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未来社会の道しるべ

新しい社会を切り開く視点の提供

幕末の稚拙な外交政策から日本は教訓を得ているのか

日本の外交

私が中学生だった頃、日本史を勉強していて、最も謎だったのは日米修好通商条約です。これは日本が自由貿易を始める画期的な条約であると同時に、アメリカ人の治外法権を許し、日本に関税自主権がなく、アメリカへの片務的最恵国待遇を認めた不平等条約です。明治時代を通じての外交は、あるいは、もっと大きく明治時代そのものは、この不平等条約解消のために費やしたと言っても過言ではない、と私は考えています。一体、どうして日本人を劣等民族扱いした、こんな屈辱的な条約を結んだのでしょうか?

社会の先生に質問すると、「西洋列強と戦争するだけの力が当時の日本にはなかったから」と返答されました。私はその返答に納得できず、さらに質問したかったのですが、上手く言葉にできなかった記憶があります。

「通商条約だけでよかったのに、なぜ不平等条約まで結んだんですか?」

不平等条約だと当時の日本人は分かっていたんですか?」

「もしアメリカが日本の無知につけこんだ条約だったのなら、それは不誠実です。その不誠実を主張して、対等な通商条約にすることはできなかったんですか?」

「日本が正当な理由を主張しても、まだアメリカが武力で威嚇するのなら、中国や他の西洋列強に日本への同意を求めて、戦争も辞さずに交渉する方法はなかったんですか?」

「その他、あらゆる合理的な外交手段を当時の日本の外交担当者は考えたんですか?」

今の私なら、こんな疑問を続けたかったのだろう、と分かります。私が明治時代に生きていたら、特にこの不平等条約の改正の仕事を請け負っていたなら、「なぜ! どうして! こんなバカな条約を結んだんだ!」と何度も考えたことでしょう。だから当然、そんな考証は現在まで何千回、何万回もされて、その骨身に染みた反省から生まれた教訓は現在までの日本外交に受け継がれている……と私は信じていました。

しかし、十分な教育を受けたはずの大卒日本人の何%が上の疑問にスラスラ答えられるでしょうか? あるいは、次の質問には適切に答えられますか?

1、どうして西洋列強は日本を植民地にしなかったのか?

2、なぜペリーは日本との通商よりも捕鯨船の補給を望んでいたのか?

3、当時世界最強の海軍国であるイギリスではなく、なぜアメリカが日本の鎖国政策を終えらせたのか?

私は大卒で歴史教養本を100冊以上は読んでいますが、つい最近に「日本開国史(石井孝著 吉川弘文館)」を読むまでは、上記の質問全てに答えられないか、要点を見落としていました。

上記1、2の答えは当然一つに定まりませんが、要点に「西洋列強が中国を日本よりも遥かに重視していたから」があることは間違いありません。つまり、日本を開国させて通商を結ぶのは中国よりも簡単かもしれないが、その労力を中国との交易拡大に向けた方が有益だと、貿易統計から判断していたのです。なぜこの要点が間違いないと断言できるかといえば、当時のイギリスの外務大臣やアメリカの国務長官を筆頭とした外交官のほぼ全員が「日本との国交を性急に結ばない理由」として、「それよりも中国との交易拡大に専念すべきだ」と返答した記録が残っているからです(上記文献参照)。

また2、3の答えとしては、イギリスが中国に行く途中に日本に立ち寄る必要は全くないが、アメリカが中国に行く途中に日本に立ち寄れると極めて便利だったからです。これもペリーが「日本を開国させるべき理由」として進言しており、また海軍長官もその理由に納得して日本に行く許可を出しているので、要因の一つであることには間違いありません。つまり、ペリーの最優先の目的は、中国に行くまでの避泊港を設けることでした。だから、日本が開国できない場合でも、琉球諸島に停泊地を作るつもりで、実際、ペリーは日本を開国させる前に、琉球王国に停泊地を作ることを認めさせています。ここで注目したいのは、「日本を開国できない場合」について、ペリーはアメリカを発つ前から海軍長官に書簡で述べている点です。

現在、ペリーたちの思惑は上記文献などから日本でも明らかになっています。これを日本の政治家たちが知ったのはいつだったのでしょうか? また、こんな重要な情報(アメリカによる日本開国の主要目的は中国貿易であったこと)がなぜ一般に広まっていないのでしょうか? もしかして日本は幕末の稚拙な外交政策についての総括ができないまま第二次世界大戦に突入したのでしょうか? そして第二次世界大戦の稚拙な外交政策の総括ができないまま現在に至っているのでしょうか? 結局、日本は幕末以来、外交政策についてはなにひとつ確固たる教訓を得られないままなのでしょうか?

そんな疑問がどうしても生じたので、これから複数の記事にしています。