも、韓国が日本のように今後、停滞して、衰退する一方なのかは疑問に思っているところもあります。1990年代以降も日本人は欧米人より勤勉であったように、韓国人が日本人より教育に力を入れる習慣は変わらないでしょう。韓国が日本よりIT分野で遥かに進んでいるアドヴァンテージもありますし、「韓国が日本を追い抜いた事実はニュースにもならない」に書いたように、韓国政府は日本政府の比ではないほど政治改革を迅速に実行します。「国家の富は国民の道徳と教養によって決まる」との考えに立てば、教養の高さで日本人が韓国人に負け続けるのなら、日本が韓国に再逆転する可能性は低いようにも思います。

日本経済の成長も衰退も全ては人口動態が根本原因である

1990年頃は日本の存在感が世界で最も大きかった時代です。欧米諸国、特にアメリカの少なくない知識人は日本に追い抜かれる、あるいは、追い抜かれたと本気で考えていました。

日本人はアメリカ人より努力家で勤勉であり、停滞するアメリカと違い、日本は絶え間ない技術革新により経済成長を遂げていました。経済だけでなく、黒人問題や犯罪率の高さに社会全体が苦しみ、冷戦終結で莫大な防衛費の使い道に悩むアメリカ政治と異なり、犯罪率が低く貧富の差は少なく、何十年も戦争していない日本政治は安定していました。日本のテレビゲームはアメリカだけでなく世界中で遊ばれており、日本人はアメリカのルールや習慣をよく勉強し、それを自国に上手く取り入れていますが、アメリカ人は日本のルールや習慣をほとんどなにも知らず、当然、自国に取り入れることもできていません。文化的にも、アメリカは日本に負けていました。

第二次大戦で完膚なきまでアメリカに敗れ、その後、常にアメリカを目指して頑張ってきた日本人たちは1990年頃、もちろん、優越感に浸りました。欧米人が指摘してくれた「日本の長所」によって日本が経済的にも、政治的にも、文化的にも素晴らしい国になった、と考えてしまいました。

現在、一人当たりのGDPアメリカに逆転されるだけでなく、大差をつけられ、文化面でも、日本がアメリカに勝っていると考える日本人はまずいません。しかし、そんな今でも、日本人の勤勉さのため日本が世界に誇る素晴らしい国である、と考える日本人、正確には考えたい日本人はいます。一人当たりGDPシンガポールや韓国に追い抜かれたといった国際的な視点だけでなく、国内的な視点でも、人口は減少して、経済は縮小して、借金は増え続けて、政治改革は実行できていないのですから、もはや誰の目にも日本の没落は明らかなのに、なぜ「日本は素晴らしい国だ」と考えるのでしょうか。あるいは、没落が明らかだからこそ、現実を直視したくないのでしょうか。もしそうなら、レイテ沖海戦後、もはや誰の目にも日本の劣勢は明らかになっているのに、日本の勝利を信じていた、信じたがっていた第二次大戦末期の日本人の心理に近いように思います。

平成の失われた30年の間に、知性の高い日本人は一時常識になっていた「日本人は勤勉だから経済成長できた」が間違いであることに気づいてきました。

確かに、日本人が欧米人より努力家で勉強家で勤勉だったことは事実で、それがゆえに他の先進国よりも経済成長できたことは一面の事実です。しかし、そうだとしたなら、その後も日本人は欧米人より勤勉だったので、日本は欧米との差をさらに広げて、今頃はGDPで世界一になっていなければなりませんが、現実に起きたのはその逆で、世界の中で日本のGDPの割合は下がる一方です。

欧米ほど、日本が改革を実行しなかったから、あるいはIT化しなかったから、日本は負けたのでしょうか。それも要因かもしれませんが、小国を含めれば欧米先進国でも改革を実行できていない国はありますし、日本以上にIT化が遅れている欧米先進国もあります。だとしたら、それ以外に原因があるはずだと考え、ついに、平成の終わり頃、人口動態が根本原因だと発見されました。

「発見」というと、それまで全く気づいていない表現で不適切かもしれませんが、バブル期の日本がアメリカに追いついた(追い抜いた)最大の要因が人口動態だと見抜いた人は、2010年くらいまでアメリカ人も含めて、いなかったのではないでしょうか。特に1990年頃は、全知識人がアメリカと日本の文化や習慣の違いに原因を見出そうとしていたように私は記憶しています(今でもその違いに注目している知識人もいます)。

