未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

世界史上の全ての国はなぜ外交下手なのか

トランプ大統領候補やイギリスのEU離脱など、主に先進民主主義国で右翼と排外主義の台頭が冷戦終結後から30年間ほど続いています。

この理由は、いろいろあるでしょう。

まず、第二次世界大戦後、先進国は大きな戦争を経験していないことです。第一次世界大戦第二次世界大戦、あるいは日本の源平合戦南北朝時代、戦国時代、あるいは中国の三国時代五胡十六国時代黄巣の乱、紅巾の乱、李自成の乱などの大きな戦争があった後、統治者も民衆も「戦争だけは止めよう」としばらくは考えます。しかし、それらを痛感した世代が引退すると、再びタカ派が台頭してくるのは歴史が証明していると言えるのかもしれません。

世界史上で常に排外主義がはびこりやすい他の大きな理由は、国の統治者は、国内だけの支持を得ていればいいからでしょう。民主主義国家の選挙だと国内の有権者だけから選ばれるので、統治者は国内の支持だけを得ていればいいのは必然です。また、ロシア、北朝鮮、中国といった一党独裁国家でも、国内の支持だけで十分なようです。もちろん、海外の支持があれば、国内の支持も高まりやすい側面はあるでしょうが、あくまで間接的です。海外の支持があっても、国内の支持が高まらなければ、統治者は大した関心を持ちませんし、海外の支持がなくても、国内の支持が高まるなら、統治者は「有権者の声を反映する」などと理屈をつけて、積極的に排外主義に走ります。

日本の政治家を見ていると、選挙(政治家としての地位保全)のことばかり気にしていて、衆愚政治と私が失望することが少なくないのですが、実は独裁国家も国内ばかり気にしている点では同じようです。

「マンガ金正日入門」(李友情著、飛鳥新社)を読んで、私が一番驚いたことは金正日が自身の権力確保に、人脈も知力も労力も金も、全て注いでいることです。独裁者の息子として、地位が安泰していると思っていましたが、そんなことはありませんでした。正直にいえば、「おそらく、私が金正日でも、同じことをしているだろう」と考えてしまいました。なぜなら、独裁国家では、権力の転落は、地獄への転落を意味するからです。権力闘争に少し負けただけで、金正男暗殺事件のような結末を迎えてしまいます。

北朝鮮の権力者にとっては、自身の権力確保が全てです。民衆の暮らしは、権力確保のために間接的に影響していますが、直接的にはどうでもいい問題です。まして、海外での評判など、伸びすぎた鼻毛よりも関心はないでしょう。

世界史上、外交上手な国は、数えるほどでしょう。エリザベス期からヴィクトリア期までのイギリス、ビスマルク時代のドイツ、19世紀から20世紀のタイくらいしか私は浮かびません。日本が外交上手だった時代は一度もなく、「拉致問題が解決しないなら核ミサイルを打たれた方がマシだ」に書いたように、拉致問題は外交以前に狂気の沙汰の失敗です。ただし、アメリカも誕生から現在まで外交上手とは言えないと思います。

過去から現在まで、世界中の統治者は、国内で勝ち上がってきた者で、国外の支持はほぼ無関係です。この構造が変わらない限り、排外主義もなくならないように考えます。現在の世界で最大の不平等は、生まれる国も親も選べないことです。生まれた国による不平等をなくすためには、統治者の決め方も変えざるを得ないのかもしれません。