未来社会の道しるべ

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誤解だらけのIQ

・IQテストの平均点は常に100点である

・準備勉強をしてもIQテストの点数が上がったりはしない

・知能を客観的に測るテストはこの世に存在しない

以上はすべて間違いです。なお、3番目は「誰もが納得できる知能テストはこの世に存在しない」なら、当然、正しくなります。

「IQテストの平均点は常に100点である」については、ビネー式のIQテストがどの国で測っても、20年経過すると平均点が15点上がっていること(フリン効果)から、間違いです。IQが130以上だとか自慢している人がいたら、ビネー式で測っている確率は極めて高いです。そもそもビネー式IQテストは、知的障害者を分別するために誕生しています。頭の良さの程度を測るためのものではありません。

ただし、IQテストが客観性のない知能検査と断定するのも間違いです。特にスピアマンの提唱した一般知能g(≒知能指数)を16の因子に分けたキャテル・ホーン・キャロル理論(CHC理論)は、その16因子全てが統計的に実証されています。

ただし、残念なのは、日本ではCHC理論でのIQテストが実施されていないこと、それどころか、CHC理論の存在すらあまり知られていないことです。いえ、それよりもなによりも衝撃的だったのは、統計的に妥当性がある日本語のIQテストは一つも存在しないことです。それは「IQってホントは何なんだ?」(村上宣寛著、日経BP社)に赤裸々に書かれており、私も唖然としました。

同著ではリクルートが実施するSPI試験なども批判されており、SPI試験がそもそも知能検査になっていない、と全否定です。

別の観点から考えても、入社時にあれほどお金をかけて大規模に行っているSPI試験を含め、多くの日本の試験は、事後に有効性を統計的に調べていません。入社時のSPIの試験と、どれだけ会社に貢献したか(上から何番目のポストに就いたか、合計収入はいくらになったのか)の相関関係を求めることは簡単にできるはずなのに、なぜかしていません。これだとSPI試験に妥当性があるのか不明なので、当然、入社時のSPI試験をやめるべきかどうかの判断も客観性のないものになります。「新卒一括採用の功罪」に書いたように、日本の企業の人事担当者は、自分たちが毎日やっている人事や、賃金管理の仕事がどのような原理原則のもとに行われているかを理解していないようです。

 

※注意 「IQってホントは何なんだ?」(村上宣寛著、日経BP社)は2007年出版なので、それ以後に作成された日本語のIQテストは統計的妥当性の検証をされているのかもしれません。