未来社会の道しるべ

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パワハラ撲滅がもたらす経済効果

パワハラの撲滅に成功すれば、社会に高い寛容性が浸透して、これまで無職だった者も働けると期待されます。生活保護費支給の約3.8兆円も減額できるでしょう(厚生労働省 2015年 生活保護費負担金事業実績報告参照)。

特に若年無業者、いわゆるニートたちの多くは労働に参加できるはずです。内閣府の報告では、30代までのニートは2015年で約75万人もいます(総務省統計局2016年労働力調査参照)。このうち50万人が平均年収300万円で働いたとしたら、GDPが1.5兆円加増されます。

パワハラの撲滅で、障がい者が働ける職場も広がるに違いありません。2013年、744万人の障がい者のうち18~64才の在宅者は332万人です(厚生労働省2013年障害者の就労支援対策の状況参照)。雇用される障がい者は増えているものの2015年で45万人です(厚生労働省2015年障害者雇用状況の集計結果参照)。障がい者は全従業員の2.0%以上雇うように法律で定められていますが、47.2%の企業は守っていません。多くの企業は障がい者を雇用するより、法定雇用率に不足する分の一人当たり5万円の罰金支払いを選択しています。

精神科病院実習の経験から、私は上記の就業可能な障がい者332万人のうち184万人を占める精神障がい者の多くは就業を希望していると知っています。なんら生産的活動をしないままだと、自身の存在価値に疑問を感じ、大抵、精神疾患はさらに悪化していきます。障がい者施設でしか働けない者も一定割合いますが、少なくとも3割程度の精神障がい者は十分な配慮さえあれば一般企業でも働けると推測します。

ニート障がい者たちが職場に受け入れられるなら、それ以上に受け入れられやすい女性や高齢者や外国人たちはもっと働けるようになるでしょう。将来の人口減少で労働力不足が深刻に懸念される日本にとって、パワハラ撲滅による就業者数増加は有効な経済政策になります。

ただし、カナダのように能力に疑問のある人たちを就業に参加させると、日本で身近に接するサービスの質は落ちるでしょう。しかし、各人がそういったサービスに対価を与えることによって、同じ社会で経済活動に加わる者が増えます。自宅で無為に生活する者に公金を支給するより、よほど有意義な支出だと捉えるべきです。また、日本全体の富を増加させるので、大局的な視野からすれば、自身の幸福度を上昇させることを知るべきです。

パワハラを社会から撲滅し、これまで労働参加していなかった多くの者たちを職場に受け入れることができれば、巡り巡って日本人一人ひとりの物質的・精神的豊かさも増していくに違いありません。まさに「情けは人の為ならず」です。