未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

家庭支援相談員

私の提案する新福祉国家で「一人の取りこぼしもない社会」実現のため特に提唱したいのは、家庭支援相談員の創設です。

家庭支援相談員は、日本中全ての家庭に訪問し、実態調査を行います。3世代家族であっても、一人暮らしであっても、1年に1回以上訪問して、家庭で何か問題がないか聞き取り調査します。原則として、各家庭にいる全員が一人ずつ、家庭支援相談員の調査に答えます。なんらかの事情で、被調査者が家庭現場で悩みを正直に相談できない場合、担当の家庭支援相談員に連絡をとって、別の適切な場所で相談に乗ってもらうことができます。

家庭支援相談員が小児虐待や家庭内暴力や高齢者虐待を発見したりしたら、警察や適切な機関(児童相談所や配偶者暴力相談支援センターや地域包括支援センター)に連絡します。また、被支援者が生活保護を受けられるのに拒否されていたり、その他の社会保障を受けられる権利があるのに知らなかったりしたら、適切な援助が受けられるように手配します。当然ながら、家庭支援相談員には守秘義務が課されて、得られた情報は正当な目的以外で利用されることはありません。

このように提案すると、家庭という私的な聖域まで国家が干渉すべきでない、と考える人もいるでしょう。確かに、公的機関による家庭への過干渉は抑制されるべきです。ただし、私が上のような制度を提案している理由は、公的な場だと明らかに人権侵害事件なのに、家庭では許容されている事件の被害者を救うことです。特に、家庭での影響を甚大に受ける無力な子どもを救うことが目的です。ある程度教育に携わったことのある人なら、幼稚保育と小学校と中学校と高等学校と大学の全てを合わせた教育の影響よりも、家庭での教育の影響が大きいことは、実感しているはずです。

世の中には育った家庭のせいで、死ぬまで不幸な人生を送っている人が何名もいます。そんな人たちを救う制度は現在のところ、ないか、著しく未整備です。「聖域」や「プライベート」や「自己責任」や「家族愛」といったお題目の下、少なくない家庭では基本的人権が無視されています。

家庭支援相談員のような制度がいまだ存在しないこと、さらには、そのような制度が必要という主張さえないこと自体が、私にとっては意外です。それくらい世の中は恵まれた家庭で育った人たちによって動いているのかもしれません。家庭支援相談員を切望している、あるいは切望していた社会的弱者たちは日本だけでも何百万人もいるはずです。しかし、その人たちの社会改革を訴える声は全く聞こえてきません。だから、ここで私が主張しています。

なお、家庭支援相談員制度に莫大な税金がかかるのは間違いありません。費用の問題点や、どこまで調査して、どのように支援すべきなのかについて、漠然とですが、これから二つの記事で述べておきます。