未来社会の道しるべ

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いじめ防止対策推進法

前回の記事の大津中2いじめ自殺事件をうけて、いじめ防止対策推進法が成立しました。文科省による行政対策だけでなく、ついに立法政策まで進んだのです。

これまで、いじめなのか犯罪なのか曖昧な事件がありましたが、それらを包括して、いじめと定義しています。その中でも重大事案、いじめられている児童生徒の生命又は身体の安全が脅かされているような場合、ただちに警察に通報することが定められています。「子どもの悪ふざけだから」と民事不介入の原則でなにもしてくれなかった警察が出動する義務が生じました。また、「いじめを受けた児童・生徒が安心して教育を受けられるよう、いじめを行った側の児童・生徒は別の教室で授業を受けさせる」と具体的な対策を条文化しています。それまで、いじめを受けた側が登校拒否になるのをほぼ全ての学校は黙認していましたが、それは適切な処置ではなく、いじめを受けた側はそれまで通り登校させて、逆に、いじめた側を他の教室に移すべきだ、と法律で定めたのです。

いじめ防止対策推進法がその通りに実施されれば、いじめ問題は究極まで減少していくでしょう。日本国憲法戦争放棄条項は、第二次大戦で犠牲になった多くの生命の上に成立した人類究極の理想の提示だ、と誇る人がいますが、いじめ防止対策推進法は、それまでの30年間に生じたのべ100万人以上のいじめ被害者の犠牲の上に成り立った金字塔だと私は思います。新聞報道を読む限り、いじめ防止対策推進法は現場でまだ十分に活かされていないようですが、1日でも早くこの理想的な法律が日本中の学校で実施されることを期待しています。

また、いじめ防止対策推進法の理念は、日本に蔓延する類似問題に対応する指針になると私は考えています。特に、大人のいじめとも言えるパワーハラスメントについては、ほぼ同様の法律を定めていいと私は考えています。次の記事から、日本のパワハラ問題について論じていきます。