未来社会の道しるべ

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拉致問題が解決しないなら核ミサイルを打たれた方がマシだ

前回の記事の続きです。

「戦争の大問題」(丹羽宇一郎著、東洋経済新報社)を読んで、私は初めて認識したことですが、2002年9月、小泉純一郎金正日が調印した日朝平壌宣言では、北朝鮮がNPT(核不拡散条約)を遵守し、IAEA国際原子力機関)による査察を受けて核開発をやめ、その見返りに日本は北朝鮮と国交を樹立し、経済協力を行うことを定めていました。

アメリカもロシアも韓国も中国も国際機関もできなかった北朝鮮の核開発を日本がほぼ独力で阻止したのです。当時、ニュースでも大きく報道され、もちろん私も覚えていますが、そこまでの偉業だったとまでは把握していなかったように思います。

「信じがたい北朝鮮の譲歩を日本が得た、と欧米の新聞は称賛し、その後、いくつかの国際会議で小泉首相は満場の拍手を浴び、英雄扱いされた」

「しかし、日本国内では北朝鮮拉致事件を認め謝ったことで、拉致被害者家族への同情と北朝鮮への怒りが高まり、国交樹立、経済協力どこではなくなった。メディアもそろってこの動きに同調した」

世界の外交史上、ここまで愚劣な失敗があったら、教えてください。

この時、北朝鮮が日本に秋波を送った理由は、予想できます。冷戦結後、ロシアと中国は経済発展のために韓国と国交を結び、北朝鮮を事実上見捨てました。日本でいえば、日米同盟をアメリカから一方的に破棄されたと同等の衝撃か、あるいはそれ以上の衝撃だったはずです。だから、それ以後、核開発をチラつかせて、アメリカや韓国の経済援助などを引き出す計画でしたが、2001年にブッシュ大統領が選ばれてからは、その計画も頓挫しました。そこで目をつけたのが日本だったのでしょう。北朝鮮としては、起死回生の外交革命だったのかもしれません。

なお、平壌宣言調印後、日本が国交を結び、経済援助をしても、北朝鮮が本当に核開発を放棄したかは不明です。それ以前のアメリカとの交渉期間と同様、経済援助だけ受けて、核開発は放棄しないことが北朝鮮に最もメリットがあるので、あらゆる手段を使って、北朝鮮はその方向に持っていこうとしたに違いありません。その可能性を考慮しても、「六者協議は無意味であった」にも書いた通り、2001年のブッシュ政権誕生まで北朝鮮は内部的にはともかく、外部的には核開発を中止する姿勢を見せていました。この時の平壌宣言は、その動きを再開させる絶好の機会でした。今から考えれば、またとない、最後の機会でした。もし北朝鮮の核開発を未来永劫に中止させられるなら、日本世論や韓国世論を無視して、日本は韓国との国交を一時中断するくらいの価値はあったと私は考えます。

しかし、拉致事件という些事に日本がこだわったので、失敗します。北朝鮮拉致事件を謝ったのに、謝られた日本がなぜか逆ギレして、核開発中止も国交樹立もオジャンになりました。

これがおかしいことは正常な思考力のある人なら、日本人であっても、全員分かるはずです。道徳的に考えても、謝られたのに、怒るのは不誠実です。それはまだ許すとしても、わずか17名程度の拉致事件と各ミサイルで犠牲になる何百万あるいは何千万の人命を比較して、どちらが重要かわからない日本人が一人でもいるのでしょうか。

拉致問題に関して、日本、あるいは日本人は正気を失っているとしか思えません。「六者協議は無意味であった」にも書いた通り、韓国では日本の何十倍も拉致被害者がいますが、韓国は拉致事件について日本の何十分の1程度しか気にしていません。少なくとも、北朝鮮の核開発問題より重視するなんて、あり得ません。そんなことをするのは、日本だけです。

マスコミ報道するエリートたちがそれに気づかないはずはないのですが、「拉致事件は大した問題ではない。わずか17名なら、日本で1年間に失踪する人の1%未満ではないか」という事実を言う報道人がなぜ一人もいないのでしょうか。

全く無関係で、絶対に関心もなく、内心でバカにしていて、解決する気など皆無のトランプ大統領にまで日米首脳会談で「拉致問題の解決」を誓わせるなど、狂気の沙汰としか思えません。現在も世界中から、未来には日本人自身からも、嘲笑されることは、ここで私が断言しておきます。

世界有数の経済大国の日本がここまで狂った外交を行うことは、さすがに外国人の誰も信じられないようです。上記の本によると、平壌宣言が不履行になったとき、何人ものアメリカ人が軍事評論家の田岡俊次に「拉致問題に騒ぐ人々の意図は何か」と尋ねられたそうです。「怒りと同情の感情だけで特に意図はない」と田岡が言っても、誰も納得してくれません。どうもアメリカは「北朝鮮核武装を理由に、日本も核武装しようとしているのではないか」と本気で疑っているようでした。

実際、そう思われても仕方ない側面が、拉致問題にはあります。「(拉致被害者を)救う会」は時には暴力団新興宗教関係者も参加する列記とした右翼団体です。救う会には、日本会議のメンバーも多くいます。こんなことはマスコミ関係者なら全員基本知識として持っているはずです。しかし、公明党創価学会の党であることと同様、いえ、それ以上に、マスコミは口を閉ざしています。

拉致問題よりも重要な問題は、日本にも、北朝鮮にも、いくらでもある」ことは正常な判断能力があれば、誰にでも分かります。朝日新聞毎日新聞は言うに及ばず、読売新聞や産経新聞だって、「いくらなんでも拉致問題にここまでこだわるのはバカらしすぎる。日本の未来のためにならない」と気づいている記者は確実にいます。なぜ、誰もそれを言わないのでしょうか。

私にとって20年以上続く日本の謎の一つです。