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日本の刑事裁判では弁護人も被告の敵になる

日本の刑事裁判では99%が検察側の勝利に終わります。負けがほぼ確定しているため、刑事裁判の弁護人は勝つために全力を尽くす気が削がれてしまいます。また、国選弁護人の給与は他の弁護士の仕事と比べて各段に安くなっているので、優秀な弁護士の多くが刑事弁護を避けるようになります。結果、弁護士の質が低下し、さらに刑事裁判で無罪になる確率が減る、という悪循環に陥っています。

アメリカ人のみた日本の検察制度」(デイビッド・T・ジョンソン著、シュプリンガー・フェアラーク東京)の調査によると、「容疑者および被告人に対して黙秘権の使用を積極的に勧めたことは一度もない」と答える弁護士が60%もいるそうです。この「一度もない」という点を著者は強調したい、と書いています。

それでも容疑者の味方になってくれるはずの弁護人なので、本来であれば、容疑者は弁護士と面会する権利がいつでもあります。しかし、検察側は拘留中の容疑者の弁護士との接見の時間および場所を指定できます。これから批判していく犯罪本でも書かれていますが、「弁護士に会いたいと言っても、国選弁護人はここに来るまで時間がかかる。いつでも会えるわけではない」と検察官に言われたりするそうです。

ここで、上記の本の著者が傍聴した刑事裁判の一例をあげます。

20代初めの男性が8時間のうちに合計3回も知り合いの女性を強姦した、と裁判にかけられていました。この被告人は性行為を認めたものの、それは合意の上であったと主張します。彼の主張を裏付けるため、弁護人は次のような質問ができたはずでした。

「なぜ被害者はそれほど親しくもない知り合いの被告を夜中の2時に、自分のアパートに、しかも寝室まで入れたのか」

「なぜ被害者は隣の部屋に聞こえるように大声で叫ばなかったのか」

「なぜ被害者は寝入った被告人に宛てて台所の黒板に、アパートを出た理由や行き先を書き置いて、しかも最後に『バイバイ』と言葉をつけ加えたのか」

このように素人でも簡単に思いつく被害者への質問を、弁護人は一切しませんでした。弁護人は被害者に2、3おざなりの質問をした後、被告人を証言台に立たせて、「いったい君は誰を騙そうとしているのかね!」と𠮟りつけたそうです。さらに「君はその説明を皆が信じていると思うのか。私にはとてもそうは思えないね。君は裁判官がこれで納得すると思うのか。ええっ。それはとんでもないことだ。せめて裁判官にはもっとましな話をしたまえ」と続けたそうです。

まるで検察官の言葉です。この弁護人を被告人の味方と考えるには、無理があるでしょう。結局、この被告は婦女暴行罪で有罪となり、3年6ヶ月の懲役刑が言い渡されます。

上記本の著者は「もしこの裁判がアメリカで起こったら、『弁護人の支援無効』の理由で審理無効または破棄となるだろう」と書いています。

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