前回の記事の続きです。
第二次世界大戦の失敗を例に、「日本は撤退戦が苦手だ」という評価があります。しかし、日本に限らず、撤退戦はほぼ全ての国や組織にとって苦手でしょう。「天才経営者などいない」で「どの時代、どの社会であっても、『名経営者だったから企業が成長したのではなく、企業が成長したから名経営者になれた』が一番実態に近いと私は考えています。さらに書けば、企業が成長したのも、ほとんどは時流に乗ったから、その企業の従業員全体の能力が高かったから、あるいは、単に運がよかったからで、経営者の能力が高いとは限らないと私は考えています」と書きました。この見解につけ加えます。
GEのCEOを10年以上務めたウェルチやイメルトが頭脳明晰であったことは誰もが認めています。イメルトのパワーポイントを使ったプレゼンテーションはほぼ毎回、多くの者を感銘させたのも事実です。しかし、GE全体でトップに盲従する文化を維持し、社会全体よりも自社の利益を重視し、会計不正を何十年も続けさせた時点で、ウェルチやイメルトの個人的な長所も吹っ飛び、経営者としては落第、失格となるはずです。
「天才経営者などいない」では、「パナソニックの松下幸之助、ダイエーの中内㓛などは、典型的な独裁者タイプで、間違っても『将の器』などなかったのですが、日本の高度経済成長の時流に乗ったので、経営的には大成功してしまい、『名経営者』と崇める人が今もいます。ソニーの盛田昭夫も日本絶頂期の1990年頃に世界中から『名経営者』と賞賛されましたが、現在の価値観でいえば、相当に保守的であることは、少し調べれば分かるはずです」とも書きました。
会社を劇的に成長させた経営者は「名経営者」と称えるべきでない、と私は考えます。上記の松下幸之助や中内㓛など、明らかに尊敬すべきでない人物まで尊敬させてしまう弊害が大きいからです。
むしろ、会社を鮮やかに縮小させた人こそ、名経営者と称えるべきなのではないでしょうか。しかし、会社の鮮やかな縮小を達成できた話は、私の記憶にありません。会社を鮮やかに縮小させた名経営者の本があれば、下のコメント欄に書いてくれると助かります。