未来社会の道しるべ

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パワハラを漏らさず把握し、撲滅に専念する公的機関を新設すべきである

前回の記事のような問題を生むパワハラ撲滅のため、まず、パワハラの完全把握に向けて、使用者から労働者へのパワハラ報告先の告知義務を提案します。既に雇用している人たちに最低でも毎年1回、新しく雇用する人たちには採用時に、パワハラがあれば相談窓口にただちに連絡するよう、伝える義務を使用者に課します。私自身、いわゆるブラック企業で働いていましたが、パワハラの公的相談窓口が日本にあると知りませんでした。相談窓口の存在を知らなければパワハラにあっても報告の仕様がありません。パートタイマーも含めた全雇用者に相談窓口の存在が必ず伝わるように法律で定めます。雇用契約書に小さい字でパワハラ相談先を書いてあるだけでは伝わりません。見やすく分かりやすいパワハラ防止対策パンフレットを作成して、使用者は全労働者にパワハラ遭遇時の相談先を公的パンフレットと口頭で伝える義務が課されます。

当然、パワハラを相談したことで、社内で不利益を被ることは法律で禁止されます。

社内でパワハラを指摘した者と指摘された者の対立関係の発生まで防ぐことは難しいでしょうが、公的機関が可能な限り長期間介入して、パワハラ指摘者を保護するよう法律で定めます。

職場でのパワハラは学校でのいじめと酷似しています。「いじめは絶対悪である」の記事に書いたように、かつてはいじめ問題について論じると、いじめられる側にも原因があるという意見が保護者会でも平然と主張されていました。しかし、1994年に愛知県西尾市で起こったいじめ自殺事件などの反省から、「いじめは人間として絶対に許されない」との強い認識を持つべきとの声明が文部省から出されることになりました。(文部省1995年いじめの問題の解決のために当面取るべき方策等について参照)

同様に、パワハラは絶対に許されないとの強い認識を全ての人が持つべきです。パワハラの報告があった場合に、個々の行為がパワハラに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、被害者の立場で行います。パワハラと認定すれば、刑事や民事上の責任を問うだけでなく、加害者の解雇や停職などの処分を迅速に実行できるように法や行政を整備します。

パワハラを漏らさず発見して、その全てを失くすためには、対応する役人を大幅に増やす必要があるでしょう。現在、パワハラの公的相談窓口は労働局と労働基準監督署の総合労働相談コーナーになります。しかし、労働基準系、職業安定系、雇用均等系などの労働問題を全て扱う労働局の全国職員は2010年度にわずか2941人で、予算は276億円です(厚生労働省 2010年 労働基準監督業務について≪事務・事業説明資料≫参照)。こんな小さな機関が他の数ある職務を遂行しながら、日本中に蔓延するパワハラに対処することなど不可能です。前回の記事で示したように、うつ病や自殺の社会的損失、約2.7兆円の見積もりを考慮すれば、パワハラ撲滅に特化した公的機関を現在の労働局の数倍の規模で新設してもいいはずです。