未来社会の道しるべ

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優秀な労働者を韓国や台湾にとられる日本

今回の一連の記事で「日本人がしたがらない仕事を外国人に低賃金労働させるなんて非人道的だ」なんて説教をするつもりはありません。むしろ「日本の人手不足産業を外国人労働者にしてもらった方が、日本全体の利益になるので好ましい」という見解で書いています。外国人労働者だって、もとより出稼ぎが目的のはずです。上記のような非人道的な見解を無視していいとまでは断言しませんが、雇用主と外国人労働者がどちらも納得して仕事が進んでいるのですから、現場と全く関わりのない金持ち連中がとやかく言う権利はない、とも思います。

問題なのは、雇用主と外国人労働者がうまくマッチングできていないことです。前回までの記事に書いたように、官僚や怪しいブローカーが暗躍し、外国人労働者だけでなく、雇用主や日本の納税者も搾取されています。

情けないのは、この杜撰な外国人労働者政策の実態をマスコミがほとんど報道せず、国民も関心がないことです。それが現在、未来の日本にとって、どれだけ国家的損失になるか、想像もできないのでしょうか。

2018/1/7の朝日新聞日曜版globeに、韓国もかつて外国人労働者を「実習生」として受け入れて、大失敗していた例が載せられています。韓国でも怪しいブローカーが暗躍し、仲介業者がピンハネし、追い詰められた外国人労働者たちの失踪が相次いだそうです。

そこで韓国は「国際貢献」や「技能移転」などの建前を捨て、真正面から「人手不足産業に外国人労働者を受け入れる」と認めたそうです。公的機関が前面に出たため、怪しいブローカーはいなくなり、渡航前に背負った借金で苦しめられる外国人労働者は激減しました。

現在、カンボジアでは韓国語教室が人気だそうです。その理由は上記朝日新聞の記事に出てくる韓国人教室のマネージャーの次の言葉に集約されているでしょう。

「日本で働いた経験がある学生もいるが、行くまでに6500㌦(約74万円)かかり、寮費などを引かれて手取りは月7万~8万円だったらしい。韓国なら月1500㌦(約17万円)以上は稼げる」

韓国語を十分に習得したカンボジア人は、韓国で搾取されることもなく10年間も働くことができ、帰国後も韓国への親近感を持っているそうです。一方、日本語もろくにできないまま日本に来たベトナム人たちは、ブローカーへの借金を返すため、毎日の長時間単純労働を余儀なくされ、精神をすり減らし、日本人に親切にされることもないまま帰国し、反日となっている例があると「ルポニッポン絶望工場」(出井康博著、講談社+α文庫)には書かれています。

カンボジアベトナムインドネシアの労働者が2005年と2015年でどれだけ日本、韓国、台湾で働いているかを示した図を下に載せておきます。f:id:future-reading:20180525215939j:plain

カンボジアといえば1992~1993年の日本の選挙協力を思い出して、親日国とのイメージを持っていた私は、10年あるいは20年、時代遅れだったようです。この問題の本質を日本のマスコミはもっと大きく報道し、日本人全体を啓蒙すべきです。