「資本主義の矛盾は金銭取引を完全公開しないと解決しない」の記事にも同様の意見を述べましたが、2000年以上の貨幣社会に大革命を起こすアイデアが金銭取引の完全ネット公開です。金銭取引の完全ネット公開は、私が提案した政策の中で、科学的にはすぐにも実行可能であり、世界をより公平にさせる効果が最も高いものだと思います。金銭取引の完全ネット公開を実現させる大きな一歩となる政策が「国家による全ての通貨のデジタル化」です。
このデジタル通貨移行を世界で初めて実現しそうな国が中国であると知って、複雑な気持ちです。デジタル通貨移行だけでは、政府が国民の金銭取引を全て把握できるのみで、国民が政府の金銭取引を把握できるとは限りません。いえ、デジタル通貨に移行した国の政治家は、まず国民管理に利用するだけで、政府の金銭取引公開などしないはずです。まして、庶民感覚からずれた政治家の金銭取引を国民に公開する気などないでしょう。だから、デジタル通貨移行は、日本の役人よりも遥かに恵まれた中国の役人に、さらに上の天国を提供することになるでしょう。私が提案した「金銭取引の完全ネット公開」の似た政策が中国のような非民主的な社会で始めて採用される上に、その政策により不公平な社会が実現してしまうとなると考えると、落胆してしまいます。
一方で、期待もしています。デジタル通貨移行により、政治家がどうあがこうと、中国がより公平な社会になる側面も出てくるからです。全ての金銭取引を政府が管理するので、脱税はしにくくなります。賄賂は中国社会で日本以上に蔓延していますが、激減するでしょう。莫大な金が動く違法取引も難しくなります。下の国民が清らかになっていけば、必然的に上の政治家も清らかにならざるを得ない効果も期待できます。
「金銭取引の完全ネット公開」をせずに、「国家による全ての通貨のデジタル化」をすれば、効果よりも副作用の方が強くなるだけだとも思いますが、一方で社会全体としてはやはりメリットが大きくなるかもしれないとも思います。「日進月歩の中国と10年1日の日本」に書いたように中国は「信用スコア」を採用して社会全体のマナーを向上させ、さらに「いつの間に日本はこんな残念な国になったのか」に書いたように中国は「社会中にカメラを大量設置」して、犯罪予防効果と犯罪検挙効果を高めています。どちらも、いずれどの国でも採用され、効果的に運営されていく社会システムだと私は確信します。
多くの民主主義先進国は信用スコアや街中カメラ設置を「全体主義で個人のプライバシーを無視している」「さすが管理好きな共産党政治だ」「まるでパノプティコンだ」と中国を見下しているようです。中国が本当にデジタル通貨移行を世界で最初に実現させたとしても、やはり先進国は同様に中国の政策を見下すと私は予想します。しかし、デジタル通貨移行はいずれ世界中の全ての国で実現されることは、普通の知性の持主なら分かるはずです。中国がデジタル通貨移行を世界で最初に実現させるかもしれないという情報に、世界中の先進国の人たちはもっと危機感を持つべきではないでしょうか。