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イギリス製大学ランキングは信頼できないが、日本の大学レベルの低下は間違いない

このブログの閲覧数で上位に入る記事で、「他に読んでもらいたい記事がいくらでもあるのに」と私が思うものがいくつかあります。

恋愛における女性優位の証拠」「LGBTはよくてロリコンはダメな理由が分からない」「人類史上最悪の殺人犯は毛沢東である」などです。端的に言ってしまえば、ネトウヨが喜ぶような記事はやはり閲覧数が多いです。「フェイクニュースの対処法」に書いたように、世界中どこでも保守的な記事ほど閲覧数が多くなるようです。※

それと関連するのでしょうが、「あてにならない世界大学ランキング」も私の予想を越えて、閲覧数が多い記事になっています。「THE(Times Higher Education)などの大学ランキングはイギリスの陰謀だ。日本の大学順位が下がったと悲観していたら、中国人と同じ失敗をしてしまう」と読者に伝わっているのかもしれません。だとしたら、私の意図とはかなり違います。

THEなどの大学ランキングが信頼性に乏しいことはその記事に書いた通りなのですが、世界の中で日本の大学レベルが下がっているのは厳然とした事実です。「科学立国の危機」(豊田長康著、東洋経済新報社)という500ページを越える本を読んでもらえれば、日本の大学の国際的な地位の低下は明らかです。

この本でも、THEだと京大教員数の1年間での37パーセントの減少、エントリー大学数増加による点数への影響を指摘し、その信頼性への強い疑問が示されています。ただし、THEの曖昧な「評判」という指標のないARWU(世界大学学術ランキング)やCWUR(世界大学ランキングセンター)でも、日本の大学順位は大幅に下がっています。

なぜなら、どの大学ランキングでも、大きい影響力を持つ被引用インパクト(CNCI)のランキングで、なんと日本は2014年から2016年で78位です。質ではなく、量で勝負といきたいところですが、2014年から2016年で人口あたりの論文数でも、GDPあたりの論文数でも世界40位程度で、台湾、韓国、香港、シンガポールにダブルスコアくらいの差をつけられて、負けています。

もっとも、国際比較して日本の研究レベルが低下していることは、研究者なら誰でも知っています。もし知らなかったら、その人はまともな研究者ではないと断定できます。

上記の本では、大学レベルや研究レベルの低下により、日本の経済発展も低下しているとデータ分析しています。しかし、その逆もあるでしょう。日本の経済が低迷しているから、大学レベルや研究レベルも低迷している、という関係です。

だいたい、大学レベルや研究レベルに限らず、この30年間で、世界の中で日本の順位が低下していないものがあるでしょうか。順位が上がったとしたら、高齢者率くらいでしょう。高齢者率で世界のトップランナーの日本があらゆる面で斜陽国家なのは、日本人なら誰でも知っています。

「だから、日本の大学レベルの低下も止むを得ない」という結論になりがちですが、それは間違いだ、と上記の本を読めば分かります。

実は単純に人件費を増やすだけで、大学レベルと研究力をつけられることが示されています。

次の記事に続きます。

 

※一方で、「ネットは社会を分断しないが、ネットの議論は分断しがちな理由」という科学的根拠があることも知っています。