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ロシアの横暴を止めるためNATO加盟国を減少させるべきだ

2025年4月現在、トランプ大統領が就任100日までに、ウクライナ戦争の停戦調停しようと躍起になっています。普通に考えれば停戦は不可能だと思いますが、「なぜ中国は朝鮮戦争に参戦したのか」に書いたように、世界史は政治家の気まぐれで大きく変わってきた事実があるので、4月末までに停戦を実現するのかもしれません。

ウクライナ戦争のマスコミ報道を見ていて、ずっと感じていることですが、ウクライナの味方ばかりして、ロシアに対しては批判しかしません。プーチンはなんの根拠もなくウクライナをネオナチと言っているわけでもありませんし、アメリカとウクライナの癒着があるのも事実です。そういった事実をマスコミが知らないわけがないのに、ほとんど報道されません。だから、ロシアがウクライナアメリカを非難する正当性を与えています。なお、マスコミ以外のネット情報だとロシア擁護の意見は簡単に知ることができます。

どう考えてもロシアに正当性があると私が考えてしまうのは、やはりNATOの東方拡大です。冷戦が終わった時点で、ワルシャワ条約機構が解体された時点で、NATOは解体してもよかったはずです。経済協力のためのEU拡大はまだ分かりますが、対ロシア軍事同盟でしかないNATO拡大はロシアにとって脅威でしかありません。これが日本だったら、どうか考えてみてください。対日本軍事同盟の拡大を許せますか。北朝鮮ならまだしも、韓国や台湾まで対日本軍事同盟に入ろうとしたら、政治的にも経済的にも感情的にも許せないはずです。ロシアはいまだ世界で最多の核兵器保有国です。一発でも核ミサイルを打たれたら、第三次世界大戦が始まるかもしれないのに、NATO拡大でロシアを軍事的に脅すなど、理解に苦しみます。

だから、フィンランドNATO加盟も、私はどうしても賛成できません。第二次世界大戦ソ連に完敗したフィンランドは国民からいかに反発が出ようとも、70年以上もロシアと敵対しないように金も労力も使ってきました。NATO加盟もかたくなに拒否してきましたが、裏でフィンランドは実質的なNATO加盟国になっていました。ソ連やロシアと対立したくないが、攻められた時はNATO諸国に助けてもらうことになっていました。それがフィンランドにとって最も得だからです。フィンランドNATOに加盟しても、国民の支持を得られる以外に、メリットがあるとは思えません。そのメリットよりも、NATO加盟を理由に、ロシアに核ミサイルを撃ち込まれるデメリットが遥かに大きいはずです。

ソ連解体以後現在まで、旧共産圏の多くの国は親EUか、親ロシアかで国民が分断されています。しかし、言うまでもなく、どちらとも仲良くすることが最も好ましいに決まっています。冷戦は終わったのですから、自由経済競争で、それぞれの分野で合理的に選択すればいいだけです。

ロシアは石油、天然ガス、石炭のエネルギー大国です。ロシアからEUへの安価なエネルギー供給が止まったからこそ、現在、世界中の人が物価高に苦しんでいます。軍事的にはもちろん、経済的にもロシアを敵に回して、いいことはありません。ロシアと近くて、ロシアとの交易が盛んな旧共産圏の国なら、なおさらです。もちろん、EU全体と比べたら、ロシアの経済規模など大したものではありませんが、無視できるほどロシアの経済は小さくもありません。そういったことを全て考慮したら、やはりEUともロシアとも仲良くするのが賢明です。それにもかかわらず、旧共産圏の国の多くで親EU派と親ロシア派が対立しているのは、民主政治がうまく機能していないからでしょう。旧共産圏に限らないかもしれませんが、ネットのフィルターバブルの影響か、「AとBの中間が正解」にもかかわらず、「AかBか」の二元論になってしまい、国内に無益な対立が生じています。

2014年のユーロマイダン革命からのロシアによるクリミア併合、およびドンバス紛争は、どっちもどっちだったように思います。特に、ユーロマイダン革命でアメリカの関与があったことは既にオバマ大統領ですら認めています。だから、この事件でロシアをG8から除いたのは、悪手だったでしょう。G8なんて、ロシアのプーチン大統領をおだてて、手なずけるためにあったような組織でした。

この2014年から2022年のロシアの大規模ウクライナ侵攻までは、EUアメリカがロシアを再び味方にする絶好の機会でした。なぜこの時に、EUアメリカはロシアに歩み寄らなかったのでしょうか。

2022年のロシアの大規模侵攻によって、ウクライナ問題の解決の難易度が極めて高くなったことは間違いありません。満州事変によって、日本の横暴を止めることが極めて難しくなったことと似ている気がします。

誰が考えても、2022年のロシアの大規模侵攻は一線を越えています。こんなロシアの横暴を許すわけにはいきません。せめて2022年の戦争前の状態まで戻さなければいけません。しかし、双方ともに数万人の死者を出して、敵愾心がそれまでと比較にならないほど高まったので、なにもなしで元に戻すことは不可能に近いです。満州事変を起こした日本に、なんの補償もなく満州事変前の状態に戻せ、と言っても納得しないのと同じです。いえ、満州事変はその条件なら中国は納得しました。2022年からのウクライナ戦争では、ウクライナですら、2022年の戦争前の状態ではなく、2014年のクリミア併合前の状態まで戻せ、と主張しているので、満州事変以上に停戦は困難です。

満州事変を起こした日本は日中戦争をへて太平洋戦争まで戦線を拡大し、無条件降伏させられ、ようやく矛をおさめました。同じことをロシアにさせたら、第三次世界大戦になり、核戦争になり、世界中で何十億人の命が奪われるまで、ロシアは矛をおさめないかもしれません。核戦争はどんな理由があっても、避けなければいけません。

そういったことを考慮すれば、2022年の状態に戻すために、ロシアに次のような妥協はしていいと考えます。

1,2022年以後のロシアへの経済制裁の全解除

2,ウクライナNATOに加盟させないとの約束(ウクライナが受け入れるために、10年などの期限付きになるかもしれません)

3,NATO加盟国の減少

4,ロシアのG8への再参加

ロシアが戦争をしかけたのに、ロシアが得をすることは道徳的に許されない、との批判は必ず出てきます。それについての反論としては、「上記の2から4の妥協は、2014年から2022年までにEUアメリカがするべきだった」になるでしょう。もちろん、2から4の条件と引き換えに、ロシア軍のウクライナ全土からの撤兵などを同意してもらうべきでした。2014年から2022年までなら。しかし、2022年のロシア侵攻後は、1から4の条件でも、ロシアにそこまで要求できず、2022年の戦争前に戻すだけの要求になってしまいました。それはEUアメリカの2014年から2022年の外交交渉の失敗であるので、止むを得ないと考えます。

なお、ウクライナ戦争の解決方法として、「NATO加盟国を減らすこと」が出てこないのは私にとって謎です。ウクライナ戦争を無視しても、ロシアの軍縮を進めるため、NATO加盟国減少は提案すべきでしょう。それこそ、ロシアが核兵器を全て撤廃して、二度と持たず、作らず、持ち込ませず、国際原子力機関の査察も受けているとの条件をのんでくれたなら、NATOを解体してもいいはずです。NATO加盟国でないものの、アメリカの大切な同盟国である日本こそ、こういった主張をしてもらいたいです。