未来社会の道しるべ

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地方議会は失くしていい

前回の記事と同じく、「地方議員は必要か」(NHKスペシャル取材著、文春新書)を読んでの考察です。

地方議員のなり手不足は、昨今、新聞でもよく目にします。無選挙当選は3割の自治体でありますし、定数割れの自治体すらあります。公職選挙法で定員の6分の5以上の議員がいなければ議会は開けないので、定員10人の議員うち7人が引退表明していたのに、撤回せざるを得なくなった長野県小谷村の実話があります。

「だったら定員を減らせばいい。議員報酬が少なくて、なり手不足なら、議員定数を半減させれば、報酬も2倍に増やせる。あるいは、十分な議員報酬を出せる規模に市町村合併させればいい」

議員削減案や市町村合併案は、「なり手不足」「議員報酬不足」「議員のやり甲斐不足」の解決策になるはずです。本にはこの解決策を実行しない理由は書かれていませんが、もう一つの解決策として、議会をやめて総会にする方法が書かれています。

離島を除けば全国最少人口400名の高知県大川村(定数6)では、議員のなり手不足を心配し、議会をやめて「総会」の設置を検討しました。「町村総会」は地方自治法第94条で規定されています。あまりに少人数であれば、間接民主制の議会でなく、古代ギリシアのように直接民主制の総会にできるようです。

しかし、いざ総会を検討すると、どのように人を集めるのか、連絡や交通手段、採決の方法など、課題が次々に現れました。結局、大川村は発案から3ヶ月で、検討を中断します。議員定数を割るような地域では、直接民主制の総会すら現実的ではないようです。

だとしたら、現行法では無理ですが、議会も総会もしない案もあっていいはずです。実際、自己否定になる質問「議会は本当に必要かと思うときがある」に25%もの議員がyesと答えています。

私が地方議会を失くしていいと考える最大の根拠は、「日本は政治家より官僚が強い」の記事に書いたように、約9割の地方議会が1年間にただの一度も行政(役所)提案を否決していないことです(全日本人が知るべき事実なので、強調します)。

政治家よりも官僚が優秀であるなら、究極的には地方議会に限らず、国会ですら不要なのかもしれません。国会でも成立する法案の多くは内閣(官僚)発案ですから、莫大な国会議員の人件費や国政選挙の費用を考慮すれば、そんな意見もあっていいと考えます。

国会すらなくなれば、日本の民意は政治に反映されにくくなり、戦前のような非民主主義国家に逆戻りします。ただし、現在ですら、民意が政治に十分に反映されているかは疑問です。そんな疑問を持つ最大の根拠である日本政治の密室性(稟議制)について、次の記事で解説しておきます。

なお、国会を失くすには憲法改正が必要なので、実現可能性は低いでしょう。日本の全ての議会を失くすと日本の政治がどうなるかは私にも正確に予想できません。ただし、上記の理由から考慮には値すると考えます。

特に行政を追認しているだけの3万2千人もいる地方議員は全てか、9割失くす議論はあるべきでしょう。