日本の戦後の人口爆発は、他の欧米先進国より、極端な形で現れました。全ての西側先進国は戦後から30年ほど順調に経済成長していましたが、アメリカを含め、ほぼ全ての欧米先進国は1973年のオイルショック頃から停滞が始まります。しかし、日本だけは例外的に1990年頃のバブル期まで経済成長を遂げましたが、これは戦後のベビーブームが他の先進国より大きかったため、労働人口が増えていたことが一番の原因だったと、現在はほぼ結論が出ています。労働人口が増えれば、経済は成長します。経済が成長すれば、労働者は給与が上がり、意欲が出るので、勤勉になります。

全く同じ理論で、韓国が日本を追い抜いた理由も説明できます。韓国は日本以上に少子化が進んでいるとはいえ、朝鮮戦争があったせいで、下のグラフのような人口動態なので、労働人口の増加は続いており、労働人口率は先進国で最高にまでなりました。労働人口が増えれば、経済は成長します。経済が成長すれば、労働者は給与が上がり、意欲が出るので、勤勉になります。

一方、1990年以降、日本は労働人口が減ったので、経済は成長しませんでした。経済は成長しないのに、高齢者は増えて、十分に増税しなかったので、国の借金は増えました。労働者の給与は上がらないので、勤勉にもなれませんでした。

韓国が日本を追い抜いた事実はニュースにもならない」で、韓国が日本を追い抜いた理由は、「韓国人は日本人より勤勉で、努力家で、教養が高く、自由と平等の価値を尊重する」から、または「日本人ほど保守的でもなく、変化を柔軟に取り入れ、一度起こした変化を修正するスピードも日本とは段違い」だからと、私は書きました。

しかし、最大の理由は、そこではないでしょう。やはり、人口動態にあったと私は考えます。ある程度の政治社会の安定と教育制度の整備と経済規制が撤廃されていれば、後は単純に人口で経済成長、経済規模が決まってしまいます。そして、経済は文化と連動します。だから、今後、日本以上に韓国が激しい少子化のままなら、日本が韓国に再逆転する可能性は十分あるでしょう。

もっと言えば、それくらい少子高齢化は問題であることを日本人は認識すべきです。

韓国人は日本人より努力家で勤勉である

多くの韓国人と交際したことのある日本人なら、これは感じたことでしょう。「韓国が日本より豊かになる」に書いたように、私もカナダ留学時、韓国人の多くが簡単な微積分をすぐに解けるのに、日本人の多くは簡単な平方根の計算ができないので、落胆しました。

以下は、「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」(菅野朋子著、文春新書)からの抜粋です。

2018年6月に韓国で「プロデュース48」が放送されました。日韓それぞれのアイドルや練習生96人が参加し、さまざまなパフォーマンスを繰り広げながら国民プロデューサー(視聴者)の投票により最終メンバー12人を決めるもので、選出されたメンバーは期間限定のアイドルとして活動する予定になっていました。日本側は中西智代梨、後藤朋咲、本田仁美(以上AKB48)、松井珠理奈SKE48)、宮脇咲良矢吹奈子(以上HKT48)など、既にデビューしているアイドルもいましたが、韓国人は全員名前も知られていないデビュー前の練習生です。

放送前からSNSでは「日本の学芸会のようなアイドルと過酷な練習をしている韓国人では実力が違いすぎる。競争にならない」と指摘する声がありました。

上記の著者も「なんという無謀なことをするのだろう」と思ったそうです。なぜなら韓国で始めてAKBの公演が放送された2010年、韓国人から「AKB48って芸能人ではなくアマチュアグループだよね?」と聞かれたり、「日本ではあんな子どものようなアイドルが人気なのか」と言われたり、「あれが日本の実力かと思われるのは心外。恥ずかしいから韓国で公演しないでほしい」と話していた在韓の日本人もいたからです。

ふたを開けてみると、懸念は現実になりました。歌や踊りなどでのパフォーマンスによるA~Fのランク分けでは、日本人メンバーのほとんどが低レベルクラスへ落ちます。ダンス担当のトレーナーは「日本の子たちは正直分からない」とその実力に論評不能と呆れたような表情をつくられます。スター性でAランクとなったHKTの宮脇も、韓国の参加者からは「正直、本当にAのレベルなのかなと思いました」とその評価をいぶかしがられる始末です。当の宮脇も「すごくショックで、韓国の人は日本でも通用するのに、日本人は日本を出た瞬間に通用しなくなる現実を突きつけられた気がして悔しいって思いました」と心情を吐露しています。ちなみにこのプロデュース48は後に得票数の捏造が発覚しているので、日本人アイドル最高位の宮脇ですらAランクではなかったのでしょう。ほぼ同時期に日本で行われていたAKB総選挙では1位を獲得したSKEの松井も、この番組では酷評に沈む結果となり、番組の途中で体調不良を名目に降板しています。

