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韓国が日本を追い抜いた事実はニュースにもならない

韓国の大衆文化の本を3冊ほど読みました。「K-POP」(金成玟著、岩波新書)、「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」(菅野朋子著、文春新書)、「韓国カルチャー」(伊東順子著、集英社新書)です。まず驚いたのが、どの本も「韓国のポップカルチャーは日本を追い越した」ことを当たり前の事実としていることです。それについて「まさか韓国に抜かれる日が来るとは」「どうして日本は負けたのか」といった嘆きはありません。菅野朋子や伊東順子は、むしろ「そうなることは何年も前から分かっていた。今更驚くことでもない」といった姿勢で書いています。

パラサイト、BTSイカゲームなど、映画や音楽やテレビドラマで「韓国のポップカルチャーは日本のそれよりも世界全体で遥かに人気がある」ことは事実として知っている日本人も増えてきているでしょう。韓流ブームを完全にスルーしてきたせいもあり、私がその事実に気づいてきたのは2018年頃です。ニューヨークタイムズが2013年に「G-DRAGONが世界から受け入れて芸術として発していたものはこれから異なる方向に進み、世界がG-DRAGONから学ぶことになるだろう」とまで評したG-DRAGONを知ったのも、2022年です。なお、イギリスのガーディアン(知らない人もいると思いますが、調査報道で世界で最も評価されている新聞)は2014年に「G-DRAGONはディプロ、バウアーなどのトップミュージシャンたちがコラボレーション相手として好む最先端のミュージシャンであると同時に、イタリア版『ヴォーグ』の表紙モデルであり、毎年パリ・ファッションウィークの最前列に招待される世界的なファッションリーダーである」と報道したそうです。G-DRAGONはバンドBIGBANGのメンバーであり、元はただのラッパーです。

このところ「一人当たりのGDPで日本は韓国に抜かれた」という言葉をよく耳にするようになりました。まだ新聞で見た記憶はないですし、wikipediaの「各国の一人当たり名目GDPリスト」のIMF2022年のデータでは日本は韓国より上位にいます。とはいえ、データによっては、そんな数字が出ているのも事実でしょうし、IMFのデータでも日本がいずれ抜かれることは、知性の高い日本人なら誰もが知っていることです。

韓国が日本を追い抜いた理由の一つは※、韓国人が日本人より優秀だったからだと私は考えています。韓国人は日本人より勤勉で、努力家で、教養が高く、自由と平等の価値を尊重します。日本人ほど保守的でもなく、変化を柔軟に取り入れ、一度起こした変化を修正するスピードも日本とは段違いです。新型コロナ政策で、韓国は日本以上に自粛していましたが、今から半年ほど前に韓国はコロナ流行中にもかかわらず、コロナ自粛を解除していきました。現在の日本のコロナ政策を半年以上早く実行しているわけですが、日本はいまだ韓国ほどコロナ自粛を解除する勇気を持てていません。

韓国が日本より豊かになる」に書いたように、韓国が日本を経済面でも文化面でも追い抜くことは私も10年以上前から予想していました。ただし、そこの記事の後半では「そうとも限らない」と書いているので、心のどこかで「韓国が日本を本当に抜くのだろうか」「抜かないでほしい」と考えていたのかもしれません。上記の本「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」の「あとがき」には、こんな言葉があります。

 

「変化」はなにもエンタメ産業に限らない。韓国に住んでいると社会も文化も常に動いていて、少し前まで通念とされていたことがあっという間に過去の価値観になっていて戸惑うことも少なくない。たとえば、ジェンダー問題などへの接し方はここ数年でがらりと変わっている。

しかし、日本でとらえられる韓国はいつも同じ姿、今でも「日本の背中を追いかける」イメージのままのように思う。変化がゆっくりと起こっている日本にとって、韓国の変化のスピードは想像できないのかもしれない。

 

まさに私に当てはまる指摘であり、私以外の多くの日本人にも当てはまる指摘ではないでしょうか。

次の記事に、韓国人が日本人より優秀である例を示します。

 

※韓国が日本を追い抜いた最大の理由は、この記事に書いていません。それは「日本経済の成長も衰退も全ては人口動態が根本原因である」の記事に書きます。