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未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

ソマリランドでの新しい政治制度

「謎の独立国家ソマリランド」(高野秀行著、本の雑誌社)に、国連にも認められていないソマリランドで実施されている珍しい政治制度が書かれていました。「政党を三つに限る」という制度です。ソマリランドは氏族社会であるため、政党の数を限らないと分家の分家の分家くらいのレベルで人々が政党を作って混乱しますが、三つしかなければ氏族間で協力する必要が出てくるのだそうです。

この三つの政党は、議員選挙とは別に行われる、ソマリランド全土の選挙で決まります。興味深いのは、ソマリランドを六つの選挙区に分け、うち四つ以上の選挙区で20%以上の得票率を得ることが必要条件であることです。氏族は特定のエリア(選挙区)に固まっています。この必要条件により、特定の氏族だけを優先する政党は排除される仕組みです。この政党選挙は10年に一度だけ実施され、ここまで労力をかけているだけあり、立候補する者は三つの政党どれかに所属しなければなりません。日本のように「無所属」は許されません。

日本と地理も文化も歴史も大きく異なる国の制度なので、この政治制度をそのまま日本に導入するのは難しいでしょうし、実際に導入してもうまくいく保証はありません。ただ、日本の政治がうまく機能しない今、このような制度もありうると、参考にはなるはずです。

日本は1990年代に衆議院選挙制度を改革して、政治にある程度の変化はあったのですが、それによって日本の政治が劇的によくなったとは思いません(ただし、同時期に実施された政治資金の関連改革は一定の効果があったと思っています)。そうであるなら、その反省を活かして、より有効な改革を行うべきなのですが、もう政治改革をしても無駄と思う人が増えたのか、強い指導者(あるいは独裁者)を求める声が出てきていたりします。しかし、独裁政治は民主政治の対義語に近いので、そこまで極端な方法を求めるのは適切でないでしょう。もう一度選挙制度を変えてみる、あるいは、ソマリランドのような政治制度を検討してみるなど、他の民主制度を求めるべきだと私は考えています。

憲法改正が必要になるので極論になりますが、現在の議員内閣制が日本に常に最適であるとは限りません。ソマリランドで上のような政治制度を導入したのは遊牧民族で氏族社会など、いろいろな歴史や社会背景があったからです。同様に、現状の日本を政治、経済、歴史、文化、教育などあらゆる角度から検討して、日本にふさわしい理想の政治制度を考慮してみても悪くはないでしょう。