与えられた課題を「できない」と人目も憚らず泣き出し、練習にも自暴自棄な態度を見せる日本人メンバーもいて、ため息が漏れた、と上記の著者は書いています。

こんな実力のないガラパゴスアイドルたちを「推し」て、ちやほやしてきた日本人全員も酷評されるべきでしょう。少し論点は違いますが、こんなことからも「褒めるだけで上手くいくはずがなく、本当に反省させることは極めて難しい」と分かるはずです。とりわけ、アイドルや芸術関係などの世の中に不必要な職業に就いている人たちや目指す人たちは、一般の職業の数倍は厳しくされるべきです。韓国人がそれを乗り越えてきているのですから、遺伝的に近い日本人だって乗り越えられるはずです。

韓国が日本を追い抜いた事実はニュースにもならない

韓国の大衆文化の本を3冊ほど読みました。「K-POP」(金成玟著、岩波新書)、「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」(菅野朋子著、文春新書)、「韓国カルチャー」(伊東順子著、集英社新書)です。まず驚いたのが、どの本も「韓国のポップカルチャーは日本を追い越した」ことを当たり前の事実としていることです。それについて「まさか韓国に抜かれる日が来るとは」「どうして日本は負けたのか」といった嘆きはありません。菅野朋子や伊東順子は、むしろ「そうなることは何年も前から分かっていた。今更驚くことでもない」といった姿勢で書いています。

パラサイト、BTSイカゲームなど、映画や音楽やテレビドラマで「韓国のポップカルチャーは日本のそれよりも世界全体で遥かに人気がある」ことは事実として知っている日本人も増えてきているでしょう。韓流ブームを完全にスルーしてきたせいもあり、私がその事実に気づいてきたのは2018年頃です。ニューヨークタイムズが2013年に「G-DRAGONが世界から受け入れて芸術として発していたものはこれから異なる方向に進み、世界がG-DRAGONから学ぶことになるだろう」とまで評したG-DRAGONを知ったのも、2022年です。なお、イギリスのガーディアン(知らない人もいると思いますが、調査報道で世界で最も評価されている新聞)は2014年に「G-DRAGONはディプロ、バウアーなどのトップミュージシャンたちがコラボレーション相手として好む最先端のミュージシャンであると同時に、イタリア版『ヴォーグ』の表紙モデルであり、毎年パリ・ファッションウィークの最前列に招待される世界的なファッションリーダーである」と報道したそうです。G-DRAGONはバンドBIGBANGのメンバーであり、元はただのラッパーです。

このところ「一人当たりのGDPで日本は韓国に抜かれた」という言葉をよく耳にするようになりました。まだ新聞で見た記憶はないですし、wikipediaの「各国の一人当たり名目GDPリスト」のIMF2022年のデータでは日本は韓国より上位にいます。とはいえ、データによっては、そんな数字が出ているのも事実でしょうし、IMFのデータでも日本がいずれ抜かれることは、知性の高い日本人なら誰もが知っていることです。

韓国が日本を追い抜いた理由の一つは※、韓国人が日本人より優秀だったからだと私は考えています。韓国人は日本人より勤勉で、努力家で、教養が高く、自由と平等の価値を尊重します。日本人ほど保守的でもなく、変化を柔軟に取り入れ、一度起こした変化を修正するスピードも日本とは段違いです。新型コロナ政策で、韓国は日本以上に自粛していましたが、今から半年ほど前に韓国はコロナ流行中にもかかわらず、コロナ自粛を解除していきました。現在の日本のコロナ政策を半年以上早く実行しているわけですが、日本はいまだ韓国ほどコロナ自粛を解除する勇気を持てていません。

韓国が日本より豊かになる」に書いたように、韓国が日本を経済面でも文化面でも追い抜くことは私も10年以上前から予想していました。ただし、そこの記事の後半では「そうとも限らない」と書いているので、心のどこかで「韓国が日本を本当に抜くのだろうか」「抜かないでほしい」と考えていたのかもしれません。上記の本「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」の「あとがき」には、こんな言葉があります。

 

「変化」はなにもエンタメ産業に限らない。韓国に住んでいると社会も文化も常に動いていて、少し前まで通念とされていたことがあっという間に過去の価値観になっていて戸惑うことも少なくない。たとえば、ジェンダー問題などへの接し方はここ数年でがらりと変わっている。

しかし、日本でとらえられる韓国はいつも同じ姿、今でも「日本の背中を追いかける」イメージのままのように思う。変化がゆっくりと起こっている日本にとって、韓国の変化のスピードは想像できないのかもしれない。

 

まさに私に当てはまる指摘であり、私以外の多くの日本人にも当てはまる指摘ではないでしょうか。

次の記事に、韓国人が日本人より優秀である例を示します。

 

※韓国が日本を追い抜いた最大の理由は、この記事に書いていません。それは「日本経済の成長も衰退も全ては人口動態が根本原因である」の記事に書きます。