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PISA現象のおかしさ

若い世代には通じないでしょうが、10年ほど前、日本には「PISAショック」という言葉がありました。「国際的な学力テストのPISAで日本の成績が下がったショック」を意味しています。PISAショックは、当時導入されていたゆとり教育批判の根拠にもなりました。一方で注目された「教育先進国」がフィンランドでした。日本のPISA順位が下降していた2003年や2006年、フィンランドが成績上位だったからです。当時マスコミがやたらとフィンランド教育を称賛したので、今でも20代以上の多くの日本人が「フィンランド=教育国」の印象を持っているかもしれません。

しかし、wikipediaで過去のPISA成績一覧を見てもらえば分かる通り、PISA史上で飛びぬけて優秀だったのは上海です。2009年と2012年で2位以下を突き放しています。客観的に判断して、上海のぶっちぎりの成績の前では、フィンランドなど霞んでしまいます。当然、今度は「上海に学べ!」と日本のマスコミは、フィンランドの時以上に騒がなければならないはずです。

しかし、そんな声は全くと言っていいほど聞かれませんでした。日本で、フィンランドの教育本は今でも出版されていますが、上海の教育本など見つけるのさえ難しいでしょう。そのダントツだった上海は2015年のPISAで「中国」と一括して計算されるようになると、大幅に偏差値を下げています。この事実を知る日本人は少ないはずです。いつの間にか、日本のマスコミが揃ってPISAの順位に騒がなくなったからです。

明らかに、この一連のPISA注目度の上昇と衰退は、大きな問題があります。最低でも、日本のマスコミや教育関係者は次のような検証はするべきです。

フィンランドPISA成績はなぜ下がったのか

フィンランドの教育は日本に導入可能だったのか(日本が参考にするだけでなく、直接見習うべきだったのか)

・どうして上海はPISAで抜群の成績を叩き出したのか。

フィンランドが注目されて上海が注目されなかったいびつさに、どうして疑問の声が上がらなかったのか。

・どうして2012年の上海と2015年の中国で成績が大きく違うのか。

・どうして日本のマスコミはPISAに関心を失っていったのか。

今まで日本のマスコミが(あるいは日本人が)こんな重要な教育問題を無視してきた反省も含めて、検証してほしいです。