育児休暇が増えれば増えるほど世の中がよくなるわけではありません。
朝日新聞を読んでいると、こんな当たり前のことを理解していない奴が朝日新聞の記者をしているんじゃないか、と思ってしまったので、書いておきます。
たとえば、「育児休暇は男性でも、一人でも子どもが生きている限り、その子が18才になるまで、無条件で取れます。その間、雇い主は給与の全額を払い続ける義務が生じます」という制度だったら、世の中が回らなくなることくらい、猿でも分かるでしょう。
子どものいる働き盛りの男性が、18年間かそれ以上も、社会で働かなくなったら、一体、他に誰が働くのでしょうか。男性ですら、それほど恵まれた育児休暇が与えられるなら、子どものいる女性にも、それと同等かそれ以上の育児休暇が与えられるでしょうから、子どものいる20代~50代の女性すら、働きません。そうなると、体力も知力も落ちた高齢者と、結婚もできなかった若い男女たちに働かせて、世の中を回すことになります。非効率すぎます。そんな世の中を望む人など、まずいないでしょう。
結婚できなかった女性が産休や育休をとる女性に対して裏で愚痴をこぼしている現場に、私は何回か遭遇しています。「ウチは今人手が足りないから、申し訳ないけど、働き始めて1年間は産休とらないでね、と女性の面接担当者に言われて、同意したから雇われたのに、働き始めて3ヶ月後には産休とった。出産時から逆算しても、あの人、自分の妊娠を面接時から知っていたよ」といった愚痴です。
現実問題として、その理由がなんであれ、人が仕事を休むと、普通なら仕事が回らなくなり、他の人がその穴埋めをしなければなりません。だから、その理由がなんであれ、休む時に「申し訳ない」あるいは「ありがとう」という態度を示すべきです。たとえ、出産・育児であっても、「休んで当然」という態度は社会で慎むべきでしょう。
出産はともかくも、祖父母がいるなどの理由で、育児休暇を必要としない人は、男性はもちろん、女性にもいます。私の知人のカナダ人女性が「その時の(女の)社長が出産した次の日から職場に赤ちゃん連れて働き出した。私はもう社長に不平を言えないなと思ったわよ」と笑いながら言っていました。そんな女社長がいれば、女性社員ですら育休をとりにくくなる上、全ての社員に猛烈に働くような圧力にもなるので、好ましくないなどの意見はあるでしょう。ただし、働くと社会の役に立ち、働かないと社会の役に立たないので、仕事を休むことは、一般に、社会にとっては有害です。育児休暇をとることが、社会に全面的に有益なわけがない、と認識はすべきです。
他の私の経験談になりますが、年配の看護師が「この病院ができた頃は、新人の若い看護師ばかりで、一気に産休とられたら困るから、師長が妊娠してもいい看護師を決めたりしていた」と笑いながら話していました。「妊娠時期を上司が指図するなど公私混同と人権侵害の最たるものだ」という意見は尊重されるべきですが、そういったことをしないと、社会が回らない現実は、今も存在しているはずです。
上の愚痴の例にもあるように、日本の生涯未婚率がここまで高くなった以上、「出産・育児はお互い様」ではありません。「未婚税と少子税と子ども補助金」に書いたように、私は出産も育児もしていない夫婦には高税を課すべきと考えていますが、出産や育児もできなかった(≒結婚できなかった)者は、社会的弱者が圧倒的に多いです。ありていにいえば、社会的地位が低い人、社会であまり重要でない仕事をしている人が多いです。だとしたら、社会全体の公平さと効率のため、育児もできる勝ち組男性に特別休暇を与えるより、育児もできなかった負け組男性こそ有給の特別休暇を与えるべきではないでしょうか。