未来社会の道しるべ

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なぜ情報に振り回されるのか

このブログでも何度も指摘していることですが、日本人は大卒でも科学的思考が確立されていない人が少なくありません。だから、福島で原発事故が起こった時でも、怪しい情報に流されて軽挙妄動に走った人が少なくありませんでした。当時の公的情報に多くの間違いやごまかしがあったのは事実ですが、だからといって「どれが本当の情報か分からない」と日本全体がパニックのようになってしまったのは残念です。

偉そうに書いている私も原発事故前までは「原子力は使用済み核燃料の最終処分場がないなどの欠点はあるが、他の発電だって欠点はある。発電費用が他より圧倒的に安い長所は重視すべきだ。日本は唯一の被爆国だから事故を極端に怖がっているが、なにごとも慎重に物事を進める日本でメルトダウンが起こる確率なんて、富士山が噴火する確率よりも遥かに低いだろう」と考えていました。

現在は、「原子力発電に関わる人たちが慎重に物事を進める」ことも「原子力の発電費用が他より圧倒的に安い」ことも、完全な誤解であることを知っています。「電力と政治」(上川龍之進著、勁草書房)を読んだからです。

原発推進派にしろ原発反対派にしろ「電力と政治」(上川龍之進著、勁草書房)は読まなければいけない本です。「原発推進派の自民党が政権とっているのに、なぜ稼働していない原発の方が多いのか」、「日本人の過半数原発ゼロにしたがっているのに、なぜ原発はなくならないのか」という疑問も氷解していくでしょう。ただし、値段が高く、上下巻にも分かれているので、読み通すのは難しいかもしれません。しかし、「原発の情報に振り回されたくない」と思っている人なら、図書館で借りてでも、ぜひ読んでほしいです(私も図書館で借りて読んでいます)。

「情報に振り回されて困ってしまう」と思っている私を含む人は、第一に、中途半端に情報を収集しているからです。既に分かっている事実を十分に収集していけば、「どうすべきか判断が難しい」と思うことはあっても、「情報に惑わされる」ことはないはずです。少なくとも事実無根の意見に振り回されることはありません。

西洋式討論術」にも書いたように、まず事実と意見は明確に区別すべきです。また、「分かっていない」状態と、「『分かっていない』と分かっている」状態は違います。たとえば、もし「その事実の正誤はまだ明確でない」のに、「その事実が正しいと断定して意見を言っている」のなら、その「意見」も正しくないはずです。

科学的思考というと数学や理科を思い浮かべるかもしれませんが、科学的思考は自然科学だけでなく文系でも必須です。しかし、あらゆる学問の前提となる科学的思考を日本の学校ではあまり教育されないため、日本人はあまり持っていない、と私は思います。

十分な事実を収集して、科学的思考を身につければ、情報に振り回されることはないはずです。