前回までの記事の続きです。
「戦争の大問題」(丹羽宇一郎著、東洋経済新報社)によると、尖閣諸島で日中が戦争すれば、日本がすぐに負けます。
核兵器を使えば日本が負けることは当たり前ですが、さすがに中国はこんな無人島のために、そこまでしないでしょう。核兵器を使わないなら、戦争の常識として、制空権が勝敗を決めます。最新鋭の第4世代戦闘機だけを比べても、中国は700機で日本は290機です。戦力2乗の法則に従って計算すれば、この量的な3.5倍の差は、実践だと2乗の12倍の差となりえます。尖閣諸島は日本が実効支配していますが、中国が本気で戦えば、まず日本は負けるそうです。
丹羽は元中国大使で、在任中、弱腰と日本で散々に批判されていました。「尖閣諸島の戦争で日本が負ける」と丹羽が予想しても、信じない人も多いかもしれません。私も丹羽の本の他に「日本が負ける根拠」はありません。
ただし、丹羽が言うように、「尖閣諸島で日中が争っても、アメリカが日本のために戦争することは絶対ない」は事実と考えます。日米安保条約でも、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)でも、尖閣諸島のために、アメリカが日本を防衛する義務があるとは考えにくいからです。それ以上に間違いないことは、アメリカ人が自らの命を使って、こんな無人島を守るメリットがほぼないことです。日本に感謝されるメリットはあるかもしれませんが、そんなものは中国と(核)戦争するデメリットと比べると、誰が考えても、物の数に入りません。
丹羽の予想通りなら、中国が尖閣諸島を本気で占領に来たら、1日も立たずに戦争は終わり、制圧するでしょう。日本人の死者は多くて100人ではないでしょうか。もちろん、たった100人でも、日本人の反中感情はかつてないほど高まるに違いありません。
そうなると、どうなるでしょうか。
「戦争は勝っても損をする」に書いたように、「満州だって、朝鮮だって、中国沿岸部の主要都市だって、占領しても日本の国益にならなかった。まして、そのために大国アメリカと戦争するなんて、バカげた判断だった。尖閣諸島ごときで、日本が中国と戦争するなんて、愚の骨頂だ」という丹羽の意見がますます言えない社会になることは確実でしょう。
「こんな小さい諸島のために、日本が毎年何億円もの国費を浪費して、巡視船やジェット機を運航させるなんて、もう止めよう。尖閣なんて中国に売るか、譲って、その分、日本への感謝を表明してもらった方が遥かにマシだ。中国は共産党の一党支配国家だから、メディアで日本への感謝を表明させられるはずだ」と日本の知識人たちが公言できるうちに、尖閣問題は解決すべきでしょう。