未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

子ども集団生活施設

日本が新福祉国家に生まれ変わる時、ぜひとも創設してほしい公的機関が、子ども避難所です。避難所といっても、家族の誰かが身体的・精神的暴力を振るっているときだけ、子どもを保護する施設ではありません。親とケンカして家を飛び出し帰りづらいといった時でも利用できる施設です。名称は「子ども集団生活施設」といったものでよく、通常、3才程度の年齢層別(小学校低学年生の施設、中学生の施設など)で子どもを収容します。

子どもがなんらかの理由で家を出たいと思ったら、以前の記事に書いた「家庭支援相談員」にまず相談し、家庭支援相談員が適切に判断して、子どもを施設に入れます。このとき、家庭支援相談員は子どもの家族ではなく、相談してきた子どもを第一に考えます。家を飛び出すことが子どもにとって有害と思える根拠がなければ、子どもが家を出たい理由をうまく説明できなくても、あるいは全く説明しなかったとしても、原則、子ども集団生活施設に入れるように手配します。親や兄弟と性格が合わないといった理由でも、子どもは大学を卒業するまで、あるいは成人するまで何年でも施設で生活できます。施設の管理人は、十分な教育を受けた国家資格保持者になります。子ども集団生活施設は、どんな子どもでも365日自由に身一つで入居できるように、子どもが施設に来るまでの交通費は公費負担とします。

なお、子ども集団生活施設は子どもを甘やかす施設ではありません。掃除は当番制で、風呂とトイレは共用です。食事も学校給食程度の予算で運営されます。しばしば炊事、洗濯などの家事も当番制で、寝る部屋も一緒になります。原則、服もジャージと防寒具程度しか支給されません。それ以上のものを要求するなら、年齢によって異なる定額の小遣いから買わなければなりません。掃除当番をさぼったり、勉強部屋で雑談したり、ケンカしたり、その他のルール違反を起こしたら、子どもはすぐに施設退去となります。

そのような窮屈な施設に入りたがる子どもなどまずいない、と思う人は恵まれた子ども時代を送った人でしょう。私なら両親のいる家より、上のような集団生活施設で子ども時代の全ての時間、生活したかったです。もっと言えば、今でも、上のような集団生活施設で暮らしても構いません。当たり前ですが、集団で生活すれば、費用が節約できますし、エネルギー消費も抑えられます。私は長年一人暮らしをしていますが、私一人のために浴槽や洗濯機や台所があるのはもったいない、多くの人で共用すればいい、といつも思っています。

なお、上記の施設は私の理想です。現実にそんな程度で退去させていたら、子ども集団生活施設の平均在所日数は3日未満になってしまうでしょう。だから、それぞれの施設で特性を持たせるべきです。「ルール違反をしても退去にならないが、厳しく叱られたり、罰を課されたりする施設」、「用意している服に予算をかけている施設」、「クリスマスや正月などのイベントを盛大に祝う施設」、「掃除に力を入れる施設」、「全ての年代の子どもを入所させる施設」などです。家庭支援相談員は、相談してきた子どもの個性に合わせた入所施設を選ばなければいけません。

子ども集団生活施設の定員は、子ども10人に1~2.5人くらい必要と推測します。私のように、子ども時代の全てを親元でなく集団生活施設で暮らしたい、と切望している人だけでも、100人中5~10人はいるのではないでしょうか。さらに、一時的に暮らしたいと考える子どもを受け入れるための部屋をいつも余分に用意しておきます。もし未成年の子どもが2000万人いたとしたら、子ども集団生活施設の定員は200万人~500万人あることになります。その運営費用は、施設に収容されている子どもたちの保護者たちから徴収する費用と公費で分担します。

人口減少で不要になった家や部屋をリフォームすれば、施設新設の初期費用は節約できます。それ以外にも費用はかかるでしょうが、全ての子どもに自由と平等などの基本的人権を保証するための値段としては、安いものだと考えます。

子どもが生まれる家庭を選べないのに、家庭の影響を強く受けて成長していくことは、誰もが知っていることです。この人生最大ともいえる不公平を少しでも是正するため、ここで提案したような施設は創設すべきです。