タイトルは「陰謀論」(秦正樹著、中公新書)という本で、統計的に導かれた現代日本の一面です。もう少し具体的にいえば、「自分は普通だ」と考えている人ほど、「政府に都合が悪いことがあると決まって北朝鮮からミサイルが発射されるのは、両政府が実は裏でつながっているからだ」といった陰謀論を信じやすい統計結果を示しています。
私にとって、これは驚くべき事実ではありませんでした。
「普通の日本人」が保守的なのは、戦後一貫して国政選挙でも地方選挙でも、保守派の自民党が強い事実から明白です。「フェイクニュースの対処法」にも書いたように、世界中どこでも、革新的な(左派的な)陰謀論より保守的な(右派的な)陰謀論が人気になります。普通の日本人が保守的であり、世界のどこでも保守派が陰謀論を好むなら、普通の日本人が陰謀論を信じやすいのは必然です。
しかし、デジタル大辞泉によると、陰謀論とは「ある事件や出来事について、事実や一般に認められている説とは別に、策謀や謀略によるものであると解釈する考え方」です。普通の日本人が「一般(普通)に認められている説と別」の説を信じていることになってしまい、矛盾しています。この矛盾はどう説明すればいいのでしょうか。
本でも考察されているように、この矛盾は「普通」の多義性から生まれていると私は考えます。普通の(多数派の)日本人が、事実から普通に(理論的に)導かれる説ではなく、事実を無視した普通でない説(荒唐無稽な陰謀論)を信じてしまっているからでしょう。こんな衆愚政治状態だからこそ、ポピュリズムなる言葉も生まれてきたのでしょう。
もっとも、これは日本だけの現象でもありません。世界中どこでも、陰謀論、フェイクニュース、ポピュリズムは問題になっています。
「フェイクニュースの対処法」と同じ結論になりますが、これを解決するためには「投票価値試験」が必要だと考えます。