「なぜ能力と意思も高い石丸伸二が日本の総理大臣になれないのか?」と私が聞かれたら、「日本では自民党が強すぎるから」あるいは「日本では自民党の長期独裁政権が続きすぎて、保守的な日本でそれを崩すことは不可能に近いから」と答えます。
そんなことを書けば、「1993年に細川政権が自民党を倒したし、2009年に民主党政権が自民党を選挙で破ったじゃないか」と反論されそうです。
だから、不可能とは書いていませんよ。「不可能に近い」と書いたじゃないですか。
それに、上の二つの政権交代があっても、結局、自民党はまた万年与党に戻っていますよね。自民党の根は日本全土に広く深く伸びきっています。私程度に政治意識があれば、日本に長く住めば住むほど、自民党の牙城を崩すことは無理なんじゃないか、という気になってきますよ。
いや、そういう私みたいな奴がいるから、自民党の万年与党体制が崩せないんだよ、と批判されたら、その通りなんですけどね。
ただし、「尹錫悦は世界史上最高の政治家かもしれない」に書いた通り、日本と最も似ている国、韓国の政治を見ても、能力と意欲が最も高い政治家が最も良い政治を行えるわけでは決してありません。政治はあざなえる縄のごとしです。あまりに複雑すぎて、どんな政策を実行すればいいか、誰にも分かりません。いや、分かっている人はいるんですが、政策を実行するための能力と意思は、良い政策を考える能力と意思と別に必要なんですよ。
これでは「石丸伸二が首相になれない理由」ではなく、「日本で自民党政権がなかなか崩壊しない理由」になっているので、石丸伸二にテーマを絞ります。
前回の記事に書いた通り、石丸が東京都知事になり、東京を大きく改革してくれることは間違いないと私は確信しています。だから、先週の選挙で落ちた42人の候補者のうちの何名か、あるいは、ほぼ全員がいずれ当選し、都議会議員になると私は確信しています。
石丸の東京都政改革は、それまでの都政改革が児戯(子どもの遊び)に見えるほど、本格的かつ抜本的なものになると私は予想しています。その成果に、多くの都民が拍手喝采することも確実だと私は考えています。
そうなると、「東京をあれほど改革してくれた石丸都知事なんだから、日本全体も改革してもらおう」という流れが出てくるのは必然です。
しかし、そこまでの流れがあっても、盤石の自民党政権を倒せるかと問われると、難しい、と言わざるを得ません。
たとえば、石原慎太郎だって都政改革(と言うほど改革したと私は思っていませんが)で大人気になって首相待望論が出ましたよね。でも、維新の会と手を組んでも、自民党政権はビクともしませんでした。最後に石原は自分の政党を作った挙句、自爆して政界から去っています。
頭脳明晰さ、論戦で常勝するところなど、石丸と共通点の多い橋下徹が創設した日本維新の会は関西で幅をきかせている程度で、国政での自民党の影響力と比べたら、10分の1もないでしょう。
野田佳彦や前原誠二などの松下政経塾出身者たちが中心となった民主党だって、自民党の牙城は崩せていません(もっとも、松下政経塾出身の有力政治家は自民党にも多くいます)。
こういったことを全て考慮すると、どれほど石丸伸二や再生の道の候補者たちの能力と意思が高くて、都政でかつてない改革実績を示せても、国政での自民党の牙城を崩せるかと言えば、やはり難しい、と私は思ってしまいます。
維新の会がそうだったように、政権をとろうと思ったら、やはり最大野党(現在なら立憲民主党)と手を組まないと難しいでしょう。東京が地盤の再生の道、大阪が地盤の維新の会、その他の地域で自民党と対抗できる民主党系が連立政権を樹立して、ようやく自民党を野党に追い込めるくらいが現実でしょう。
そして、維新の会と民主党が一度も連立政権を組めなかったように、再生の道が他の政党と連立政権を組めるかといえば、難しいと思いませんか? あの石丸が他の政党の党首と笑顔で握手するなんて、想像できますか? だから、石丸が首相になるのは難しいと私は断定しているんですよ。
リハックを観ていて笑ったのが、再生の道候補者の都議選全敗の報道を受けて、米山隆一が「そら見たことか!」と、早くも批判しているらしいじゃないですか。
(アホか! 米山と石丸なんて、同じ改革派じゃないか! どちらも頭脳明晰で、これからの日本を担っていく重要な政治家だよ! なんで内ゲバなんかしているんだ!)
それが私の感想です。
良くも悪くも、こういう時、小沢一郎なんかは天才的な調整力を発揮して、細川連立政権を樹立させたり、自自公政権を樹立させたり、民主党政権を樹立させたりしたんですよね。一度も首相になっていないくせに、何度も政権交代を実現させた影の主役になっている点で、小沢一郎に並ぶ政治家は、戦後一人もいません。小沢一郎のいない平成日本の政治なんて、想像できますか? 2回目の首相を狙っていたのに、1回の首相で終わった田中角栄を、その弟子の小沢一郎は政治影響力で遥かに上回っています。
私の小沢一郎賛歌はこれくらいにしておきます。ともかく、石丸が小沢一郎のようになることは不可能でしょうから、小沢一郎のような奴が日本政治に現れて、石丸とそれ以外の改革派をうまく仲介すれば、石丸が首相になれる可能性が飛躍的に増します。
石丸が首相になれるかどうか、ひいては、日本に抜本的な改革が行われるかどうかは、第二の小沢一郎が日本政治に生まれるかどうかにかかっているように私は思います。