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1万年働いても返せない損を出しても4年の懲役

今さらですが、大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件の事後処理のひどさを知りました。当時、私は生きていたので、このニュースに接していたはずですが、記憶にはありません。

これは端的にいえば、井口俊英というトレーダーが損失を取り戻すため、巨額の投資をし、さらに損失を増やす、というサイクルを繰り返した事件です。親のコネで大和銀行(現りそな銀行)のニューヨーク支店に就職した井口が最初に出した損失は数万ドル程度でした。損失はすぐに大和銀行に報告すべきなのですが、井口はその義務を怠り、損失を取り戻そうと泥沼にはまります。井口は会計不正にも手をそめ、12年間も損失を増やし続け、会計を操作し続けます。逮捕された1995年、損失は10億ドル(当時のレートで1100億円)にまで達していました。

井口が大和銀行に犯行を「告白」してから大蔵省に報告するまで、さらにはアメリカ政府に報告するまで、数か月もかかっていたので、アメリカ政府が激怒したことも、この事件の特徴です。

1100億円といえば、井口が4000年働いても返せない金額ですが、なんとわずか4年の懲役で済んでいます。

さらに腹立たしいのは、その後、井口はいけしゃあしゃあと日本で事業を展開し、大和銀行ニューヨーク支店行員の女性と再婚までしていることです。もっと腹立たしいのは、bloombergこちらの記事で、「現状では、トレーダーは損失を申告すれば烙印(らくいん)を押されて解雇され、二度と業界で働けなくなると考える。懸命に積み上げてきた全てを失う。あまりにも罰が重すぎる」と、まるで自分が被害者のように述べていることです。

井口が生みだした1100億円の損失は大和銀行が負担しますが、大和銀行の救済には日本の税金が使われています。日本人の平均生涯収入は2億2千万円くらいですから、1100億円とは約500名の日本人が生涯無給で全て借金返済にあてて返せる金額です。

井口の自己保身の損失のせいで、間接的に自殺や引きこもりに追い込まれた氷河期世代の日本人は一体何名いるのでしょうか。