未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

新福祉国家での雇用政策

私の提案する「一人の取りこぼしもない社会」の新しい日本でAさんがB会社を自主都合退職したと仮定します。

B会社はAさんの退職の意思表示を受け取った時点で、それが口頭であれ文書であれLINEメッセージであれ、失業対策局(仮称)に直ちに連絡する義務が生じます。その当日中に失業対策局からAさんとB会社に、それぞれメールなどで公式な連絡がきて、退職に至った理由を聞きます。

ここで不審な点があれば、失業対策局の職員がB会社の職場まで行って調査します。Aさんの退職が本当に自主都合と判定されるべきなのか、事実上の人員整理になっていないかなどが調べられます。また、パワハラ、セクハラ、マタハラなど違法行為の可能性があれば、職員が専門機関に直ちに通告します。違法とは言えないが職場環境に問題があるなら、B会社は適切な指導を受け、場合によっては指導が実践されているかの定期的な調査も受けます。

これだけなら、労働者保護の印象を受けるかもしれませんが、失業対策局はAさんにも問題がなかったか調べます。たとえば、Aさんに無断欠勤や遅刻が多かったのであれば、それが一生記録に残り、次にAさんが退職した時にも、前職で無断欠勤や遅刻があったことは事前情報として失業救済局の職員に調べられます。

Aさんが退職後、すぐに就職したのなら問題ありませんが、1ヶ月後にも次の仕事を見つけていない場合、失業救済局の職員からメールなどで連絡がきて、Aさんはそれに適切に答える義務が生じます。もし返信がこなかったり、返信がきてもAさんが困っている状況にあると分かったりすると、Aさんの個人宅に職員が伺います。Aさんが怠けて仕事を探していないのなら、職業斡旋所に紹介されます。なお、Aさんが職業斡旋所で紹介された仕事に正当な理由なく就かなかった場合、失業保険や生活保護などは減額されます。また、Aさんがうつ病になっているなら、精神科に紹介されるかもしれませんし、Aさんの仕事能力が劣っているなら、職業訓練校に紹介されたりするかもしれません。これらも拒否すれば、失業保険などが減額されます。もちろん、退職後にAさんが1年間自分探しのために世界旅行することも可能ですが、Aさんは1ヶ月に1度、それが順調に進んでいることを失業救済局の職員に連絡する義務があります。

私の提案する新しい福祉国家では、どんな企業のどんな職種でもパワハラなどが完全に許されない一方で、心身ともに健康な現役世代の人が正当な理由なく無職でいることも許されません。これにはメリットもデメリットもあるのは言うまでもありません。

次の記事に、私的なコミュニティが私的な問題を解決していた過去の時代(あるいは現在)と比較して、公的な人的支援で私的な問題を解決するメリットを書きます。