未来社会の道しるべ

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いじめを語る会を作るべきである

ある年齢以下の日本人なら、学校などで「戦争体験を語る会」に参加させられたことはあるでしょう。戦争体験者(空襲被害者や原爆被害者)の講演を聞く会です。そんな風に「戦争を語る会」があるなら、私は「いじめを語る会」があってもいいと思います。

私のいじめの記事を読むと、今の20代以下の世代は「日本中の全ての学校が荒れていたわけではないだろう。大げさすぎる」と思うかもしれません。確かに、私立中高一貫校まで荒れていませんでしたが、日本中の若者に不良文化が蔓延していたのは紛れもない事実です。中高生の暴力事件なんて、どんな田舎でもありました。昭和一桁世代(昭和元年~昭和9年までに生まれた世代)が全員戦争を経験しているように、1980年代と1990年代に少年少女時代を送った人は全員がいじめと不良問題を身近に経験している、と断定していいと私は考えます。

オタク文化隆盛の今からは想像もできないかもしれませんが、1990年前後、多くの若者向けマンガやドラマには不良少年少女が出てきました。しかも、不良たちは必ずしも悪役として登場していたわけではありません。1990年前後にデビューした若手テレビタレントは、お笑い系だろうと、歌手系だろうと、ほぼ例外なく元不良か現不良でした。少なくとも、そんな噂は立っていましたし、テレビやラジオで堂々と「シンナー吸ったことありますよ」「ムカついたんで、袋叩きにしました」「スカしてたんで、犯っちゃいました(強姦しました)」と自慢していました。公の電波を通じた犯罪告白ですが、以前の記事に書いたように、いじめ問題に限らず、少年少女犯罪だと警察はほとんど動かなかったのです。1980年代から1990年代、文部省がいじめの実数を正確に把握していないのと同様、警察も少年少女犯罪を正確に把握していませんでした。

嘘だと思うなら、近くにいる30代、40代の先生にでも聞いてください。当時の日本にいた若者なら知らない人がいないほど、不良文化は日本中に浸透していました。今でも、その世代の元不良の大衆小説家がベストセラーを何冊も書いていたりします。本を読めば、暴力や恐怖による威圧を肯定して、やたらとヤクザが出てくるので、反省していない、と怒りがこみあげてきます。

しかし、現在の若者は少年少女の非行問題を知らないし、その悲惨さを想像できないと思います。「いかにそれが非道であったか」「被害者がどれだけ身体的、精神的に苦しんだか」を伝えていく価値は十分にあるはずです。非行問題やいじめ問題は、現在も程度が軽くなったとはいえ、戦争よりも遥かに身近で発生しています。元不良のテレビタレントは今も普通に活躍していて、場合によっては「ヤンキー文化を復活させよう」などと懐かしむ愚か者たちまでいます。それが社会道徳的にいかに許されないか、なにも知らない若者たちに伝えていくべきだと私は考えます。