こちらのブログで何度も紹介している「仕事と家族」(筒井淳也著、中公新書)は少子化問題の本質を捉えた本だと思います。少子化問題の解決のためには、女性の就業率を上げるべきで、そのためには日本における勤務地や時間が無制限の労働は改めるべきと主張しています。また、日本では家事労働にかける時間が長すぎる、もっと簡略化しないと女性であれ男性であれ仕事と家事を両立できない、と仕事だけでなく家事にも注目しています。
労働環境の改善や、家事労働の簡素化で、女性の就業率と出生率を上昇させる案は私も賛成です。ただし、同書で成功例としてあげているスウェーデンでも、合計特殊出生率は10年くらいかけて0.5上昇させて、ようやく2.0前後になった後、再度1.5くらいまで減少したりしています。周知の通り、現在、日本の若年人口は右肩下がりなので、たとえ来年奇跡的に合計特殊出生率が2になって、その2を長年維持できたとしても、人口減少は私が死ぬくらいまでは止まりません。もちろん、労働環境の改善、家事労働の簡素化をスウェーデン並みにするまでに10年単位の時間がかかりますし、日本の合計特殊出生率を2で安定させるまでにもさらに多くの時間がかかりますし、まして日本経済の斜陽傾向を反転させるほど少子化が解決するとなると、上記の改革案程度では100年先の話になるでしょう。その前に日本の国債がデフォルトになって、それどころではなくなっている可能性も十分あります。上記の本の視点は素晴らしいと感じますが、その解決策だけで有効とは思えません。
だから、人口減少を補うため移民の導入という案が出てくるのでしょう。それも重要な解決策ですが、ここでは別の視点からの解決策を提示します。
未婚税の導入です。未婚税はその名の通り、たとえば30才以上の未婚であれば、男女全員に課せられます。最低でも所得の10%は現在の税金に上乗せしてほしいです。35才になれば未婚税が15%、40才になれば20%と高くなります。
形だけ結婚して子どもを作らず、未婚税を逃れる若者たちが出てきては意味がないので、少子税の導入も提案します。生殖や遺伝機能に問題のない男女で、妻が30才になり、かつ、結婚して2年経過したのに、妻が一度も妊娠していなければ少子税が課されます。少子税は、たとえば、結婚2年後から家庭所得の20%が課されて、結婚後7年後から25%、結婚後12年後から30%と高くなります。
一方で、子どものいる家庭への税金優遇策も提案します。子どもが2人以上いたら、少子税はかかりません。3人以上からは補助金が出て、4人以上になると夫婦の一方が働かなくても中流以上の生活ができるほどの補助金を出して、10人いたら夫婦二人が一生働かなくてもいいほどの補助金を出し、年金を保証します。
未婚税と少子税と子ども補助金は最も簡単に浮かぶ少子化対策だと私には思えるのですが、現在の日本でほとんど論じられていないので、ここに書きました。妻が30才以上になると少子税が課せられる点など、人権侵害との批判は必ず出てくるでしょうが、この案は劇的に効果を生む可能性がある上、税率を変えることで程度が調整できるので、妥当な解決策だと私は考えます。反対する人は有効で現実的な対案を出してほしいです。
次の記事に、移民策では少子化の根本的な解決策にならないことを示します。