どこかの記事にも書いたように思いますが、私がお世話になった人の中で、定年後に山で生活し始めたインテリがいます。家庭菜園や太陽光発電もして、できる限り自給自足の生活をしていました。
そう聞くとエコな生活をしているように思いますが、その話を聞いた時に30代前半だった私は現実的な問題が気になりました。電気、ガス、水道はどうなっているのでしょうか。
見事に通っているそうです。さらにはネット環境まで整えたそうです。
「そのインフラ費用だけで、すごい金額になりますよね?」
「うん。2000万円くらいした」
「ええ!」
なお、その方が家庭菜園でまかなっている食料自給率はカロリー基準でも重量基準でも10%もいっていません。10年以上前の話なので、エネルギー自給率も冬なら5割もいっていなかったはずです。もちろん、足りない分は山から車で下りてスーパーで米や野菜を購入したり、電力会社から電気を買ったりしています。
今の私なら、その方が亡くなった後のことも気になります。「電気、ガス、水道設備の撤去費用は誰が払うことになっていますか」「もしかして死後に撤去されないままですか」と。
「環境問題と教養」でも書いたことですが、環境問題は複雑です。インテリが田舎で家庭菜園して自家発電していたら、エコになっているとは限らないのです。
「『人口減が地方を強くする』は『地方創生大全』よりも読むべきである」に書いた通り、人口減少の日本で避けられないのは「住宅のバラ立ち」問題です。住宅がバラ立ちすると、電気、ガス、水道などのインフラ維持費が増加します。人口減少の日本なら、事実上、維持不可能になります。昔ならともかく、現在の日本なら、老若男女問わず、「電気なし」「水道なし」だと生きられないはずです。
電気はエネルギー問題と直結します。世界中の全ての人が自然エネルギーだけで自活したいはずです。しかし、当然ながら、太陽光は日光がある時だけ、風力は風がある時だけしか発電できません。だから、太陽光発電と風力発電だけで生活したい意識の高い人は、それらがない時は停電になることを覚悟しなければならないはずです。これは私の知り合いの電力会社の人が口癖のように言います。
なお、電気を蓄える方法はあるにはありますが、平均的な日本人の1日の生活に必要な電気を蓄える電池となると、それこそ高級電気自動車が買える費用が必要になります。日本の全ての家庭にそんな高級電池を供給するためには、電池製造のためのレアアースが必要となり、レアアースが毎年採掘できる量にも限りがあるので、あと数十年は実現不可能でしょう。
2011年の福島原発事故で東京電力に呆れかえった日本人の一人が私です。だから、電気料金が安くなるという理由からよりも、地域独占で腐敗していた電力会社に鉄槌を加えるために、私は新電力会社に変えました。しかし、契約していた新電力会社が2022年に急遽倒産して、別の新電力会社に変えざるを得なくなり、さらに2023年にはその新電力会社も倒産し、3回目の新電力会社に変更しました。
新電力会社からエネルギー価格の高騰が倒産原因との連絡が何度も届いていたので、それは知っていましたが、下のグラフは2024年に知りました。
文字通りのピークが生じています。新電力会社は自力でエネルギー供給ができなくなると、他の電力会社(旧来の地域独占電力会社)から電気を買わなければいけません。たとえ安い値段で電気を供給しているとはいえ、停電を起こすことは許されていないからです。
しかし、「10倍以上も電気買い入れ価格が高騰したら、停電してもやむをえない」などの条件はつけるべきだったでしょう。どんなに電気買い入れ価格が高騰しても、停電が許されなかったため、すぐに消費者に価格転嫁させることは契約上難しいので、新電力会社の倒産が相次ぐことになりました。ここ2~3年のエネルギー価格高騰を生き残れたかどうかは、技術力や経営力とはほぼ無関係に、親会社などから金銭援助を受けられたかどうかで決まったはずです。
新電力会社だけが損をするのはおかしいので、「安い新電力会社と契約する世帯は、エネルギー価格が高騰した時には停電を受け入れる」条件はあるべきでしょう。
もっと前に新電力倒産事件をこのブログで書く予定でしたが、調べていくうちに不動産業界との癒着問題などが絡み合っていることが分かり、その解決策まで提言しようとすると、あまりに複雑で長くなり、それは諦めました。最後に愚痴でも書いておきます。
1日中エアコンをつけっぱなしにするバカ対策として、いいかげん全国民に個人識別チップを入れて、15分以上部屋にいない時は自動的にエアコンが消えるようにすべきでしょう。