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心理士の仕事は社会福祉士がするべきである

日本では長年、臨床心理士という民間資格はあったものの、公認心理士という資格はありませんでした。受験料徴収で税金の足しになるのならともかく、そうでないのなら、公認心理士の資格は不要でしょう。そもそも、心理士という職業が社会に不要だと私は考えています。

医学的事実として、カウンセリングは科学的でないと分かってきています。より具体的にいえば、再現性がなく、反証可能性がありません。同じ心理療法でも、する人によって、受ける人によって、効果はまちまちです。どこまでいけば治癒したかも明確ではありません。これでは科学とは言いにくいです。

たとえば、明治時代になって、漢方医は公式な医者でなくなりました。なぜなら、漢方は同じ病気でも、患者さんによって処方(使う薬)が異なるからです。もっと言えば、同じ病気で、同じ患者さんでも、その時の体調によって、処方が異なります。しかも、たとえ治らなかったとしても、処方を変えることで対応し、失敗とはみなされません。これでは再現性がなく、間違っていると判定することもできないので、漢方は非科学的とみなされ、国家が公費を使うべきでないと判断されたのです。

心理士の仕事の基本は、相手の話を聞くことです。確かに、聞くだけで大失敗することはほぼありません。一方で、聞くだけで解決してしまうことはそれなりにあります。あらゆる心理療法を比較して、メリットがデメリットを最も上回るものが傾聴なので、過去から現在まで、傾聴が心理士の最大の仕事となっています。

しかし、医療者としての経験で言わせてもらえば、精神科にまでかかる人の心の問題が、傾聴だけで解決することは100回に1回程度でしょう。精神患者さんは薬剤で効果なければ、カウンセリングで治すことになりますが、大抵は治りません。カウンセリングで治った稀な場合でも、傾聴ではなく、効果的な助言を与えたり、生活環境の調整をしたりした時になります。適切な助言を与え、適切な環境調整を提案するためには、心理療法の知識よりも、社会の仕組みを把握する能力、社会観が重要になります。

現在の心理士の仕事は社会福祉士に任せればいいと私は考えています。傾聴は、医療職や福祉職であれば、誰でもその重要性を知っていて、とりあえず実践しています。社会福祉士も傾聴くらいできますし、しています。心理士や精神科医よりも、傾聴が上手な社会福祉士もいくらでもいます。

また、福祉制度の知識が豊富な社会福祉士であれば、相手の話を傾聴しているうちに、適切な福祉制度、福祉施設につなげられます。だから、適切な助言や、適切な環境調整の提案もしやすいはずです。

誰もが知っているように、人間の心の問題は複雑であり、容易に解決しません。心理士のカウンセリングといっても、せいぜい1週間に1回30分から60分です。そのくらいのカウンセリングで治るのなら、最初から大した問題ではないでしょう。まして問題を聞いてもらっただけで治る程度なら、公的機関が税金使ってまで対応することもないはずです。

傾聴以外のカウンセリング方法だと、カウンセリングしたことで返って害になる弊害、カウンセラー自体も心の問題を負ってしまう弊害が大きくなってきます。これは有能で経験豊富なカウンセラーでも、程度の差はあれ、同じです。

以上から、カウンセリングの専門職、カウンセリングだけをする公的な仕事は不要だと私は考えます。もちろん、どんな薬剤も無効だったのに、ある人のカウンセリングで精神疾患が治ることはあるので、カウンセリングの効果を否定まではしません。しかし、誰のどのカウンセリングがどの患者さんに有効かは明確でありません。だから、医者や看護師や社会福祉士介護士などが専門の仕事をしながら、患者さんに傾聴し、適度に助言をするくらいでいいと考えます。とりわけ、現在の心理士、カウンセラーの仕事は、傾聴の技術も学んだ社会福祉士に代替できるはずですし、代替すべきだと考えます。その場合、社会福祉士は傾聴し、助言を与えるだけでなく、関係者との調整権限も与えられるべきでしょう。たとえば、現在のスクールカウンセラーの代替となる社会福祉士なら、教師や家族と面談を設定できる権限を持たせるべきです。

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