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タックスヘイブンの不正をもっと報道すべきである

本日からパラダイス文書が日本のニュースで報道されています。「ポピュリスト支持者の本当の敵であるグローバリズムの弊害の解決方法」の記事でも同様のことを述べましたが、現代世界で最悪の不正はタックスヘイブンです。戦後から現在までの日本政治家腐敗事件を全て足し合わせても、タックスヘイブンで行われている1年間の不正の足元にも及びません。タックスヘイブンを見逃していることは、戦争と並んで、現代のバカの極みです。

「不平等をめぐる戦争」(上村雅彦著、集英社新書)では、こう書かれています。

タックスヘイブンで秘匿されている個人資産は2310兆円から3520兆円といわれ、これに課税すれば年間21兆円から31兆円の税収が見込める」

パナマ文書が報道された2016年、日本でそれ以上に盛んに報道されていたのは舛添都知事の不正疑惑でした。舛添都知事の私的流用額は推定1400万円です。

これらの金額を比べたら、どちらを大きく報道すべきかは明らかでしょう。もちろん、金額だけで不正の重要度が決まるとはいいませんが、いくらなんでも桁が違いすぎます。

こんなたとえ話はどうでしょうか。100万円の新車を購入したものの、全く違う10万円くらいの中古車が届いたのに、ディーラーに電話して「購入した車と違うと思います」とクレームを言ったものの、「いえ、それで合っていますよ」と返答されると、それっきりにしました。一方、その人は近所のコンビニで買った10円の「うまい棒」が帰って袋を開けたら「チロルチョコ」になっていたと、3ヶ月間毎日、コンビニにクレームの電話を入れていました。

いくら自動車よりも「うまい棒」が大事だとしても、上のような行動をしていたら、普通、その人は精神異常を疑われます。

上で書いた21兆円から31兆円の全てが日本の税収になっていたわけではありませんが、世界における日本のGDP比6.4%(2017年IMF)から推定すれば、脱税額は毎年1兆円~2兆円程度あることになります。「いや、日本は貧富の差が激しくないし、源泉徴収が多いから、せいぜいその1割だ」としても、1000億円から2000億円です。舛添スキャンダルの1万倍の金額です。金額比がそのままニュース報道の長さの比重になるのなら、タックスヘイブンは舛添スキャンダルの1万倍から10万倍報道することになります。タックスヘイブンの不正はそれくらい桁違いなのです。

こんな事実は私が知っているくらいですから、日本のジャーナリストだって当然知っているはずです。パラダイス文書の衝撃的ニュースも一過性で終わらせることなく、徹底して追及して、タックスヘイブンの腐敗がいかに深刻かを全世界の人に知らしめてほしいです。

なお、このブログで何度も主張している通り、タックスヘイブンを潰すためには、金銭取引の完全公開が最も確実な方法だと私は考えています。それについては、他の記事を読んでもらえると幸いです。