高齢者ほど貯蓄額が高い問題は、ここ最近の話ではありません。私の知る限り、バブル時代の1980年代には日本の重大な経済問題として取り上げられていました。この問題の根本原因には、日本の年功序列賃金制度があります。年次が上になるほど高賃金になりますが、高齢になるほどお金を使うわけではありません。むしろ、子どもが親元を離れたら、家計消費は減るはずなのに、それに見合うだけの賃金減少はありません。だから、高齢者ほど貯蓄額や資産額が上昇します。
また、年功序列賃金制度は、公的年金制度同様、人口ピラミッドが三角形の時はいいのですが、そうでないと維持するのは難しいです。高齢者は若者より能力が高く、価値のある仕事をしているとは限らないからです。まして、現在のように人口ピラミッドが逆三角形になってまで年功序列が一般的なのは、明らかに無理があります。
しかし、濱口桂一郎氏が「新しい労働社会」(岩波新書)などで繰り返し述べているように、日本企業を年功序列賃金制度から職務能力賃金制度に移行させようと、厚労省は何十年間も活動していますが、一向に成功していません。実際、日本を少しでも知る人なら、年功序列賃金制度の解体が容易でないことは理解できるでしょう。儒教文化、長幼の序の意識、先輩後輩の上下関係などは日本のあらゆる社会の行動規範になっていたりします。
日本人の骨の髄まで浸透した年功序列の価値観を変えるためには、制度面から大胆に変える他ないと思います。その必要性と改革案をこれからの記事に書いていきます。