(バカバカしい! こんなの誰も守っていないよ!)
つい先月も、歯科衛生士からX線照射を受けた私(医師)の感想です。
医療機器メーカーの社員が無資格でX線照射した事件を朝日新聞が大きく報じています。
それのなにがいけないんですか。それで患者さんに被害があったんですか。ボタン押すだけですよ。誰がやっても同じです。
法律上、X線照射できるのは医師、歯科医師、放射線技師だけですが、日本の多くの歯科医院で、こんなルール守っていません。「昔は人不足だったから、自分は事務員だけど、X線撮っていた」と笑いながら言う年配の人に、私は何名会ったでしょう。医療機器メーカーの社員なんて、事務員や歯科衛生士より、さらには歯科医師や医師よりも、自社のX線機器に詳しいです。なぜ照射してはいけないんですか。しかも、近くに医師がいるんでしょう。100%、問題ありません。患者さんに害があれば、現場の医師の責任でいいじゃないですか。
「それなら、医療機器メーカーもX線照射資格を取得できるように制度変更しよう」と考えるバカもいるかもしれません。
今のままでいいですよ。だったら、歯科衛生士も事務員もX線照射資格試験を受けさせる、なんて話になってきます。もしルール変更するなら、「医師や歯科医師の指示があれば、X線照射は無資格者でもかまわない」くらいで十分でしょう。
繰り返しますが、誰でもできる簡単な操作です。複雑な設定や操作、メンテナンスまでさせていいとは言っていません。融通利かせましょう。これはコンプライアンス重視の弊害の最たる例ではないでしょうか。現場を知りません。
こんなバカな話を知っているでしょうか。
中世のヨーロッパで、裁判官がたまたま殺人事件を目撃して、その事件の裁判を担当することになりました。当時の裁判で、裁判官は自身の意見を一切表明せず、裁判上の書類だけで事件を処理しなければなりませんでした。裁判官は、被告が真犯人でないことを知りながら、書類上は被告が真犯人だったので、死刑を宣告しました。
日本はこんなバカみたいな事件が蔓延する社会になるかもしれません。いえ、実は、こんなバカみたいな事件に、現代日本で、私は既に遭遇しています。だから、「なるかもしれません」ではなく、「なっているのかもしれません」。