未来社会の道しるべ

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日本人は昔の中国を見ている

「日本人が知らない中国セレブ消費」(袁静著、日経プレミアシリーズ)を読んで、私の中国知識を広めるとともに、こんな中国の基本情報を紹介する本がいまだ日本で必要なことを残念に思いました。「中国人は冷めた料理を食べない」は、「中国の実態は誰も知らない」の記事に書いたように、10年前に上海に住んでいた私も気づきませんでしたが、本来なら中国の経済発展が注目され始めた1990年代には日本で周知の事実になっておくべきだったでしょう。「ご飯(米)はご馳走目的の中国人に出してはいけない」「宿泊料金は食事込みの値段であることを伝える」などの中国の常識が、「爆買い」騒動後にまで日本で一般に広まっていない事実に、落胆してしまいます。そのための経済的損失がいくらか、誰か計算してほしいです。

上記の「日本人が知らない中国セレブ消費」にも「なぜ中国人は財布を持たないのか」(中島恵著、日経プレミアシリーズ)にも書いてあることですが、ここ数年で中国人のマナーが急激によくなっているそうです(そのことに著者二人が強いカルチャーショックを受けています)。

私は「国家の富は国民の道徳と教養によって決まる」と考えています。中国が急激な経済発展を遂げたのだから、文化も急激に成熟すると私も頭の中では考えていたものの、中国人のマナーの悪さだけは簡単に直るものではない、と思い込んでいました。中国のGDPが日本の2倍になっても、「中国人の平気的な性格は『橋下徹』である」と考え続けていたのです。しかし、それは変化の止まった日本の感覚で中国を考えていたことによる誤りだったようです。

中国は同質性の社会でない」ので、ごく稀に素晴らしいマナーの中国人がいることは私も以前から知っていましたが、まさか中国人全体でマナーの向上する日がこんなに早く来るとは夢にも思っていませんでした。「なぜ中国人は財布を持たないのか」の著者が指摘するように、「声が大きくて、マナーが悪くて、不潔であることは中国人の性質」と勘違いしてしまった日本人の一人だったようです。

日進月歩の中国と10年1日の日本」に書いたように、中国は信用スコアを採用したので、これから加速度的にマナーがよくなっていく可能性もあります。日本がボケーっとしている間に、中国が一気にキャッシュレス社会を到達させたように、気がついたら、マナーの面でも、中国人が日本人を追い抜くことにもなりかねません。さらに、「いつの間に日本はこんな残念な国になったのか」に書いたように、中国での監視カメラの普及で、犯罪率でも日本が中国に負けるようになったら、いよいよ日本が中国に勝てるものはなにもなくなるのではないでしょうか。「日本人は中国人よりマナーが悪いくせに、プライドだけは高い」と世界中の人たちに思われるようには、さすがに、ならないことを願うばかりです。