未来社会の道しるべ

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現在の韓国と未来の韓国

「韓国カルチャー」(伊東順子著、集英社新書)は「爆速」に変化する韓国という表現が頻出します。中国に住んだ経験のある私からすると、この表現には違和感がありました。もっと言えば、視野の狭さを感じました。

変化のスピードが恐ろしく遅い時代」の日本から見ると、新興国は全て「爆速」で変化しているのは事実です。日本から見ると、他の先進国ですら高速で変化しているように見えるでしょうから、韓国などは爆速に変化していると見えるのも自然ではあります。

しかし、韓国はとっくに先進国の仲間入りをしています。率直に言って、伸びしろがそれほどない国です。出生率は日本以上に低く、日本以上に急激に高齢化することも分かっています。韓国にとって大変失礼なことは承知で書きますが、現在の韓国は、1990年頃の日本と同じく、韓国史上、世界での存在感が最も高い時期なのではないでしょうか。戦後から1970年頃までの日本を「爆速で変化する」と表現するなら分かりますが、バブル期の日本を「爆速で変化する」と表現したなら、「視野の狭い奴」「未来の読めない奴」と知性の高い人から嘲笑されるはずです。

世界から注目される高齢化先進国・日本」でも批判したことですが、日本人は欧米先進国ばかりに注目しすぎています。世界が欧米先進国と日本と韓国だけなら、「爆速」の韓国でいいのでしょうが、それなら中国はどうなるのでしょうか。ミャンマーベトナム、アフリカの国は? 上記の著者は世界も未来も見えないようです。

韓国は日本以上に急な人口減少ジェットコースターを進むことは確実で、高齢化率は上昇する一方なので一人当たりGDPも増えないか、場合によっては減少するでしょう。そうなると、日本が韓国に再逆転する可能性もあります。

もっとも、韓国が日本のように今後、停滞して、衰退する一方なのかは疑問に思っているところもあります。1990年代以降も日本人は欧米人より勤勉であったように、韓国人が日本人より教育に力を入れる習慣は変わらないでしょう。韓国が日本よりIT分野で遥かに進んでいるアドヴァンテージもありますし、「韓国が日本を追い抜いた事実はニュースにもならない」に書いたように、韓国政府は日本政府の比ではないほど政治改革を迅速に実行します。「国家の富は国民の道徳と教養によって決まる」との考えに立てば、教養の高さで日本人が韓国人に負け続けるのなら、日本が韓国に再逆転する可能性は低いようにも思います。