未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

人口減少の深刻さ

現状の少子高齢化が続けば、日本の経済は縮小していき、経済縮小の度合いは地方ほど顕著になります。最大の理由は、人口減少と少子高齢化です。

一部の地方で事業が成功して、豊かになることはあるでしょうが、日本中の地方が全て豊かになることはありえません。全体として、日本の地方は衰退していきますし、消滅もしていきます。

こんな分かり切った未来は、私だけでなく、多くの日本人が見通しているはずです。しかし、その深刻さを認識していない人がまだまだ多いように私は思います。これからの日本では、どう成長させるべきかではなく、どう衰退させるべきかを考えなければいけません。厳しいですが、それが現実だと全ての日本人が認識すべきです。

この現実を見据えていれば、対処法も自ずと見えてくるはずです。まず、できるだけ衰退のスピードを緩めるべきです。「パワハラの現状と日本の生産性の低さ」でも指摘したように、日本人はそのサービスの質の高さに対して、生産性が極めて低いです。だから、生産性を高める余地は十分にあります。「パワハラ撲滅がもたらす経済効果」の改革は、生産性を上げるためだけでなく、日本人ひとり一人の幸福度を上げるためにもぜひ実行してほしいです。

また、最低賃金の上昇は生産性向上のために今すぐできる対策です。時給1500円以上にはすべきだと考えます。その副作用として失業率が跳ね上がるので、生活保護捕捉率の向上は必要不可欠です。

人口減少が根本原因なので、それもできる限り食い止めるべきです。「優秀な労働者を韓国や台湾にとられる日本」で指摘したような問題点を即刻修正して、移民の受け入れは積極的に進めるべきでしょう。

地方経済に関していえば、衰退する地方を活性化させることは極めて難しい、あるいは不可能と率直に認めるべきです。だから、「地方創生大全」(木下斉著、東洋経済新報社)で主張されているように、地方活性化政策に補助金(税金)は使用してはいけません。一部の意欲ある者たちが自己資金を持ちよって、あるいは、そういった者たちに融資する企業などの責任において、地域活性化を推進すべきです。人口急減社会の中、地方活性化政策は成功より失敗する確率の方が高くなります。地方創生に補助金を使ったら、既に十分過ぎるほどある後世へのツケをさらに増やすだけなので、それよりも税金のあまりかからないコンパクトシティ政策を推進すべきです。そのために土地問題の解決、一等地の有効活用は重要になってきます。

人口減少なのですから、これまで作った社会インフラを維持すべきかどうかも検討することになります。地方衰退にとって、これが最も切実な問題になるでしょう。水道、ガス、電気、交通、医療アクセスなどが維持できない地方は既に出てきていますが、急激な高齢化社会が到来する今後、そういった地方は激増していきます。結果、切り捨てられる地方や消滅する地方も必ず現れます。強制移住はできないでしょうが、ある人が衰退する地方に残る場合、ある程度の不便さを受け入れてもらわなければなりません。たとえば、「どうしてもそこに残りたいのならそれでもいいが、今後、水道とガスの供給はできない。電気だけは通すが、最低でも月5万円になって、しかも住民が少なるごとに電気代が高くなり、最後には事実上支払い不可の高額になる」などです。こうなると「水道とガスを止められると知っていたら、こんな辺鄙な土地にマイホームなんて建てなかった。ハシゴをはずした国の責任だから、国が移転費用を出すべきだ!」「移転費用などない。病気のため、水道とガスなしでは生きられない。私に死ねと言うのか!」と不平を言う人も必ず出てくるでしょう。しかし、財政に余裕のない日本で、そんな未来を予見できなかった人たちの補償までできなくなる可能性は十分あります。

残念ながら、現在の日本の少子高齢化のペースで、日本の全ての地方で「文明的な」生活を維持するのは不可能です。結果、「嫌なことと、より嫌なことと、絶対に嫌なことの中から、嫌なことを選択する」政策ばかりになってしまいます。いえ、それさえ無理となって、「より嫌なこと」あるいは「絶対に嫌なこと」を選択せざるを得ない場合も出てくるでしょう。日本の少子高齢化はそれくらい深刻な問題です。

そうなりなりたくないのなら、「養子移民政策」などを本気で実行してもいいのではないでしょうか。

 

※余談になりますが、「移転費用もなく、病気のため、水道とガスなしでは生きられない」日本人など、日本中探しても100人もいないでしょう。「家のローンが何十年もあるから移転費用がないと言っているだけ」「現状の暮らしを維持するほどの引っ越し費用はないから、そう言っているだけ」がほとんどです。働く能力のある人なら、一時的に借金は増えたとしても、都会の賃貸住宅に引っ越して、ある程度の貧しさを受け入れたら、借金をなんとか返しながら生きていけます。その貧しさと言っても、子どもが大学進学を諦めなければいけないほどではありません。私もそうでしたが、贅沢しなければ、大学の学費なら奨学金で十分賄えるからです。また、本当に「病気のため、水道とガスなしで生きられない」のなら、なおさら引っ越すべきです。もし本当に死ぬしかない人なら税金で保護してあげるべきですが、そういった人はごく一部のはずです。