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酒鬼薔薇事件の犯人の母は犯行に気づいていたのではないか

犯人も犯人の両親も「犯人逮捕は両親にとって寝耳に水だった」と自著で述べています。犯人は「母が犯行に全く気づいていなかったので、おかしかった」と警察に言って、その発言を知った母はショックを受けたそうです。

一方、犯人と犯人の両親以外が書いた本を読むと、必ず「母は犯行に気づいていたではないか」という疑惑が書かれています。それを最も強く主張している人物は、被害者である土師淳くんの父です。そう疑う点は「淳」(土師守著、新潮文庫)に書かれています。

・土師淳くんの母と大して仲のよくなかった犯人の母が犯行後、それまで一度も訪れたことのない土師家に足しげく訪れている。

・犯人の母は土師家を訪れた時、「警察は? 何人いるの?」など警察の様子をうかがう質問をしている。

・犯行前の数週間、惇くんが犯人の家を何度も訪れたことはほぼ間違いないのに、淳くんが行方不明になった日に淳くんの母が犯人の母に電話すると「最近、惇くんはずっと来たことがない」と答えている。

これらの疑惑を間違いなく知っている犯人の母は「『少年A』この子を生んで」(「少年A」の父母著、文春文庫)で、上記の疑問に一切答えていません。「自分の子が犯人だなんて夢にも思っていなかった」「今でも信じたくない気持ちがある」と何度も書くばかりです。「『少年A』この子を生んで」の前書きで、「土師氏の(逮捕前から息子の犯行を知っていたのではないかの)不信感に対する『答え』もこの(本の)中には含まれている」と書いていますが、大嘘です。

「『少年A』14歳の肖像」(高山文彦著、新潮文庫)には、逮捕1週間前に、普段は儀礼的な挨拶などぬきでいきなり要件をハキハキたずねてくる犯人の母が「ああ、こんばんは」と珍しく挨拶の言葉を、これまで聞いたこともない気の抜けた声で口にしたそうです。

隣家のあるじは逮捕の前日、犯人と犯人の母が表に出て、深刻な表情で話しているのを目撃しています。

これらの疑惑への答えも、「『少年A』この子を生んで」には全く書かれていません。

以上を総合して考えると、犯人の両親、少なくとも母は犯人逮捕前に、犯行に気づいていた可能性が高いでしょう。ただし、そうでない可能性もあります。

私が最も可能性が高いと考えているのは、「犯人の母は犯人逮捕前から犯行に気づいていたが、その事実から意識的にも無意識的にも目を背けて、ほぼ本気で『息子が犯人だったなんて夢にも思わなかった』と言っている」になります。

犯人の母は「息子が犯人かもしれない」と疑っていた過去を完全に記憶から消したわけでもなく、「嘘をついている」という自覚が全くないわけでもないですが、よほどのことがない限り、犯人の母は嘘をつき通すと予想します。

私は犯人も犯人の母も大なり小なり解離性障害だと推測しています。解離とは、知覚、記憶、意識などを一つにまとめることができない症状です。「『少年A』14歳の肖像」によると、犯人は小学校の修学旅行の記憶が抜けているようですし、犯人の母も「『少年A』この子を生んで」で都合が悪いところになると、汚職事件を追及されている国会議員のように、「記憶がはっきりしない」を連発しています。

犯人の母のように、自分で抱えられない大きな問題に遭遇した時、記憶が飛んでしまう人は少なくありません。これと正反対の思考回路の持主、大きなストレスに遭遇した時ほど、記憶に残ってしまう人(私もその一人です)からすると、解離は詐病としか考えられないでしょう。

ただし、解離のような症状は、どんな人にも起こり得ます。恥ずかしい話ですが、私は独り言が非常に多いです。家で一人でいる時が最も多いですが、そうでない時もほぼ無意識に出てしまうことがあります。ストレスが多い時ほど、私の独り言は悪化します。これも一つの解離とみなせるでしょう。

私の内向的な性格も、ストレスからの現実逃避、ストレスの原因を自分以外のものに求めようとする解離症状とみなせるかもしれません。精神病理でよく解釈されるように、解離は思考の防御反応なのでしょう。

話を戻します。まとめると、「情報を総合して考えると、犯人の母は犯人逮捕前から犯行に気づいていた可能性が高い」「そうなると犯人の母は嘘をついていことになるが、警察にも裁判でも真顔で嘘をつきとおせるのは解離症状によるものだからだろう」になります。

なお、「解離症状だから犯人の母が嘘をつくのは罪でない」と言うつもりは全くありません。いつか記事にするつもりですが、私は刑法39条(心神喪失者を無罪、心神耗弱者を減刑する法律)に反対です。精神疾患と性格はどちらも脳の働きであり、明確に分離できません。たとえ解離症状であったとしても、裁判所でも平気で嘘をつける性格(人格障害とは性格のことです。人格障害統合失調症双極性障害などと異なり、薬で治りません。人格障害精神疾患かどうかは明確でありません)は、明らかに反社会的です。

そもそも「母が犯行を知っていたのか」になぜこれだけ注目されているかといえば、これがyesなら「母の育て方が悪かったのか」「最後まで息子を愛した母は被害者ではないのか」と議論するのがバカらしくなるほど、母の人間性の悪さが確定するからです。「犯人だけでなく、犯人の母もサイコパス反社会性人格障害)ではないか」という議論も決着します。