未来社会の道しるべ

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日本の男性はなんてかわいそうなんだと西洋男性に同情される

前回の記事の続きです。

「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(山田昌弘著、光文社新書)にある下のアンケート結果を見てください。

上記の本では、「日本の少子化対策が失敗した理由は、西洋の少子化対策を模倣したからである」と繰り返し主張しています。上のデータを見るだけでも、その通りだ、と納得してもらえるのではないでしょうか。専業主婦やパートタイムであろうが(スウェーデンでは専業主婦があまりに少ないせいか統計すらないですが)フルタイムであろうが、「夫が収入を得る責任を持つべきだ」で、スウェーデンでは反対がほぼ半数なのに、日本で反対は微々たるものです。逆に賛成はスウェーデンでは圧倒的少数派の賛成が、日本だと半数を占めます。これだけ違うのですから、西洋で成功した少子化対策が、東洋で失敗するのは必然でしょう。

少子化が問題になったとき、よく聞かれる言説が「仕事をしつづけたい女性が、結婚・出産をためらっている」というものです。だから、欧米と同じように子育てと共働きを両立できるようにすればいい、保育所の整備や育児休業の充実、さらに夫の子育て参加を促進すればいい、という仮説です。日本や韓国や台湾の統計から、この仮説は完全に間違っていたことが既に明らかになっています。

重要な点なので繰り返しますが、婚外子がほぼない東洋では、少子化の根本原因は結婚減少にあるので、女性の仕事と育児の両立をいくら支援しようが、少子化対策には結びつきません。もちろん、仕事をする女性の育児負担を減らすため、保育所の整備、男性の育児参加の促進政策は必要です。だから、それらは今後も続けるべきではあることは間違いありませんが、残念ながら東洋の全ての国で、それらは少子化対策にならないと厳然と示されています。だから、少子化対策で「保育所の整備」や「男性の育児参加」という言説が出てきたら、「少子化と関係ない」とマスコミも率直に認めて、「少子化を解決したいなら、結婚を増やすべきだ」と日本人全員に知らせるべきです。

前回の記事で、少子化対策で西洋は参考に全くならないだけでなく、西洋人の助言すら全く参考にならない、と私は主張しました。少子化問題に限りませんが、東洋人は西洋を知ろうとして、よく見習っていますが、西洋人は東洋をろくに知らないくせに、東洋人に上から目線で助言してきます。西洋人の「少子化を解決したいのなら、女性が育児と両立しやすい仕事環境を整備すべきだ」の助言がいかに的外れであるかは、既に十分示していると思いますが、次にも示します。

上のスウェーデンと日本の家計維持の責任意識の統計比較を西洋人が見ると、怪訝な顔をするそうです。夫に依存するのは妻にとってリスクではないのか、離婚されたらどうするのか、自分でお金を稼がなくては自分のために自由にお金を使えないではないか、夫に従属しなければならないのではないか、などの質問が発せられます。

それに対して、著者はまず「日本では、欧米の多くの国のように、一方的に離婚はできない。夫の収入が高い場合、夫の方から離婚するためには多額の慰謝料を妻に支払う必要がある(だから収入の高い夫と結婚しておけば、万一の離婚の場合も安心である)」と答えています。

お金に関しては「日本の多くの家庭では結婚後は夫のお金も妻が管理する。妻は夫のお金を自由に使える(著者の調査では、だいたい4分の3で、妻が夫の収入を監理しています)」と答えることにしているそうです。なお、欧米では、妻が専業主婦の場合でも、一定の生活費を夫が決めて渡すのが原則です。こんなやり取りが毎回必要なくらい、西洋人は日本の結婚事情を知らないのです。

そして、日本だと多くの夫がお小遣いを増やしてもらうために、妻に頭を下げるのだ、というと、欧米人男性は、日本の男性はなんとかわいそうだなんだ、という感想を漏らすそうです。

次の記事で、日本だと女性の子育てと仕事の両立が、少子化と関係するわけがないことをさらに示します。