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就職面接での就職コーディネーターの同席義務化

2018年12月15日朝日新聞土曜版の記事で、クックビズという飲食業界の人材紹介サービス企業が紹介されていました。驚いたのは、スタッフが採用面接に同行することです。飲食業界は離職率が30%と高い業種なので(下の日本生産性本部生産性総合研究センター2018「生産性レポートvol.7」のグラフにあるように生産性がアメリカの半分にも満たない業種でもあります)、少しでもミスマッチをなくすために、口下手な求職者に代わって、スタッフが説明を補足するそうです。また、求職者に提供する情報は、飲食店の給与や仕事内容にとどまらず、職場の雰囲気、人事担当者の人柄、どこまで加工品や既製品を使うのかまで含まれます。さらには、紹介した人が相次いで店を辞めたとしたら、職場の改善に口を出すとも書かれています。そんな公的機関のような手法でも、ミスマッチを少なくすることで信用を得ているのか、1万社以上の企業と取引し、年間2千人の正社員を生み出し、年商20億円を達成しているようです。

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2ページ程度の記事なので、実態はよく分かりません。紹介する職種として「料理人、店長、管理栄養士、メニュー開発者」と出てくるので、飲食業界でも上級職を対象としているとは想像できます。また、2千人紹介で20億の売上なので、1人あたり約100万円の紹介料を徴収していることになります。100万円払ってまで雇いたいとなると、ある程度の技能や資格のある人に限られるでしょう。ただし、年収の3割程度が人材紹介料の相場と書いてあるので、年収350万円以上の仕事なら、100万円が徴収できることになります。前回の記事で引用したグラフを参考にすれば、日本人の半数程度は入ることになります。

ただし、逆にいえば、上のような企業があったとしても、半数程度の勝ち組の日本人しか面接同行の恩恵は受けられないことになります。いえ、日本の勝ち組のほとんどは、終身雇用の上に乗っている人たちなので、転職時の面接スタッフ同行の恩恵を受ける者は、半数を大幅に下回るはずです。

そうであるなら、就職コーディネーターを公的資格にして、新卒を含めた日本中の全ての採用面接に同行させることを義務化してはどうでしょうか。多くの採用面接では、どうしても採用側が上になります。求職者は選ばれる側で、採用者が選ぶ側のはずです。求職者は聞くべき質問もできないまま、職務の実態ををろくに知らないまま、働き始めなければなりません。だから、ミスマッチが起き、離職率が高くなります。それは採用側にとっても好ましいことではありません。

求職者が聞きにくいことでも、同行している就職コーディネーターなら容易に聞けるはずです。就職コーディネーターの適切な質問にも採用側がごまかすような返答をしてきたのなら、その企業になんらかの問題があると推測できます。公的就職コーディネーターには、企業への行政指導の権限を持たせるべきでしょう。なお、たとえ求職者が希望しなくても、就職コーディネーターには最低限の質問の義務を負わせるべきと考えます。最低限の質問には、職務内容、勤務時間、給与はもちろん、前年の採用歴、離職率、採用後の精神的ケアの方法、採用後に解雇になる条件(あるいは採用側が社員へ要求する絶対条件)などは入れるべきでしょう。

上のクックビズの例からも、民間の就職コーディネーターが面接同行できる場合まで、公的の(公費の)就職コーディネーターが介入すべきではないでしょう。しかし、明らかに求職者の立場が弱い場合、たとえば年収300万円以下の仕事の求人には、公的就職コーディネーターが面接同行する義務を生じさせるべきと考えます。その場合、公的就職コーディネーターの予算(≒人件費)は、日本企業全体に負担させていいはずです。ミスマッチが少なくなることは、企業の利益にも繋がるからです。

理想論かもしれませんが、たとえ縁故採用だとしても、就職コーディネーターが必ず採用側と求職側の間に入って、就労前にお互いの希望条件の確認を行って、公的記録に残しておくといいと思います。もちろん弊害もありますが、日本の企業文化が段違いにオープンになることは間違いありません。