未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

胃瘻しないのに栄養点滴する理由はない

このブログで何度も書いているように、日本の医療は世界最高です。特に高齢者に関してはダントツで世界史上最高の医療・福祉国家で、結果として高齢者に対する過剰医療、過剰福祉が行われています。高度経済成長もJapan as No.1も経験してきた十分恵まれた高齢世代の医療や福祉のために、恵まれない未来の世代に借金してまで、莫大な税金を使っている異常事態ですが、「十分すぎる高齢者の医療・福祉を削減すべきだ」と叫ぶ政治家やマスコミはほとんどいません。

話は逸れましたが、日本の無駄な延命治療として10年ほど前、マスコミが胃瘻批判を展開していました。認知症疾患診療ガイドライン2017にも書いてあるように、胃瘻が寿命を延ばすエビデンスはありません。2000年代くらいに、多くの医者が「QOLは低くなりますが、寿命は伸ばします」とエビデンス(統計結果)がないのに、理論的にそうなるだろうという予想で患者や患者家族に言っていましたが、間違いだったのです。

私も胃瘻は反対です。もちろん、ALSなど胃瘻が必要な患者さんはいますが、高齢者になって、神経や筋肉の低下あるいは意欲低下で食べられなくなった人たちにまで、胃瘻をする意味はないでしょう。本人以外の希望で(日本の医療現場では家族の希望で胃瘻造設されているケースが普通でした)胃瘻にすることは論外ですし、たとえ本人の希望があっても、医療費もかかるので、極論すれば、本人の全額自己負担でない限り、胃瘻は避けるべきでしょう。

一方で、下のグラフのように、胃瘻が補助栄養として最も延命効果が高いことも私は知っています。(EN胃=胃瘻、EN鼻=経鼻経管栄養、TPN=中心静脈栄養)

中心静脈栄養は抹消栄養(普通の点滴栄養)より多くのカロリーを投入できますが、腸を通さないので、どうしても腸が薄くなっていきます。腸は人体最大の免疫器官なので、腸が薄くなると、寿命が短くなります。経鼻栄養は栄養を腸で消化吸収できるものの、粒状物質しか摂取できませんし、上部消化管に違和感を与えます。胃瘻は補助栄養としては最も理想的な投与方法です。

その胃瘻ですら自然経過と比べて延命効果があると証明されていないのですから、他の補助栄養をする理由はほとんどありません。しかし、胃瘻は拒否したのに、なぜか中心静脈より延命効果が低いはずの点滴栄養を欲する患者さんが多くいます。さらに、それを認める医者まで多くいます。

1,胃瘻は補助栄養として最も延命効果がある。2,胃瘻は自然経過より延命効果があると証明されていない。3,胃瘻より中心静脈栄養は延命効果が低く、抹消静脈栄養はさらに低い。4,胃瘻は希望しない。

この条件を全て満たすなら、演繹的に「抹消静脈栄養は希望しない」にならなければいけないのに、そうなっていないのです。この理論的に矛盾している結論を受け入れる医師は、理論的な思考ができないので医師として不適格ではないか、とさえ私は思ってしまいます。

おそらく、多くの日本人が「胃瘻は補助栄養として最も延命効果がある」や「胃瘻より中心静脈栄養は延命効果が低く、抹消静脈栄養はさらに低い」ことを知らないのでしょう。医者も患者や患者家族に伝えていません。マスコミは短絡的に胃瘻批判をするのではなく、補助栄養全体がムダであることを国民に伝えるべきでしょう。