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脳回路修正療法・一般論

私の精神療法は、既存の精神療法と異なると考えています。そのため、私は自身の精神療法を脳回路修正療法と呼んでいます。もっとも、そう呼ぶようになったのは先月からですが。

新しい精神療法の発表なので、この記事は本来、論文として発表すべき内容です。しかし、「元恋人への罵倒」に「インパクトファクターでしか医師の価値を測れない愚鈍な連中と、私を混同しないでほしいです」とまで書いた私が論文発表にこだわるのも矛盾します。ということで、地位も名誉も形式も気にしない私が、自身のブログで、自身の精神療法を紹介します。

 

症例1

たとえば、Aさんが同僚のBさんを嫌っていたとします。Bさんが嫌いな理由をAさんに聞くと、Aさんは「初対面から1~2年間つけていた香水の匂いがキツかったから」と述べます。さらに「その後、10年間につけている香水の匂いは全く気にならない」「それ以外でBさんを嫌う理由は全くない」とAさんは述べます。そこで精神科医である私はこう言います。「一般に、人を嫌うより、人を好きな方が道徳的に好ましいですよね」「職場の同僚なので、良好な関係を保った方がいいですよね」「もうつけていない香水の匂いで人を嫌うべきではないですよね」 
「それ以外でBさんを嫌う理由は全くない」と自分で言った時点で、おそらくAさんはBさんを嫌いでなくなっている可能性が高いです。ダメ押しで、僕が上の説明をしています。

これが脳回路修正療法と呼べる理由を説明します。

「好きであるべきBさんを、現在使っていない香水という理由で、なぜAさんは嫌っていたのでしょうか」

それは「好き嫌いの記憶」は偏桃体という脳の部位にあるのに、「体験記憶(エピソード記憶とも言う)」は海馬という脳の部位にあるからです。つまり、「キツイ香水」という「好き嫌いの記憶」と、「もう嫌いな香水はつけていない」という「体験記憶」は、それぞれ脳の別の部位にあるわけです。

おそらく、「好き嫌いな記憶」と「体験記憶」が脳の同じ部位にあれば、こんなおかしなことは起こらないんですよ。でも、別なので、偏桃体と海馬をつなげなければいけません。それができるのは、前頭前野です。理性的な思考に対応する部位であり、人間が他の動物と最も異なる部位でもあります。この前頭前野で、偏桃体と海馬をつないだ瞬間から、AさんはBさんを嫌いでなくなるんですよ! 偏桃体の「好き嫌いの記憶」が海馬の「体験記憶」によって修正されるからです。

もちろん、Aさんが自力で「12年も前の香水の匂いでBさんが嫌いだったんだ。そんなくだらない理由で嫌っているなんて、私、バカじゃない?」と気づいてくれたら、多分、とっくの昔にAさんはBさんを嫌いでなかったんでしょう。でも、Aさんは自力で修正できなかったので、私の精神科に受診して、私の脳回路修正療法により、偏桃体と海馬をつなぎ、AさんはBさんを理不尽に嫌うという問題を解決したわけです。

だから、私の脳回路修正療法を一文で説明するなら、次の二通りがあると考えています。

「脳内の好ましくない脳回路を、前頭前野の作用によって修正する」

「好ましくない思考傾向を、理性の力によって修正する」

なお、厳密にいえば、「体験記憶」の短期記憶は海馬にある一方で、「体験記憶」の長期記憶は側頭葉にあります。さらに厳密にいえば、「主に側頭葉にある」などの表現が正しいのですが、今回は分かりやすくするため、意図的に単純化しています。そもそも「記憶とはなにか」を科学的に定義すること自体が難しく、まして、それに対応する脳の部位を正確に特定できるとは限らない、と私が十分知っていることは、ここに書いておきます。

次の記事に僕が最もよく使う「脳回路修正療法・行動療法編」を書いておきます。