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21世紀に世界の中心に出現した国はなぜ共産主義なのか

21世紀の最初の20年間、世界で最も存在感を増した国は中国でした。隣国の日本は言うに及ばず、世界中のほとんどの国で、中国製品なしで社会生活は成り立たなくなりました。経済的な影響力だけでなく、政治的な影響力も否応なく大きくなっています。アフリカなどでは、アメリカではなく中国が世界の中心の国だと感じているかもしれません。

前回の記事に書いたように、他の先進国が停滞している間に、世界で初めて信用スコアを普及させ、街中に監視カメラを設置させ、ついにはデジタル通貨に移行しそうになっています。天変地異が起こらない限り、あるいは起こったとしても、あと30年くらいアメリカに次いで中国が世界の中心に居続けるでしょう。

それにしても、そんな現代の重要な国がどうして一党独裁共産主義国家なのでしょうか。なぜ中国は自由と平等を尊重する民主主義社会にならなかったのでしょうか。あるいは、中国が民主主義であれば、上記のような信用スコア採用や街中のカメラ設置は、世論の反対により今も実現していなかったのでしょうか。

そんなことを考えると、1945年~1949年の国共内戦で、なぜ共産党が勝ったのかがどうしても気になります。だから、「社会主義への挑戦 1945-1971」(久保亨著、岩波新書)を読みましたが、2011年に出版されたにもかかわらず、私もよく知っている「国民党が負けた理由」ばかり書いていました。しかし、「真説毛沢東」(ユン・チアン、ジョン・ハリディ著、講談社+α文庫)を読んだ後だったので、「確かに国民党は腐敗していたが、国共内戦以前で比較しても、共産党の腐敗は国民党よりひどかっただろう」と思わずにはいられませんでした。

共産党が国民党に勝った理由を一言で述べるなら、「人類史上最悪の殺人犯は毛沢東である」にも書いたように、国民党の腐敗は中国の民衆を含めて世界中に広く知られていたが、共産党の腐敗は中国の民衆のみならず世界中にほとんど知られてしなかったからになります。つまりは、中国共産党(やソ連)のプロパガンダに中国の民衆、あるいは世界の民衆は騙されたことになります。

「真説毛沢東」によると、その騙された多くの人の中でも、取り分け影響力の大きかった人物はマーシャルだそうです。欧州復興プランを立て、ノーベル平和賞受賞者のジョージ・マーシャルです。中国共産党の本質を見抜くことができなかったマーシャルは、1946年に蒋介石共産党の攻撃を止めるよう命令を出します。中国東北部で全滅寸前だった共産党軍は、これにより首の皮一枚で生き残り、3年後の中国統一を実現させています。

1917年のくだらない、歴史的には些末な事件であるコルニーロフの反乱がなければ、ロシアのボルシェビキ革命(10月革命)が実現しなかったのは多くの人が認めるところです。同様に、1946年のマーシャルの国民党への停戦命令がなければ、現在の中国は共産党政権でなかったようです。これ以外にも20世紀前半の中国の歴史をよく知れば、現在の中国が共産主義国家にならなかった分岐点が無数にあること、むしろ偶然に共産主義国家になったことは知っておくべきかもしれません。